軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

215.尊重する姉妹(シエナ視点)

はっきり言おう。

リリアンヌ様はかなりのシスコンであった。

というのも、話し相手をしていた時、話題の半分以上はご自身の妹であるレティシア様に関したお話しだった。

レティシア様がいかに可愛いのか、見た目から内面まで、事細かに語られたかと思えば、レティシア様の武勇伝のようなお話しを、自分のことのように話続けていた。

一通り話終えると、また最初から同じ話が始まる。

正直、暗記するほど聞かされて飽き飽きしてしまうこともあったが、レティシア様の話をするリリアンヌ様は、とても幸せそうだった。

だからなのか、不思議とリリアンヌ様に対して負の感情を抱くことはなかった。

そして、帰国する日が近付いた。

「そう、シエナ様はもう帰られてしまうのね」

「はい。私は帝国の人間ですので」

「残念。シエナ様とお話しする時間はとても楽しかったから」

(ほとんど聞いているだけでしたけど……それでも、楽しかったですよ)

そんな突っ込みもいれながら、別れを惜しむ時間を過ごした。

「……ねぇ、シエナ様。もしよかったらで良いのだけど、私の妹を気にかけていただけないかしら?」

「レティシア様を、ですか」

「えぇ。……異国の土地に、本当に単身で行ったようなものだから。いくら大公殿下がいるとは言え、ご令嬢同士の集まりは一人になってしまうでしょう?」

「……」

心配なさる姿は、本心そのものに見えた。

「もし、うちのレティシアがシエナ様のお眼鏡にかなったらで構わないから」

「……そうへりくだらないでください。帰国したら、定例のガーデンパーティーを開く予定なんです。まずはそこでお会いしてみようと思います」

「シエナ様……!」

ぱあっと笑顔になるリリアンヌ様を見ると、不思議と安心してしまった。

(ここ数日、話を聞きすぎたからか、情がかなり移ってしまったみたい)

自分らしくはないと思いながらも、気にかけるくらいならいいだろうと思って受け入れた。

「では、お願いします」

「はい」

そうして私は、セシティスタ王国を後にした。

◆◆◆

「完全にリリアンヌ様にしてやられたわね」

ふっと笑みをこぼしながら、ガーデンパーティーの一日を振り返った。

私はてっきり、リリアンヌ様が語るレティシア様は姉としての贔屓目があるからだと思っていた。

しかし、そんなことはまるでなく、レティシア様はリリアンヌ様の言う通りの可愛らしい存在だった。というか話以上に魅力溢れるご令嬢だった。

リリアンヌ様に話を散々聞かされたこともあり、レティシア様のことが気になって仕方がなかった。

そういう心理にするためにも、リリアンヌ様は嫌というほど話を聞かせたのだろう。

(リリアンヌ様は最後まで、命令ではなくお願いする姿勢を貫いた。その方が、心情的に親密になれると踏んだんでしょうね)

リリアンヌ様がやりたかったことがわかると、小さく笑みをこぼした。

「策士ね……とても優秀な王妃様になること間違いなしだわ」

そんな頭脳派ともいえるリリアンヌ様に、レティシア様はあまり似ていなかった。

計算しつくされた動きではなく、本心から自分が思うことを口に出し、身分を全く感じさせないご令嬢。

身分重視の息苦しい帝国の世界では、滅多にみないスタイルの方だった。

その尊重するという態度は、私だけではなく、会場内全てのご令嬢の心を鷲掴みにした。

(……レティシア様は無意識だったかもしれないけれど、あの言葉遣いは大正解だわ)

そしてなによりもレティシア様に惹かれる理由は、自分が魅力的であることに全く気が付いていないこと。これは尊重する態度は、無自覚で行っていることを裏付けるものでもあった。

そんな彼女を見て、私が思うことは一つだった。

(……これはお守りしないと)

ガーデンパーティーが終わる頃、子爵令嬢達の集まりに近寄れば、私の予感は的中していた。

親衛隊兼ファンクラブが立ち上がったのである。

「……責任者を申し出たけれど、まさか他の方もやりたがるとは思わなかったわね」

私が想像しているよりも、皆がレティシア様に夢中なのは明らかだった。それほどまで好意が向けられているのだ、レティシア様に関して心配になることはないだろう。

彼女ほどの魅力を持っていれば、もしかしたら私の存在はいらなかったかもしれない。そんなことを思いながら、私はリリアンヌ様に妹君の存在を聞けて良かったと思うのだった。

(あ、そうだわ。後でリリアンヌ様に報告しましょうかね)

リリアンヌ様を思い出すと、あることに気が付いた。

(計算とは言え、結局リリアンヌ様は私のことを尊重してくれた。……ふふ、姉妹で似ているところ、あったわね)

くすりと微笑むと、便箋を持ってくるように侍女に頼むのだった。