軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第23話:付与魔術Ⅱ

木ブロックに魔力を流し続けること、十分。ようやく魔力を弱く浸透させられたため、ムラができていないか確認して、付与魔術を施す。

「 付与魔術(エンチャント) :火」

今度は……燃えない。木材に火魔法を付与しても、燃えてない!

恐る恐る木ブロックに腰を下ろしてみると、ゆっくりとお尻がポカポカとしてきた。座り心地は良くないけど、木ブロックに触れると温かい。

うまくいったみたいだ。素材に対する効果が大きく変わるけど、どっちも同じ付与魔術であることは間違いない。

今後は『魔法を付与する付与魔法』と、従来の『属性を付与する付与魔術』と区別していこう。ややこしくなると思うけど、この恩恵は大きい。

たとえば、この熱を持った木ブロックが『温熱ブロック』に変化したことで、使い道が広がる。

「これで家を作ったら、寒い時期は温かいだろうなー。床暖房ならぬ、家暖房だぜ」

床と壁から熱が生み出され、家を丸ごと温めるという、春のようにポカポカした温かい空間が生まれる。電気代はゼロであり、エアコンを使っているわけでもないため、加湿器も不要。吹雪で尋常じゃない積雪が観測されるような日でも、屋根にも火魔法を付与しておけば、勝手に雪が溶けていくだろう。

冬季限定、ポカポカドリームハウスの誕生かよ。全人類に引きこもり属性が付与されるかもしれない、恐ろしい家になるぞ。

「現実でやるとしたら、建築した家に付与するべきだな。夏は氷属性を付与し直せば、年中快適な生活を過ごすことができる。貴族の屋敷に付与魔法業務を売り込んだら、ぼろ儲けできるんじゃないか?」

間違えて屋敷を燃やしたら、大惨事だけどな。この世界の建物は土で建築していることが多いし、悲惨なことにはならないと思うけど。

順番としては、貴族の家に付与する前に、自分の家を建てるべきだな。どれくらい温かくなるか過ごしてみないとわからないし、せっかくリズと一緒に木材を採取に行ったんだから、早く家を建築したい。新米冒険者が街で土地を借りるなんて、かなり贅沢な夢を見ていると思うが。

今年は早めに風呂つきの宿にするってリズが言ってたし、これから本格的な寒さがやって来るだろう。自然の脅威と戦う上でも、付与魔法は重要な役割を担うはず。

もっと身近なアイテムに付与できたら……そう考えていると、俺はハッと気づいた。装備はともかくとして、肌着に付与すれば、最強の寒さ対策になるのではないか、と。

「服に火魔法を付与したら、着るタイプのコタツじゃん。家暖房よりも低コストだし、服の方が魔力を流す時間が減って、俺の負担も少ない」

奇跡の全身暖房システム誕生かよ。ドリームハウスよりも現実的で、すぐに取り掛かれるぞ。

「よし、早速リズに教えてやろう。布が燃えないように注意する必要はあるけど、練習して温度を調整すればいい。木材よりも肌着の方が燃えやすいから、注意が必要……の前に、女の肌着を気安く借りられるか?」

現実という大きな壁が立ちはだかっていることに、俺は気づいてしまった。このまま何も考えずに行動すれば、間違いなく変態扱いされるだろう。

下着を借りるわけじゃないけど、肌着を借りようとしても、十分に変態だと思われる領域だ。逆にギリギリを攻めてきたとみなされ、嫌悪感が増大する可能性もある。場合によっては、一生リズに話してもらえなくなるかもしれない。

いくら冷え性で寒がりのリズでも、さすがに嫌だよな。護衛依頼でガタガタと震えようとも、俺に肌着を渡してまで全身暖房システムを取り入れたいかと聞かれれば、限りなくノーに近いだろう。今のひざ掛けとクッションだけでも、休憩中は体を温めることができるから。

逆の立場だったとしたら、どうだろうか。急に「温かくするから肌着を貸してくれ」なんて言われた日には、変なことをされそうな気がして、距離を置くと思う。少なくとも、今後のパーティ活動を見直すのは間違いない。護衛依頼で夜間も一緒に過ごすことになったら、眠れなくなりそうだし、怖い。

かと言って、マフラーや手袋は戦闘の邪魔になるだろうし、靴下は足のサイズがわからなくて、聞きにくい。装備は属性強化の付与が基本と言っていたから、やっぱり戦闘に支障が出るんだよな……。

「付与魔法ができるとしたら、ひざ掛けとクッションぐらいだな。どれくらいの火魔法まで布が耐えられるかわからないし、ゆっくり検討していくか。ここでリズに見捨てられたら、ドブ掃除依頼をやる運命になるし、それだけは避けないと」

太陽が傾き始める寒空の下で、インベントリから普通の布を取り出した俺は、付与魔法の練習を始める。

弱すぎたら温かくないし、強すぎたら発火してしまう。ギリギリの領域を見極めるため、付与魔法の実験を続けた。

リズの冒険者生活をしっかりサポートするために、何度も何度も布を燃やすことになったけど。