軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

270.離せない視線(レイノルト視点)

リトスの後を追って、レティシアと王都へ向かった。リトスとルナイユ嬢に気が付かれないよう、物陰からそっと見守っていた。

(……思ったより大丈夫そうだな。なんとかなってる)

体調が万全でないのはリトスの雰囲気と顔からわかっていたが、いざルナイユ嬢に会うと元気そうに見えた。ただ、普段ならしない些細なミスを見ると、頭が回っていないのだろうと感じた。

奇跡的にそれが上手く噛み合って、ルナイユ嬢と良い雰囲気になっているのを見て、なんとなく今日のリトスは大丈夫そうに思えていた。

(ついていると言うべきか……いずれにせよ、成功することだけを祈っていよう)

商会の直営店を出た二人を追うと、彼らは見たことないお店に並んでいた。

「クレープ屋さんだ……!」

(帝国にもあるんた……!)

目を輝かせるレティシアが可愛くて仕方なかった。

「私達も並びましょうか?」

「良いんですか!」

「もちろん。せっかくなら楽しみましょう」

「ありがとうございます!」

気丈に振る舞っていた数日前と比べて、すっかり明るくなったレティシアを見て内心安堵していた。ネイフィス家の一件が、彼女の中から薄れていくことを常に願っていた。

クレープを前に嬉しそうにするレティシアは、確実に元気を取り戻しているように見えた。そんな彼女にクレープに対しての説明を受けながら、最後尾に並び始めた。

語り終わると、レティシアはクレープ屋の屋台を見始めた。

(ん?)

微笑ましく彼女を眺めていれば、列から少し顔を出して、体の重心を傾かせていた。おそらく看板に記されていたメニューを見たかったのだろうが、その体勢で繋いでいた手が離れる。

「あっ」

「レティシア」

ほんの少しふらついたレティシアの腕を、瞬時に触れて引き寄せた。

「大丈夫ですか?」

「はい、無事見れました」

「それはよかった」

「美味しそうなクレープがたくさんありました!」

子どものように無邪気な笑みで喜ぶ姿が、愛らしすぎて抱き締めたくなる。その衝動を抑えながら、笑顔で見つめていた。

「あと。お二人、良い雰囲気でした」

「! ……ありがとうございます」

さりげなく教えてくれるレティシアの気遣いに、胸が温かくなっていく。リトスのことが気になることはもちろんそうなのだが、やはり自分にとって一番はレティシアで。それは一秒たりとも見逃したくないと思うほどだった。

(リトスには申し訳ないが、観察は最低限にしよう。後はレティシアを)

当初の尾行の目的からそれてしまうかも知れないが、それほどまでにレティシアから目が離せなくなっていた。

(……今日は一段と魅力的だ。もちろん毎日魅力的なんだが)

そんなことを考えている内に、列は進んでいった。

(うーん……苺かチョコレートか)

注文する直前までレティシアは悩んでおり、結果的に苺を選択していた。

「苺にします」

「では私はチョコレートで」

「そっちも美味しそうですよね……!」

(今度来た時はチョコレートにしよう)

クレープを受け取ると、さすがに店内は距離が近いと判断した。店が見える範囲の椅子を見つけて、二人並んで座る。

「美味しいっ。レイノルト様も是非食べてみてください」

「……初めて食べましたが、凄く美味しいですね」

レティシアはセシティスタ王国、ではなく前世で食べたことがあったのだと言っていた。懐かしい味のようで、凄く嬉しそうに食べていた。

「レティシア、こちらも食べますか」

「えっ」

「チョコレートと苺で悩まれてましたよね?」

「悩んでました……」

心の声を聞かれれば普通なら嫌がるものなのだが、一切それがない上に恥ずかしがるレティシアは本当に可愛くて仕方なかった。

じっとチョコレートのクレープを見つめると、恥ずかしそうな笑みで答えた。

「ひ、一口良いですか? チョコレートも好きなので……」

「もちろん」

「あっ、レイノルト様も苺をどうぞ。美味しいですので」

「ありがとうございます」

ほんのりと赤く色づいた頬が、クレープを満足そうに頬張っていた。それを見ながら隣で食べるだけで、幸福を感じるのだった。

クレープを食べ終わると、リトスとルナイユ嬢は移動をし始めた。道順的に、目的地に心当たりがあったので、警戒をし始めた。

(……あの道、王都の中では治安が一番悪いところだ)

頭が回っていないのか、緊張で思考がこんがらがっているのかはわからないが、リトスはそれを気にせずルナイユ嬢をただエスコートしていた。

「……あれ?」

「どうされました?」

何かに気が付いたレティシアが、状況を整理しながら教えてくれた。

「リトスさんとフェリア様の後ろにいる二人組……」

「怪しいですか?」

「いえ。あれは恐らくシエナ様とグレース様ですね」

「おや」

「問題はその後ろ……あれ、不届きな輩ですか?」

「……そうかもしれません」

レティシアが指差した男二人組は、明らかにリトス達とノースティン嬢をつけていた。急ぎその輩がリトス達に近付かないように、始末しようと動く。

「レティシアは、ご令嬢方をお願いします」

「任せてください」

レティシアとほんの少しの間わかれると、細い道に差し掛かったところで、怪しい男二人組を問いただして、やはり害になりそうだったので眠ってもらった。

(後は頑張れ、リトス)

自分はここまでだと直感的に感じ取ると、リトスの背中に静かに応援の言葉を送るのだった。