軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

226.二人の公爵令嬢

フェリア・ルナイユ公爵令嬢。彼女との交流は実は二回目だった。

時はシャーロット様に呼び出しをされた際の、受け取った二枚の手紙までさかのぼるーー。

◆◆◆

あの日、私はシャーロット様以外にもう一通手紙を受け取っていた。その手紙の主がフェリア・ルナイユ様だったのだ。

手紙の内容は会って話したいとのことで、シャーロット様とのお茶会の後に、私はルナイユ公爵邸を訪れていた。

「突然のお呼びだしにも関わらず、お越しいただいて本当にありがとうございます」

「私の方こそ、ご招待いただき誠にありがとうございます」

私の婚約披露会やルウェル嬢のお茶会ではお会いしたことがあったが、その時は本当に一瞬だったため、特別な印象はなかった。

今日改めて顔を合わせてみると、とてもおしとやかでゆったりとした印象のお嬢様に思えた。

席に着くと、さっそくルナイユ様から話を始めた。

「先日のお茶会でのお姿、遠目ながら見ておりました」

「はい」

そういえば、ルウェル嬢の一番近くに座られていたのがルナイユ様だったことを思い出す。

「率直に申し上げますと、とても鮮やかな立ち回りに感激いたしました」

「あ……ありがとうございます」

「その振る舞いを見て、是非仲良くしていただきたいと思いましたの」

突然の賛辞に、一瞬処理が追い付かず間が空いてしまった。そんな私を柔らかな笑みで見つめると、ルナイユ様は本題らしき話を始めた。

「本日ご招待させていただいたのは、下手に私の話がエルノーチェ様の耳に届く前に、自ら説明しておきたかったのです」

「なるほど……」

にこりと穏やかな笑顔からは、あまり取り繕った感覚を感じなかった。

「ルナイユ公爵令嬢として、私はリーンベルク大公殿下に婚約を申し込まさせていただいたことがあります」

「はい、存じ上げております」

「それがあくまでも私の意思ではなく、ルナイユ公爵家の考えだったということを、どうか覚えておいていただきたいのです」

ルナイユ様のお話しでは、そもそも婚約を申し込んだこと自体、五年以上前のことだという。しかし、この事実を使って自分のあることないことを吹き込んでくる存在の懸念があるのだと述べた。

「その、実は私……他にお慕いしてる方がいまして。お父様には現状、望む者がいるならと、お見合いは全てお断りしているんです」

「そうなんですね」

そう語る姿は、恋する少女のように見えた。

「はい。私が婚約していないのは、決してリーンベルク大公殿下をお慕いしているからでありません。どうかそのことを知っていただきたくて」

「ご説明いただきありがとうございます」

どう返すか悩んだものの、私の直感的に感じたことをそのまま言葉にすることにした。

「信じさせていただきますね」

「まぁ、本当ですか?」

「はい。……私はルナイユ様が恋する乙女のように見えましたので」

「あ……お、お恥ずかしい」

恐らく、私を安心させるために事実を包み隠さず伝えてくれたのだと思う。ただ、その結果本来ならもう少しお近づきになってから知るべきだった、ルナイユ様の気持ちまで知ることになった。

彼女も、自分が想像以上に大胆なことを言ったことに気が付いた様子だった。

恥ずかしいと言うと、ルナイユ様は赤くなった顔を覆った。

「エ、エルノーチェ様。このことはどうかその、ご内密に……」

「もちろんです」

微笑ましい様子を見ながら、安心させるように頷くのだった。

その後は、改めてお茶会の話や、帝国のご令嬢方のコミュニティについて、いくつか教えてもらった。同い年ということもあったおかげか、打ち解けやすかったと思う。

とても有意義な時間を過ごせたのだった。

◆◆◆

親しくなりたいと告げてくれたルナイユ様との交流を深めるために、今度は私が大公城に招待していた。

応接室で向かい合って座り合うと、まずは近況報告をしあった。

「聞きましたよ、エルノーチェ様。ルウェル嬢を素晴らしい攻撃で下したと」

「あれは私だけの力ではなくて。援護射撃をしてくださったご令嬢方のおかげなんです」

ラノライド嬢の誕生日パーティーには姿を見せなかったルナイユ様だが、情報収集はやはり公爵令嬢として長けているようだ。

「何を仰いますか。援護射撃をされるだけ、エルノーチェ様に人望がある証拠。とても誇らしいことですね」

「……ありがとうございます」

ルナイユ様の丁寧な褒め言葉は、すっと胸に届いて温かくなった。

「取り敢えず一段落されたようで何よりです」

「いえ。それが、ルナイユ様の懸念されたことが起こりまして」

「!」

今日彼女を招待した理由の一つは、誕生日パーティーで起こったことを報告することがあった。なぜなら、それはルナイユ様に大きく関わることだから。

懸念された。その一言だけで、彼女は誰が何をしたのか、検討がついている様子だった。

「……ということは、マティルダが動き出したんですね」

「はい」

その瞬間に、ルナイユ様は目を細めて雰囲気を一転させた。小さくため息をつくと、何か考え込むのだった。