軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話:西門集合

翌朝、集合場所の西門に一人で向かった俺は、衝撃的な光景を目の当たりにした。

三十人は超えるであろう騎士団を整列させて叱咤激励するリズに、緊張と不安で精神的に追い込まれたクラフターを必死に盛り上げようとするクレス王子、そして、腕を組むオッサンと二人で話し合うアリーシャさん。

なんだこの三者三様な感じは……と戸惑っていると、それぞれの代表者が集結するかのように、クレス王子とリズとアリーシャさんが俺に近づいてきた。

色々聞きたいことがあるから、一つずつ確認していこうと思う。

「クレス王子、騎士団の人数が思ったよりも多いですね。こんなにも必要でした?」

「大勢の人間が物音を立てて作業すれば、魔物を呼び寄せる可能性が高いからね。これだけの人数は確保していた方が安全だって、ロック兄さんもシフォンさんも譲らなかったんだ」

ロック兄さん……? ああ、国王様か。シフォンさんも国王様も過保護で心配なのかな。いや、護衛騎士の数は少なかったし、幼い頃から見守り続けた二人が期待しているだけなのかもしれない。クレス王子ならうまくやってくれる、と。

「クラフターのみんなも緊張してるみたいですし、騎士が多いと落ち着くかもしれませんね。カレンには逆効果になりそうですけど」

ただでさえ初対面のクラフターたちが多いため、緊張しすぎているカレンは「カレンなのです!」と、ひたすら挨拶を繰り返している。騎士たちにも一人ずつ挨拶へ向かい始めたけど、大丈夫かな。あいさつ程度なら、怒られることはないと思うが。

「今日のカレンちゃんはあんな感じになるかな。ひとまず僕が気にかけておくから、ミヤビくんは気にしなくてもいいよ」

ここにいる全員に顔が利くのはクレス王子だし、お言葉に甘えるとしよう。

次に事情を聞きたいのは、リズだ。昨日は初めての王城に緊張しすぎて放心状態になったため、シフォンさんに任せておいたんだ。宿に顔を出さなかったから、てっきりシフォンさんが滞在する魔法学園の寮に泊まったと思っていたけど……。

「リズ、どうして騎士団のリーダーみたいになってるんだ? もしかして、昨日は王城に泊まったのか?」

「うん。 赤壁(レッドクリフ) の魔の手が伸びてて、急に私のために親睦会が開かれたよね。すごいお姫様みたいに扱われて、広い客間が用意されたの。今朝になったら、部隊リーダーに選ばれてて、もうヤケクソになるしかないよね」

過保護の餌食になっていたのは、リズだったか。シフォンさんの護衛依頼で共に過ごした赤壁には、冒険者ギルドで過剰な報告をするなと、釘を刺しておいたはずだ。その結果、子供みたいな屁理屈が正当化され、騎士団なら大丈夫だと錯覚し、リズの話が広められてしまったんだろう。

リズよりも強そうな人ばかりだし、さすがに気の毒だな。

「聞いて悪かったよ、ごめんな」

「大丈夫、ミヤビのこともみんな知ってたよ」

「なるほど、どうりで力強い目で見つめられるわけだ。今回の依頼では、騎士団と距離を置いて避けようと思う」

「残念ながら、もう遅いかな。早くもみんな、ミヤビのことを『隊長』って呼び始めてるから。私たち、すっごい期待されてるよ」

マジかよ、頭が痛くなってきた。赤壁の影響と聞くだけで悪いイメージしか湧かないけど、良い評価をされているのは事実だ。Aランク冒険者が一目を置いているという存在なら、トラブルになることもないだろうし、様子を見るとしよう。

最後に、この部隊に一番ふさわしくない普通のオッサンと話してたアリーシャさんに問う。

「アリーシャさん。あの男性も一緒に行かれる方ですか?」

「はい。今回のような長期滞在で規模が大きい部隊になった場合、冒険者でいうサポーターの立場の方が補助職員として同行します。私もその内の一人になります」

昨日の買い出しで変な空気になったけど、アリーシャさんが気にしている様子はなさそうだ。俺の夢だったのかと思うほど、仕事モードに切り替わっている。

「それでアリーシャさんも同行される予定だったんですね」

「女性の数が少ないとはいえ、長期滞在になると一人はいた方が問題になりません。今回に関してだけで言えば、ミヤビ様のクラフト料理を再現するため、特別に副料理長にも同行していただきます。トレンツ様のご友人とも聞いておりますので、私も緊張しております」

その話は聞いてないぞ。クラフトスキルを最大限にアピールするため、副料理長に交渉したんだろうけど……いくらベルディーニ家にゆかりのある人物とはいえ、急に声をかけて引っ張り出せるような役職の人じゃない。

絶対にシフォンさんが頼み込んで同行の許可をもらったやつじゃん。さすがに荷が重いよ。

「聞きたくない事実でしたね。料理や材料、調味料などは渡しますので、後はアリーシャさんの方で処理してください。偉い人には関わりたくないです」

「私も初対面なのですが……今回の目的は、街道の修理業務がメインになり、ミヤビ様に心労をかけたくはありません。用がある場合は、私を通じてコンタクトを取るようにいたします」

「仕事を増やしてしまってすいません。クレス王子やカレンだけならともかく、クラフターが十数人も集まるとなったら、そっちで手一杯になりそうなので」

「いえ、皆さんの料理をクラフトで作っていただける分、私の仕事は大幅に減ります。その分、副料理長と共にクラフト料理の研究を進める予定です。何かお手伝いできることがあれば、依頼の達成を優先させていただきますので、遠慮なくお申し付けください」

あくまで建築作業がメインで、クラフト料理の研究はおまけっていうスタンスか。完成品と材料を渡して丸投げするだけだし、俺にほとんど負担はない。研究が進んで試作品を出してくれれば、料理をクラフトする手間も省けるだろう。

でも、相手は国の副料理長が出てくるほどだし、追加の依頼報酬もなしで提供するっていうのは、さすがにな……。

「クラフト料理を提供するのは構わないんですけど、別で報酬とかいただけたりします?」

「お嬢様の伝言としては、『今回の依頼で採掘されたものに関して、どんなものであったとしても所有権をミヤビ様にする』という条件で交渉するように言われています」

これだけの騎士団が護衛として同行するなら、いくら廃坑とはいえ、ミスリル鉱石を採掘した際には問題になるだろう。正式にもらえるに越したことはないし、鉄鉱石も掘れると思う。ありがたい提案だな。

「じゃあ、それでお願いします。もらいすぎだと思ったら、その分は提供する料理を増やす方向で調整しますね」

「わかりました。ちなみに、クラフト料理はどれくらいレシピが豊富でしょうか」

数えるのが面倒くさいほどいっぱいあるけど、それを言うのは気が引ける。副料理長の耳に入ったら、何を思われるかわからないっていうのも大きい。

「材料さえあれば、依頼中は毎食違うメニューを保証できるほどですかね。カレンにも作ってもらうつもりですが、楽しみにしててください」

えっ? そんなにですか? と、アリーシャさんが固まる姿を見れば、予想を上回る量だったのは間違いない。少なめに言ったつもりだったんだけどな。

リズも騎士団で手一杯になるだろうし、依頼中は少し自重しようと思った。