軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第101話:成長するクラフター

一週間のホリホリ作業が過ぎて、ノルベール山の標高がガクーンと下がり、山から高原に変わる頃。俺たちは麓に建設していた拠点を、高原の方へ移した。

地面はすべて土ブロックで補強し、【ハンドクラフト】で加工した人工高原は、今までの危険な街道とは違う。緩やかな上り坂を登った後、ただ広いだけの土地が視界に映るんだ。

この地に人工クラフト都市を作る予定だが、草木を植えないと印象が悪いし、飲み水も必要になる。そのため、最低限の生活ができるように小さな湖を作ろうと思って、大きな穴を掘っておいた。あとは、ここにバケツで川の水を汲んで、それを移すだけなんだが……。

「隊長、見てくださいよ! 俺のバケツさばきを!」

「隊長、私の方が多いですよね!」

「師匠~。水を入れる作業が苦になってきたのです~」

予想以上にみんなのインベントリが大きくなり、あっという間に湖が水で埋まっていく。

こんな光景を目の当たりにしたら、さすがに騎士団は顔が真っ青だよ。一週間前はバテバテで悔しさを滲みだしていた連中が、山を壊して、バケツで大量の水を汲んでくるんだからな。

何度も川まで往復しなくてもいいし、バケツに大量の水を入れたとしても、インベントリで持ち運べば重さを感じない。今後は重労働の作業がクラフターに回ってきて、様々な仕事の効率が良くなることだろう。

なんと言っても、リズが「うわっ……ミヤビだらけじゃん」と呟いて、引いている。とても失礼だと思うが、今は褒め言葉として受け取っておこう。

だって、俺も引いてるもん。湖を作る集団なんて、絶対にヤバイよ。

もう少し大きい湖を作るべきだったかな、と思っていると、神妙な面持ちでクレス王子が俺に近づいてきた。

「僕は王都に戻ったら、クラフターの法整備を進言しようと思う。まさか僕も家が入るほどのインベントリになるとは、夢にも思わなかったんだ」

本当にそうなんだよな。粘土質で硬い土がこんなにも経験値が多いとは、夢にも思わなかったよ。カレンは家二軒ほど、クレス王子は家一軒ほど、他のクラフターは家が入るまではいかないけど、かなり大きくなった。

放っておけば、商人の仕事を奪いかねないほどに。

「俺も同じ思いですよ。ここの連中は、国が責任を持って管理してくださいね」

「事の重大さをみんなも理解してくれている、心配はいらないよ。クラフターは争いが苦手な人が多いし、ここに集まっているのは、物作りがしたいだけの仲間だから」

「今度は商人を追い出す側にならないことを祈っておきますよ。クラフターとしては、ここからが本番なので」

インベントリを大きくするなんて、あくまでオマケにすぎない。俺たちが依頼を受けたのは、街道の修理作業だ。

すでに雪崩で崩壊した街道は、山の整地と共に瓦礫を撤去して、もう存在しない。後はブロックを繋ぎ合わせて、崖と崖の間に巨大架け橋を作り上げるのみ。

湖を作り終えた俺たちは、騎士団とクラフターと共に架け橋を作る目標地点へと向かった。到着すると、そこは断崖絶壁になっている。

崖の上から見下ろせば、落ちたら助からないと断言できるほどの暗闇で、底が見えない。前を向けば、百メートル先に陸地が見えているけど、かなり遠回りしないとたどり着けない状況になっている。

だから、ここには大きな架け橋が必要なんだ。魔物の攻撃を受けても壊れないほど頑丈で、クラフターたちの明るい未来を表すような、非常識な架け橋が求められている!

まったく何もない場所に道を作る、そんな無謀な挑戦だと戸惑っていたクラフターたちは、もういない。みんなの引き締まった表情を見れば、向こう岸に橋を架けることだけを考えているとわかる。

「今からみんなには、 竈(かまど) でレンガブロックを作ってもらう。使い慣れた作業台とは異なり、品質が悪化しやすいから、必ず 修理作業(リペア) で強度を高めてくれ。インベントリにレンガブロックがいっぱいになったら、順番に道を繋げて橋を作っていくんだ」

大きく頷くクラフターたちの前に、一人ずつ 竈(かまど) を置いていき、火を付ける。そして、ノルベール山で採取した粘土も大量に分配して、レンガブロックを作り始めてもらう。

その間に俺は、足場と橋の骨組みを構築しなければならない。

ちなみに、この場合の足場とは、完成予定の橋の下にブロックを平行に設置していくことである。作業中に魔物が現れた場合、騎士団に追い返してもらう必要があるし、落下したときの命綱みたいなものがないと、安心して作業ができないから。

唯一予想できなかったハプニングがあるとすれば、山の気候だ。ノルベール山を削った影響もあるのか、強風が吹き荒れているため、足場を作るだけでも命懸けになる。

そこで、リズに同行してもらい、強風を防ぐ障壁を魔法で作ってもらうことにした。互いに困っているときに助け合える俺とリズの関係は、息の合った冒険者パーティだと自負しているよ。

「ねえ、風は平気?」

「ああ、全然問題ないぞ」

「それならいいけど、有効範囲は狭いから気を付けてね」

「変なフリはやめてくれよ」

ポンポンポンと足場を構築していき、リズが自由に動けるスペースも同時に確保していく。

足場を作っている途中で事故があるかもしれないし、魔物がやって来るかもしれない。追い払うのは簡単かもしれないけど、魔法の衝撃に耐え切れず、落ちる可能性もある。

落下防止用のブロックを敷き詰めれば、みんなが安全に作業できるようになるんだ。今は集中して、足場を作ることだけを考え――。

「なんかさ、ミヤビと二人きりって……久しぶりだよね」

俺の集中をぶち壊すかのように、リズが破壊力のある言葉をぶつけてきた。

リズはたまーーーに、こういうところがある。二人でいるときは無防備になりやすく、思わせぶりな発言や態度を取ってくるんだ。互いに父親と娘みたいに思う俺たちだからこそ、普通に話せる内容であって……。

いや、さすがに限度があるだろう! いったいどうしたんだよ、リズ! それは恋人になりかけの人間がする会話だぞ!