軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

122.見抜く者と見抜かれる者

こうして一ヶ所に主役の家族のほとんどが集まった。

「ご無沙汰しております、フェルクス大公、大公夫人」

「お初におめにかかります、エルノーチェ公爵家長男カルセインです」

二人がそれぞれ軽く挨拶を行う。

「初めまして、カルセインさん。ベアトリスは久しぶりね。元気にしてた?」

「はい、変わりないです。お二方は」

「私達もよ」

話す様子を見る限り、ベアトリスは大公と夫人との面識があるようだった。更に言えば、直感で親密度は高い方だと感じた。カルセインは大公と軽く話をし始めた。

「私はあまり詳しい話はわからないのだけど、今日はレティシアちゃんが頑張る日なのよね?」

「は、はい。そうです」

「それなら応援しなくちゃ」

「あ……ありがとうございます」

自分に話が来ると思っていなかった私は、突然のことに反応が遅れてしまう。

「応援されるのに驚いてるのも可愛いわ。ベアトリス、レティシアちゃん フェルクス大公家(うち) に貰っちゃ駄目かしら」

「いくら夫人でもそれには頷けませんね。レティシアは我が家の可愛い可愛い末っ子なので。どうかリリアンヌで手を打たせてください」

突然の話題転換に加えて 可(・) 愛(・) い(・) の連続。さすがに頭が混乱し始めてしまう。

(可愛い? 可愛いって私のことなの? だとしたらどこが?!)

突っ込みだけが追い付くものの、情報の整理はまだまだだった。

「うぅ、確かに。もう既に大切な妹を貰ったようなものね……はぁ、もういっそのことベアトリスも含めて全員うちに来てしまえばいいのに」

「褒め言葉として受け取りたいところですが……全員は、あの娘も入りますよ?」

そう告げるベアトリスの視線の先には、こちらをちらりと窺うキャサリンの姿が。こちらの話は聞こえないだろうが、様子が気になるのかこちらへの視線を何度か確認した。

「……知りもしない私が勝手なことを言うことは良くないと思うのよ。恐らくエドモンド殿下の婚約者でもあるでしょうから。でもね、リリーちゃん……自身の姉の披露会なのに自分が主人公のように立ち振舞う姿は好ましくないわ。私とは合わない気がするわ。……申し訳ないけど、あの娘は遠慮させて?」

迷うことなく結論付けた夫人。

聞けば私の時と同様、キャサリンのことは多くは知らない様子だった。今、自分の視覚や感覚で得た知識だけをもとに判断したのだった。

「見抜ける人は見抜けるの。だから不安にならないで、レティシア」

「そうよ、レティシアちゃん。見抜ける人は見抜けるの。だから頑張って!」

「わかって仰ってますか」

「いいえ、でも意味は合ってるでしょう?」

「それは、はい」

私からすれば可愛らしいのは夫人の方なのだが、その癒される様子とベアトリスの心強い言葉を受けながら気持ちを奮い立たせた。

「頑張ります……!」

「えぇ」

「……まだまだお話ししたいことは沢山あるのですが、少し離れた方が良さそうですね」

「そうみたいね。もっと話していたいのが本音だけど、仕方ないわね。……そうだ、何かの役に立つかもしれないから、やり取りに聞き耳をたててれば?」

「いいのですか?」

「もちろんよ。失言でもするものなら、詰めてあげるわ。私は誰にでも優しい訳じゃないですからね」

「さすがです」

「カッコいいです」

「ふふ、ありがとう。じゃあまた後でね」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました……!」

親族同士の挨拶には、当然父とキャサリンも含まれる。そのため、私達は交代するようにその場を後にした。

ギリギリ聞こえる距離で、言われた通り三人で談笑をするフリをしながら耳を傾けていた。

「ご無沙汰しております、フェルクス大公殿下、大公夫人。こちら、娘のキャサリンです」

「お初におめにかかります、三女のキャサリンにございます」

親族同士の挨拶ということで、さすがにエドモンド殿下は離れたようだった。

「あぁ」

「初めまして」

双方は主役の親族同士ではあるが、もう一つの立場として王位継承権を巡る対立関係でもあるため、雰囲気は先ほどの和やかなものとは対局だった。

可愛らしく癒されるオーラを放っていた夫人も、一転して無の境地を展開していた。

(……キャサリンお姉様に一ミリも興味を抱いてないみたい)

形式的な、無感情の言葉を父と大公が交わし終わると、今度はキャサリンが口を開いた。

「……先ほど姉と妹が挨拶をしていたと思うのですが」

「えぇ」

「その、ご迷惑をおかけしなかったでしょうか。特に妹は……色々と問題の多い子で」

ここは会場の端にあるため、周囲へのアピールとして私を話題に出す必要はない。耳に届くことはないからだ。

(いつものように悪評を植え付けるつもりね……お得意の印象操作、か)

その行動に焦るわけではないが、気分の良いものではなかった。行う意図はわからないが、もはやキャサリンの悪癖ですらあるのかもしれない。様々な考えに無意識に掌に力が加わったが、それも一瞬で終わった。

「まぁ。私には問題は貴女の方にあるように見えるけど?」