軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

290.専属侍女との再会

「お嬢様、お話は終わりましたか」

「! ……はい」

(……モルトン卿が待機していたの忘れてた)

護衛のために、扉の外でモルトン卿が待機していたのをすっかり忘れていた。自分でも扉を開けてから酷い顔をしていた自覚があったので、その顔を見られていないかただ心配だった。

「……見られました?」

「? 何をでしょうか」

(これは……見られてないってことで良いかしら!?)

その希望にすがろうと判断したところで、モルトン卿が尋ねた。

「皆様と合流されますか」

「あ……まずは向こうでの話が終わっているか確認したくて。その後全員で話せたらと」

「なるほど……」

少し考え込むモルトン卿だったが、何かを見つけた様子で提案をした。

「でしたら私が確認に行って参ります。ちょうど、侍女の方がいらしましたので」

「……ラナ! エリン!」

振り向くと、そこには懐かしい顔と頼もしい顔がこちらにやって来るのが見えた。嬉しくて手を振れば、向こうからも返してくれた。

「お嬢様」

「?」

小さな声でモルトン卿が再び尋ねた。

「帝国からいらした侍女の方……かなりの腕ですよね?」

「! わかるんですか」

「はい。身のこなしが普通じゃありませんし、雰囲気が」

「……なるほど」

(わかる人にはわかるものなのね……)

謎に一人で納得していると、モルトン卿は続けた。

「レティシアお嬢様とベアトリスお嬢様を守れる方がいるので、少しお傍を離れますね。最も、屋敷の中は基本的には安全だと思いますが」

「そうだといいのですが……モルトン卿もお気を付けて」

「はい。行って参ります」

モルトン卿を見送ると、交代のように二人の侍女がやって来た。

「お嬢様ーー!!」

「ラナ!!」

満面の笑みで専属侍女であるラナとエリンを迎えた。

「お元気でしたか!?」

「もちろんよ。ラナは?」

「この通り、元気があり余っております」

「それは良かった」

再会を喜びながら、私は扉のドアノブに手をかけた。

「二人とも中に入りましょう」

「はい!」

「よ、よいのですか……!?」

「もちろんよ。エリンは私の専属侍女でしょう」

「は、はい!」

こうしてもう一度ベアトリスの待つ部屋の中に戻ると、初めて見る顔に少しだけ驚いていた。エリンは、入室するやすぐさまベアトリスへ挨拶をした。ベアトリスのことは、私が帝国に持って行った絵姿を見せていたこともあり、一方的に知っていた。

「お、お初にお目にかかります! 私、フィルナリア帝国でレティシアお嬢様につかせていただいております、侍女のエリンと申します!!」

「あら。ご丁寧にありがとう。ベアトリス・エルノーチェ、エルノーチェ公爵家の長女でレティシアの姉です」

「わ、私のようなものにまで挨拶を……ありがとうございますっ」

エリンはどこか緊張しているのか、勢いよく頭を深々と下げて。

「今モルトン卿がレイノルト様とお兄様の様子を見に行ってくださいました」

「そうなのね」

扉の外で起きた出来事を、ベアトリスに簡潔に説明した。

「ではその間座って待ちましょうかね」

「そうですね」

「二人も座ってちょうだい」

「よろしいんですか」

「えっ」

「立っていても疲れるでしょう。椅子も広いんだから、隣に座るといいわ」

ラナは慣れた様子で座ろうとするが、エリンは衝撃のあまり固まってしまった。

「ではお隣失礼いたします、ベアトリスお嬢様」

「えぇ」

ラナはエリンに気を遣ってベアトリスの隣を選択した。エリンは固まったまま、動けない。

「と、隣になんて」

「エリンは私の隣は嫌かしら……」

「! そんなことはありませんお嬢様!」

「良かった」

エリンも意を決した様子で隣に座ってくれた。すると、ベアトリスはエリンをじっと見ながら口を開いた。

「帝国での専属侍女ね……」

「は、はい!」

「エリン……帝国でのレティシアについて教えてくださる?」

「私も是非聞きたいです」

「も、もちろんです!」

(……変なことは話さないとは思うのだけど)

エリンの前で変なことをしてきたわけではないので大丈夫だと思うが、それでも不安になりながら紅茶に手を伸ばした。

「な、なにから話せば……」

「そうね。まずは、エリンから見たレティシアについて聞きたいわ」

「お嬢様……お嬢様はとにかく女神さまのようにお優しいです」

「うっ」

まさかそこまで褒め称えられるとも思わなかったので、紅茶でむせてしまった。

「お、お嬢様大丈夫ですか!」

「だ、大丈夫よエリン……」

「女神……わかります」

「ラナ様……!」

いつの間にか侍女二人は打ち解けたようで、二人にしかわからない世界を展開していた。

「具体的な話があるのかしら?」

「は、はい! まず私を一介の使用人にも関わらず、一人の人間として尊重してくださって」

「お嬢様……」

「ラ、ラナ。その眼差しは」

「いえ。お変わりないようで何よりです」

「……褒め言葉よね」

「もちろんですよ!」

そう言い切るラナの隣で、ベアトリスも嬉しそうに微笑んでいた。二人の反応を見て、私まで嬉しくなってしまった。

「あとお嬢様はとても強かでーー」

こうして、私達はモルトン卿が来るまでの間ゆったりとした時間を過ごしているのだった。

(お姉様にいつもの穏やかさが戻ってきてよかった……)