軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133.二つの祝い事

陛下の突然の宣言に、会場内今日一番の騒がしさに包まれた。王太子の選定がこの場で行われるとは思いもしなかった為に、話を知っていた私でさえ驚きを隠せなかった。

当然、それを一番思っていたのは目の前にいるエドモンド殿下自身だろう。あまりの動揺ぶりに、言葉がでない様子はすぐに伝わった。陛下の言葉から少し経ってから抗議を始めた。

「陛下……あまりにも急なお話です。この決定、看過することはできません。撤回を」

「…………」

「それ以前に、王子は私であり、王位継承権一位も私にございます」

エドモンド殿下の言葉に続くように、王子派の臣下達が慌てて口を開く。

「そうです、陛下! それこそこの場で発言することではありません」

「発言の取り消しを。正式な場を設けるべきです!」

「殿下の言い分が正しいかと!!」

相次ぐ声にも決して動ぜず、むしろ鬱陶しいと言わんばかりの雰囲気を一瞬感じた。

「…………言いたいことはそれだけか」

もはや野次に近い声とは比べ物にならないほど重く響く声で、声の持ち主を睨み渡す。最後に殿下を一瞥して溜め息を吐くと、表情を変えることなく殿下に問われた。

「エドモンド、今何歳だ」

「二十三歳です」

「……十分、私は待った。先程も言った筈だ」

「それは」

「機会を何度も駄目にし、何一つモノにしなかったのはお前自身だ。エドモンド。お前にこの国の王となる資質も資格もない。今日の行動が決定打を打った」

「お待ちください! まさか、リカルドにはその資質があると?!」

「あぁ。資質も、素質も。リカルド以上に相応しい人間はいない」

「陛下!!」

「ではこの数年。エドモンド、お前は何をした? 国のために何か利益を一つでもあげたか。いや、周囲の戯れ言に耳を貸して動くだけで何もしなかった。何も成さなかった。何もできない人間に、王座をつかせることはできない」

「私は王子なのですよ……!れっきとした、正真正銘血の繋がったっ」

「だから私は何度も何度も言った筈だ。行動を改めよ、成果をあげよと」

手に力が入る陛下の様子から、本当は本望は自身の息子に跡を継がせたかったことを悟った。

それでも。彼は父としてではなく、国王として責務を果たしたのだろう。

悲しげな表情になりながら、最後の言葉を告げた。

「……これ以上、王家の恥を晒すな。引き際をわきまえよ。……それが父としての願いだ」

「父上……」

がくり。

エドモンド殿下はとうとう膝を床について、すっかり体の力を抜いてしまった。それでもなお騒ぐ王子派の貴族はフェルクス家によって退場させられた。

どうにもできないことを理解した殿下は、乾いた笑みを浮かべていた。その様子を私達は無言で見つめていた。一部の貴族が退場させられて間もなくすると、殿下の付き人が近寄り、彼らによって会場外に連れていかれた。

静まり返る中、目を閉じてから一度深呼吸をしてから陛下は再び役目を果たし始めた。

「この決定事項は、また後日別の正式な場を設けるだろう。皆はそれを覚えておいてほしい」

返す言葉はなく、会場内の人間全員がただ無言で礼をした。それはリカルドの王太子任命に異論がないことを示していた。

「…………さて。重い話はここまでだ」

表情を一転させると、穏やかな雰囲気でこちらを向いた。視線が合うとにこりと微笑まれ、思わず会釈をしてしまう。

「新たな婚約話を発表する。この場は主催の一人であるリリアンヌ嬢たっての希望であることを先に述べておく。……どうぞ前に」

(お、お姉様?!)

情報が一気に頭に入ってきて、思考の処理が追い付かない。恐らく陛下は私達に前に出るように誘導している。それをわかっているのに、体が追い付かなかった。

「レティシア、手を」

「…………レイノルト様」

柔らかな声にはっと意識を取り戻すと、目の前に出された手に無意識に手を重ねる。エスコートの形を取ると、ゆっくりと国王陛下の正面へ向かった。

頭の中は整理が全く終わってなかったが、ただ一つ“レイノルト様に任せれば大丈夫”という安心と信頼から、彼に心を投げた。

陛下とレイノルト様が何か視線で言葉を交わすと、発言権がレイノルト様へ自然と移った。

「フィルナリア帝国より参りました。レイノルト・リーンベルクは、セシティスタ王国エルノーチェ公爵家公女レティシア嬢との婚約が、国王陛下の元にて成立したことをここにご報告致します」

(…………国王陛下?!)

衝撃を受けながらも、動揺を表情に出さないよう必死で耐えながらレイノルト様と息を合わせるように、会場内の貴族に向けて一礼をした。

「この婚約は、我がセシティスタ王国とフィルナリア帝国を繋ぐ重要なものとなる。皆、祝福をしてほしい。」

その瞬間、小さな拍手が響き渡る。ベアトリス、カルセイン、リリアンヌ達からだった。その後雰囲気が作り上げられると、会場内は拍手で包まれたのだった。