軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

171.両家の顔合わせ

顔合わせの日程が決まると、リリアンヌが本気を出してありとあらゆる手配を始めた。もてなしに関する、食事や飲み物お茶菓子はもちろん屋敷内の家具と装飾の見直しを行った。

ベアトリスは当主代理の仕事と並行しながら、リリアンヌの補助をしていた。カルセインはフィルナリア帝国の国王が来訪するということで、秘密裏に警備を強化していた。

私と言えば大してできることがなく、小さなことを見つけては手伝っての繰り返しをして数日間の準備期間を過ごしていた。

挨拶当日。いよいよライオネル陛下がやって来る日になった。

今日は実質、私とレイノルト様の両家の顔合わせのようなものだった。もちろんその事は全員が理解していた為、朝からエルノーチェ公爵家には微かな緊張が走っていた。

とはいえ重苦しい空気という訳ではなく、満足してもらえるかという不安と期待が入り交じった空気であった。

定刻より三十分ほど前から玄関前で待機をしていた。カルセイン、ベアトリス、私、リリアンヌの順番で横一列に並ぶ。

窓から見える庭を眺めながら、今日の天気の良さを感じていた。

そして定刻に近付いた頃、屋敷に近付く馬車の音が聞こえてきた。

「……いらっしゃいました」

「わかったわ」

使用人の一人がそう報告すると、ベアトリスが気合いを入れるように頷いた。

そしていよいよ玄関の扉が開かれると、そこにはライオネル陛下とレイノルト様が並んで立っていた。

「遠いところからようこそお越しくださいました」

ベアトリスの声に合わせるように、全員で深く頭を下げた。

「わざわざお出迎えいただきありがとうございます」

優しく微笑む陛下に、ベアトリスもしっかりとした態度で言葉を繋げた。

「本日は時間を取っていただき、誠にありがとうございます」

「それはこちらの台詞ですよ。挨拶をしたいというわがままを受け入れてくださり、ありがとうございます」

陛下の穏やかな声色と表情に、ベアトリスも段々と心の余裕が生まれているのを隣で感じていた。

「では、ご案内致します」

全員が集まれる部屋に案内すると、テーブルを挟んで両家がそれぞれ着席をした。

端にベアトリスとライオネル陛下が向かい合い、その隣にレイノルト様と私が向かい合った。私の隣にはリリアンヌ、カルセインの順で並んだ。

「早速ですがご挨拶を。エルノーチェ公爵家当主代理をしております。長女のベアトリスにございます。隣が次女のリリアンヌ、その隣が長男のカルセインにございます。レティシアは末っ子にございます」

「「よろしくお願いします」」

リリアンヌとカルセインが会釈をする中、私はこっそりとレイノルト様に視線を向けていた。

やはりあの日から感じていた違和感は正しく、今日もどことなく違う雰囲気に見えた。

「よろしくお願いします。私はフィルナリア帝国の王ではありますが、それ以前にレイノルトの兄です。どうか固くなりすぎずに接していただければ」

お互いのはじめの挨拶が終わると、食事に移った。様子を見る限りでは、口に合っていそうで美味しそうに食べられていた。リリアンヌも心なしか安心して嬉しそうだった。

会話は滞ることなく、お互いのことを尋ねたりして過ごしていた。料理を終えて少し経つと、ライオネル陛下が口を開いた。

「両家の顔合わせではありますが、当事者であるご本人同士の時間も必要ですね」

「……もちろんです。レティシア、いってらっしゃい」

「は、はい」

突然話題を向けられて驚くものの、二人だけで話す時間を設けられたので慌てて返事をした。前を向けば、微笑むレイノルト様が「行きましょう」と言ってくれる。

けどその笑顔がどこか悲しそうに感じては、胸がちくりと痛むのだった。

エルノーチェ家にある庭園に向かうことにした。いつも通りエスコートを受けるものの、一瞬何を話して良いかわからず躊躇ってしまった。

「……お元気でしたか?」

「はい、もちろんです。レイノルト様は」

「変わりないです」

そんなありきたりな会話をするのも、少しだけ気まずさを感じていた。理由はレイノルト様の様子にあるのだが、どうしようかと悩んでいると記憶に焼き付いている景色が目に入った。

「……レイノルト様、覚えてらっしゃいますか?」

「……?」

「この庭、二人で歩くのが初めてでは無いのを。といっても、あの日は暗かったですしレイノルト様は門の向こう側にいらっしゃいましたから、状況は多少異なるのですけれど」

「……忘れるわけがありません」

「私もです。あの日レイノルト様に背中を押していただけたから。勇気をいただけたから、今の私がいるんです」

「……」

「……あの時はレイノルト様から、でしたから。今度は私が何か少しでもお役に立てればと思って」

少しずつ、ほんの少しずつレイノルト様の表情が柔らかくなってきた気がする。私もいつも通り真っ直ぐ見つめることができるようになってきた。

自然と向かい合えば、真剣な眼差しをしたレイノルト様が思いを言葉にしてくれた。

「……レティシア」

「はい」

「貴女に……話したいことがあります」