軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.場を制する者

会場の視線を集めたが、前回の生誕祭と比べて攻撃的なものやネガティブなものはかなり減ったように感じる。

ひそひそというあからさまな態度も感じずに、歓迎されている雰囲気のなか会場を歩いた。

(……いつもみたいな、まるで全員敵のような雰囲気がないけど)

それだけ、キャサリンの味方をしていた人の考えが変わっていってるかもしれない。というのも、ここ数日リリアンヌが走り回っていたから。その甲斐あって、評価が悪いところから少しずつフラットな場所へ戻りつつある。

そんな可能性を考えていると、ベアトリスから背中を押す声が届いた。

「……生誕祭で努力した甲斐があったわね、レティシア」

「……え?」

「まさかこの視線はリリアンヌのおかげだとでも思っているの? だとしたらそれは違うわ。レティシア、貴女の評価を変えたのは貴女自身よ」

「私が……?」

とにかく必死だった生誕祭のあの日。

がむしゃらに言葉を選んで戦った姿は、撤退もあり良いものとは言いきれなかった。それゆえに、影響を与えたと主張するベアトリスの言葉に戸惑う。

「見る世界が変わった人間が、その努力を保証する。間違いなく貴族の目は変わっている」

「ほら、当事者が言うのだから間違いないわ。……だから自信を持って。色々な事を学び、身に付け、成長した今。レティシアは確実に強くなっているわ。私が……私達が胸を張って断言するわ」

ベアトリスの力強い言葉には、カルセインもすぐさま頷いた。

「……ありがとうございます。お姉様、お兄様」

心強い二人に感謝の言葉と目線を向けた。自分の胸に片手をあてながら、受け取った言葉を胸に刻んだ。

────────ガチャリ。

安心するのも束の間、警戒すべき人間が姿を現す。

「……来たわね」

ボソリと呟くベアトリスに頷きながら視線を扉に向けると、そこには父とキャサリンの姿が。

キャサリンをエスコートする父。

恐らく、正式な発表が行われていない今、エドモンド殿下のエスコートは避けたのだろう。誰もが王子妃がキャサリンだとわかっていても、披露会という場を踏まえて考えたようだ。

主役の親族であるにも関わらず、向けられる視線は祝福ではなく好奇なものが多いことが、現状を物語っていた。

キャサリンにいつも向けられる筈の、歓迎する視線は心なしか少ない気がする。

それでも王子妃として品格者を装うために、優雅で麗しい雰囲気をこれでもかと捻り出していた。青を基調としたドレスは、単体でみればとても上品な印象を受けるが、キャサリンという人間を含めると私の目にはそうは映らなかった。

心情はどうであれ、確実に貴族達の注目を集めていることに変わりはない。

いつも通り、取り巻き達に綺麗だなんだと言われながら場の好奇的な雰囲気を薄めていく。扉付近で、知り合いと思われる人と軽く会話をしていた矢先、続け様にエドモンド殿下も現れた。

会場の関心が一気に彼らに集まる。

(……どことなく、お祝いムードを出している人もいる。口には出さないけど)

生誕祭での毒が回っても尚、当然彼らを支持する貴族はいる。派閥で言う王家派と言うもの。

問題は、どちらにも属していない貴族を味方につけられるか。この一点が今回の場では最も重視されること。

「エルノーチェ公爵、エスコートを代わってもよろしいでしょうか」

「もちろんです、殿下」

美男美女である彼らが並べば、当然絵になる。令嬢方を筆頭とする良好な視線が増え始めた。

(正式な発表がなくても、キャサリンお姉様は婚約者候補だから。エスコートされてもなにもおかしくはない)

毒といっても、キャサリン達にとってマイナスなことはまだ少ない。それを理解している彼らは、堂々とすれば痛くもないことをわかっていた。

(……少しまずいな。このままだと、キャサリンの空気になって劇場が展開されやすくなってる。エドモンド殿下の存在も相まって、あちら側の雰囲気だし)

主役が登場するまでのこの間に、仕掛けられないとも限らない。その際の分の悪さを感じる。優位的な立場だとわかっているのは相手も同じで、キャサリン達はこちらに向かって近付いてきた。

(戦うことはできる。その為に準備をしてきたから。…ただ、わがままかもしれないけど、この空気をどうにか変えたいな)

その思考は姉兄共に同じで、表情からどことなく察せられた。

どうにかできないか、急ぎ思案を始めたその時。再び扉が開かれた。

視線を集めると同時に、注目と関心も集めた。直前に登場したキャサリンとエドモンド殿下が霞むくらいの圧倒的な美貌と存在感を放っていた。

(……レイノルト様)

帝国の大公の登場に、驚く者もいれば動揺する者もいた。生誕祭の時に比べて、全面的な解放をしての参加は、何度も会っている私でさえ圧倒される。

「……本気を出してきたみたいね」

ベアトリスのその言葉に納得しながら、会場の令嬢達と共にレイノルト様に釘付けになる。

ここから入場扉まで距離があるものの、顔はなんとか確認することができた。それはレイノルト様も同じようで、目線が合った瞬間、優しい笑みを向けられた。

令嬢達にときめきを与えながら、彼は颯爽と踏み出した。空気はもう、レイノルト様一色であった。

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昨日は更新できずに申し訳ありませんでした。

今年も本小説をよろしくお願いいたします。