軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

221.噂の出所

一段落すると、私はラノライド嬢と二人で話すことになった。移動する前に、ラノライド嬢は子爵令嬢方に何かを強く言われていたが、取りあえず見て見ぬふりをすることにした。

「エルノーチェ様、私も援護射撃をしたかったのですが、何もできずに申し訳ありません」

「謝罪なさらないでください、ラノライド嬢。先程皆様から聞きました。皆様が、今回主役であるラノライド嬢が問題や騒ぎに下手に巻き込まれないよう、極力近付かないようにアドバイスをしたのだと」

「は、はい。そうなんです……」

それを耳にした時、とても素敵な友情だと感じた。若干怒られているような場面もあったけど、それでも親しい雰囲気だった。

「私も彼女達と同じ意見です。それに、その気持ちだけで十分嬉しいですから」

「エルノーチェ様……」

思いはしっかりと届いたようで、ラノライド嬢は安心して、落ち着いた表情になっていた。

ここで話しに区切りがつくと、ラノライド嬢が気になる話を振ってきた。

「エルノーチェ様、先程の一件でネイフィス様とお話しされていましたよね」

「えぇ、そうなんです」

「凄い……」

「凄い?」

「あ、はい。私のような下位の令嬢とは滅多に話す機会はないので」

やはり帝国の風潮なのか、身分を必要以上に重んじているのが容易に想像できた。

「……では、ネイフィス様は普段あまりご令嬢方とは話されないのですか?」

「そういうわけでもないです! ネイフィス家と交流のある家門なら、身分関係なしに話しているところを見ます。えぇと、例えばフラン嬢とか」

ラノライド嬢はそう訂正してくれたものの、実際ネイフィス様や公爵家に対する、他家のご令嬢方の態度は、王国に比べて固すぎるような気がした。

「フラン嬢……そう言えば、今日はお見かけしていませんが」

「来てはいると思います。彼女には彼女の交流がありますから」

「……」

「あ……私達、二人揃ってルウェル様の傍にいましたが、お互いが最も親しいのかと言われるとそうでもないので」

(……確かに。ラノライド嬢は先程一緒にいた子爵令嬢方との方が、打ち解けている仲に見えたな)

これは自分の早とちりで思い込みだったと、少し反省した。

「そうだったんですね。すみません、思い違いを」

「いえ! 全く気にしておりませんので!」

ペコリと頭を下げれば、ラノライド嬢は、ぶんぶんぶんと両手と首を思い切り横に振っていた。

「……ふふっ」

その姿が可愛らしくて、思わず笑みをこぼしてしまった。

「あ……すみません」

「そんな、大丈夫です。むしろありがとうございます」

「え?」

「なんでもないです」

綺麗な笑顔で微笑まれると、今度は私が聞きたいことを尋ねた。

「あの……シルフォン嬢のことなのですが」

「はい」

「先日教えていただいた情報……噂は、どなたから聞いたか覚えてらっしゃいますか?」

「もちろんです。これに関しては、ほとんどの人がルウェル様と答えると思います」

「ルウェル嬢か……」

ふむ、と顎に手を伸ばしながら少しだけ考え込んだ。その間に、ラノライド嬢はとても思慮深い言葉を並べてくれた。

「ですが、普段の行い、今日の態度を見るからに、シルフォン様に関する話は嘘なのではないかと思ってきていて。実は、私自身はそこまでシルフォン様と接点がないので」

ラノライド嬢は、ぎゅっとドレスの裾を掴みながら、申し訳なさそうな表情になっていく。

「それなのに、ルウェル様のお話しを鵜呑みにして、自分勝手にエルノーチェ様に伝えてしまったこと、とても恥ずべきことだと思います。……何より、シルフォン様に謝罪をしなくては」

うつむいてしまった彼女に、今度は私から言葉を掛けた。

「……そうですね。私が接した限りでは、噂には何一つ当てはまらないようなご令嬢のように思えました」

「……」

「だから、ラノライド嬢のその直感はあっていると思います。ですから、そのお考えを貫いてください」

「! ……あきれないのですか?」

ばっと顔を上げると、不安げな瞳で返した。

「あきれるもなにも。世の中には、自分の過ちや間違えに気が付けない方もいらっしゃいます。それに対すれば、ラノライド嬢はとても素晴らしいのでは?」

「……ありがとうございます、エルノーチェ様」

「いえ」

少しでも重くなってしまった心を、軽くできればと思いながら告げた言葉だった。

「その言葉、エルノーチェ様からの教えとして皆様にも広めますわ!」

「……え?」

「本当にありがとうございます!」

「……元気そうで何よりです」

否定したり止めたりすることでもないと思った私は、ただ遠い目をしながら、ラノライド嬢の笑顔を見つめていた。

そして、ラノライド嬢がこの後有言実行で、本当に教えとして私の言葉を広めたことを、私が知ったのは少し先の話だった。