軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

181.到着した大公城

馬車は遂に帝国内へと入った。あれだけレイノルト様に言葉をもらっても、やはり近付いてくると緊張が増してしまう。

「レイノルト様、あの大きなお城は王城ですか?」

「あれが大公城ですよ」

「……えっ?」

目の前に見えてきた立派な城は、セシティスタ王国の王城と比べても遜色なく、むしろさすが帝国と言えるほどそれ以上によくできた城だった。

それ故に王城だと判断したのだが、どうやら違ったらしい。

「冗談、ですか?」

「いえ、本当です」

「……あんなに立派なのに、王城じゃないんですか」

「レティシア、安心してください。王城はより華やかで規模の大きい城になってます。ここからだと……うっすらとしか見えませんね」

(……なるほど。これが帝国基準かな?)

予想外すぎた答えに驚いて、訳がわからないことを言いながら現実を目の当たりにした。

「確かに、王国と帝国では少々規模が異なるかもしれませんね」

その様子を面白そうに眺めるレイノルト様には気が付かずに、窓の外をじっと見つめた。大公城に近付くと、城の全貌が拡大されて視界に映る。

「やっぱり大きくないですか……!?」

「気に入っていただけましたか?」

「た、多分? 想像していた以上に大きすぎて、今驚きの感情で一色に染まってます」

「緊張は?」

「……消えたかもしれないです」

「それなら良かった」

残っていた緊張が消えてしまうほど、大公城の迫力は凄かった。

ぼおっと眺めていると、いつの間にか更に大公城が近付いてきて、気が付けば馬車がゆっくりと停止していた。

「着きましたよ、レティシア」

レイノルト様の声で我に戻ると、先に降りたレイノルト様のエスコートを経て、フィルナリア帝国の地上へと降り立った。

大公城の入り口前では、使用人と思われる人物が何人か待機をしているのが見えた。

気を引き締めて背筋を伸ばした。

「レティシア。ようこそフィルナリア帝国へ。そして、大公城へ」

「ありがとうございます」

微笑み合うと、入り口へ向かった。一瞬どよめきが起こった気がした。しかし目線を入り口へ戻すと、風景に変わりはなかった。

「お帰りなさいませ、大公殿下」

「あぁ、戻った」

次は自分の番だと挨拶をしようとした瞬間、先手をとられてしまった。

「そして!! ようこそいらっしゃいました、婚約者様!!」

使用人統括の様な方が満面の笑みでそう言いながら頭を下げると、後ろに控えていた使用人方が一斉に頭を下げて、深く一礼した。

「あ、はい! 本日付よりお世話になります。セシティスタ王国から参りました、エルノーチェ公爵家四女レティシアにございます。よろしくお願い致します!」

反射的に同じくらい元気な声で挨拶をすると、勢いよく一礼をした。

「何と礼儀正しいご令嬢でしょうか……! 我々こそ、よろしくお願い致します。全身全霊を注いでお仕え致します、姫様」

「ひ、姫!? 私は公爵令嬢ですので……」

「いえいえ。大公家のもう一人の主人ともなろう御方です。敬意をもって呼ばせていただきますので」

「そこまでにしろ、ディオン」

「は、殿下」

いよいよ混乱しそうになってきた時、レイノルト様はあきれた声でそう命じた。

「お前達がレティシアのことを心待ちにしていたことはよくわかるが、そう畳み掛けないでくれ」

「これは大変失礼致しました」

「いえ、とんでもないです。ですが、できればお嬢様呼びにしていただけると助かります。その方が慣れていますので」

「承知致しました、お嬢様」

(良かった……)

反応を見る限り、大公城の使用人の方々からは少なくとも嫌悪の視線は感じられなかった。

「レティシア。お疲れでしょうから、部屋でゆっくりとお休みください。その後に城内をご案内します」

「ありがとうございます」

休憩をしながら帝国へたどり着いたため、特段疲労がたまっているわけではないが、厚意を素直に受けると、いよいよ城内へ足を踏み入れた。

「まずはレティシアのお部屋に案内しますね」

「はいっ」

ディオンと呼ばれていた総括らしき方の案内で、用意された私の部屋へ向かった。

扉をそっと開くと、中には私好みの世界が広がっていた。

「わぁぁあ……!」

全体的に落ち着いた色味で統一された華やかな家具と、アンティーク感漂う家具がちょうどよいバランスで部屋を彩っていた。

中に踏み入れながらきょろきょろと辺りを見回していると、どこか見覚えるのある物が見えた。

「あれ? これって……」

「……」

「レイノルト様、もしかしてあのお店に行かれたのですか!?」

「実はそうなんです」

見覚えのある物。それは城下散策をしたあの日に、スノードームを購入したお店で目にしていた茶器だった。他に並ぶ置物も完全に私好みの物ばかりで、凄く気分が上がった。

「……凄い。本当に凄くて、嬉しくて、感激しています」

「良かった……レティシアに気に入っていただける部屋を目指した甲斐がありました」

「レイノルト様、素晴らしすぎます。こんなに素敵な部屋をありがとうございます」

「喜んでいただけて何よりです」

あの日の会話を覚えていたことはもちろん、部屋の中に詰め込まれた思いやりと愛を感じると、思わず口角が上がるのだった