軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102.次女と恋愛の解読を

慰労会翌日。

パタり。

休日の昼下がり、未だにベッドに横たわっていた。

(………………)

ラナは他の仕事で席を外しているため、部屋には私一人だ。

予想もしなかった言葉を受けて、動揺と困惑で感情が迷子になった昨日は、正直慰労どころではなかった。

(…………鈍感にもほどがある)

レイノルト様の言葉や空気を読み取れば、告白に繋がる行動や気持ちを感じ取る機会はいくつもあった。何一つ気が付かなかった自分に呆れながら、悲しくなりながら、レイノルト様の言葉を思い返していた。

「うう……」

自分があまりにも鈍感だから。

彼は私に確実に伝わるように、何度も言葉を重ねてくれたのだ。その誠意に胸が暖まると同時に、申し訳なさも込み上げてくる。

出会ってから今までの行動を振り返ると、反省もしたくなってしまう。だがそんなことは後回しで、今考えなくてはいけないのは、 答(・) え(・) 。ただ一つだった。

正直いって、自分の気持ちがわからない。というのが本音だった。

前世までさかのぼっても、恋愛経験とはゼロに等しいのだ。恋愛感情に疎いのは、なるべくしてなったと言える気がする。

(…………一人で悩んでも答えが出るわけない!)

左右に倒していた体を一気に起こすと、部屋の外を出歩いてもおかしくない格好に着替えて出発した。

(こういうものは、経験者に聞くのが一番)

そう思いながら部屋へと向かった。

部屋の中に人気を感じると、安堵しながら扉を叩いた。

「はい…………あら、レティシア」

「おはようございます、お姉様。今はお時間大丈夫ですか?」

「もちろん構わないわ、どうぞ。……それにしても私の妹は随分寝ていたのね。もうお昼よ」

「……少し横になってました」

「あら。具合が悪いの?……熱はないわね」

サッと額に手をかざすも、当然ながら熱はない。元気であることを伝えると席に着いた。

「どうしたの?」

「……少し、ご相談があって」

膝の上で重ねる手はからは少し汗が出始めた。いざ口に出すとなると、どこか恥ずかしくなって躊躇いが生まれてしまう。その感情を振り払って、できるだけ簡潔に伝えることにした。

「実は────」

リリアンヌは、終始優しい眼差しで聞き続けてくれた。

「…………なるほどね」

「…………」

ふむ。と顎に手を添えて考え始める。その面持ちは真剣そのものだった。

「……レティシアは答えがわからないのね」

「……恋愛は、自分と無縁なものだとどこかで決めつけていた節があって。恋愛感情もそうですが、そもそも 恋愛(それ) が何かさえもわからない気がします」

「でも私を訪ねたということは、少なくとも知りたいとは思っているのでしょう?」

「…………はい」

知りたい。このまま放置せずに向き合いたいと強く思った。それを無意識に目線で訴えてたようで、リリアンヌは満足そうに笑った。

「それなら今から解読していきましょう。レティシアの底に眠る気持ちを」

「よ、よろしくお願いします……!」

そうして、リリアンヌによる恋愛講座が始まった。

「今のレティシアに、好きって感情は難しいかもしれない。だから反転させて、そこから近づいていきましょう」

質問と対話を通して、私にもわからない私の気持ちを探って解読することを約束してくれた。

「姉として、できることは全てさせて頂戴。やっと距離が縮まってきたのだから」

「ありがとうございます」

「ふふっ」

そう笑みを溢すと早速一つ目の質問を始めた。

「……レティシアは大公殿下と顔を合わせるのは嫌?」

「……いえ」

「話をしていてどうかしら。例えば、面倒だとか厄介に感じたことはあるかしら」

「出会った当初こそ、面倒だと思っていたかもしれません」

「あら。それはどうして?」

その問いへの答えを見つけるべく、レイノルト様との出会いを思い出した。

「あの頃は……社交界に参加することを面倒に感じていて。それに加えて酷い評判でしたから、誰かと関わりを作ることも億劫になって避けていました。そんな中、大公殿下は話しかけてきたんです」

「……なるほど。面倒に感じる気持ちが想像できるわ。自分の考えとは異なる出会いだったのね」

「はい。実は出会ってすぐは、大公殿下だと知らなかったんです。そのせいで割と嫌悪感を露骨に出していた気がします」

「それでも大公殿下は引かなかったのね。むしろ興味を持たれた、というところかしら」

「……かも、しれません」

そこから食堂での再会と身バレ。城下を散策したこと。建国祭で一曲踊ったことなど。

出来事と気持ちを整理していった。

「……何よりも大きいのは、私が変わろうか踏みとどまっていた時に、背中を押してくれた存在だということかもしれません」

「……ここまでくればレティシアでもわかるわよね? 何も抱いてない相手にそこまでしないと」

「はい。……思えばあの時からも、私とは違った感情を抱かれていたんですね」

「更に言えば、本人さえも気付いていない好意ならより前から抱いていたと思うわ」

あくまでも推測だけどね。そう呟くものの、リリアンヌの考えは当たっている気がした。その考えに深く頷いた。

「さてと。レティシア、ここで私から一つ質問するわね」

「……はい」

紅茶に伸ばした手を引っ込めて、真面目な表情で言葉を待った。

「レティシアが大公殿下に支えてもらったこと、この一連の行動を……貴女は大公殿下にしたいと思う?」