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私の結婚式用ベールを奪った義妹は、女神の祝福を受けられませんでした。

作者: ユミヨシ

本文

王都では華やかな結婚式が行われていた。

美しい花嫁は花婿と共に、神殿の長い赤い絨毯の上をゆっくりと歩く。

真っ白なウエディングドレスに、真っ白な長いベール。

そのベールには沢山の美しい白い花があしらわれていた。

大勢の人々が見守る中、女神様の祝福を受けるべく、女神像の前で神官長が待つ。

このレイル王国は女神レティナを信仰している王国‥‥‥

女神レティナの前で永遠の愛を誓うのだ。

花嫁が花婿とゆっくりと赤い絨毯の上を歩く。

はらりと、ベールを飾る白い花が絨毯の上に一つ落ちた。

花嫁が歩くたびに、一つ、一つ、また、一つと、花が落ちていく。

綺麗に作られた真っ白な花。

白いレースをあしらった手作りの花。

それが、花嫁が歩くたびに、真赤な絨毯の上に落ちていく。

人々がざわめき始めた。

「花が落ちるなんて」

「それも、一つ二つじゃないぞ」

「普通なら落ちないように、しっかりと縫い付けるはずだ」

「女神様が怒っている?」

「この結婚は間違っているのではないのか?」

花嫁は振り返り、悲鳴をあげた。

赤い絨毯はベールから落ちた沢山の花で埋め尽くされている。

「私は間違っていないわ。私がジェイル様の花嫁になるのよ。私は間違っていないっ。

間違っていないのよーーーーー」

この結婚式から三月前。

フェレンティーヌ・レルク公爵令嬢は幸せそうに、真っ白なベールに花を縫い付けていた。

一つ一つ丁寧に、一つ一つ落ちないように、しっかりと美しい白い花を縫い付けていく。

三か月後に、フェレンティーヌは結婚するのだ。

相手はジェイル・ブルク公爵令息。

フェレンティーヌは17歳。三年前に最愛の母を亡くして心に傷を負った。

しかし父は一年も経たないうちに再婚した。

新しい母、そして母が連れて来た新しい妹。

父は新しい母マリアに夢中になって、フェレンティーヌに構わなくなった。

それまではいい父だった。

両親の仲はとてもよく、フェレンティーヌは幸せだった。

それなのに、新しい母と養女になった妹が来た途端、変わった。

父はフェレンティーヌに無関心になったのだ。

フェレンティーヌは寂しかった。

そんなフェレンティーヌも、ジェイル・ブルク公爵令息とは幼い頃から婚約を結んでいた。

いずれ、レルク公爵家にジェイルが婿に入るという約束で。

母がフェレンティーヌの為に、最高の結婚相手を探してきてくれた。

互いに初めて会った時は6歳だったが、ジェイルは照れたように、フェレンティーヌに、

「初めまして。ジェイルと申します。よろしくお願いします」

と言って一輪の赤い花を差し出して来たのだ。

フェレンティーヌも真っ赤になって、その花を受け取った。

ジェイルとは、婚約者として、手紙をお互いにやり取りしたり、

時には互いにお茶をしたりして。

その後も良好な関係を築いてきた。

ジェイルは金髪碧眼の整った顔をしている美男だ。

フェレンティーヌは黒髪で容姿はそれ程、美人という訳ではない。

貴族なら誰しも行く、王立学園でもジェイルはモテた。

色々な女性達がジェイルを見て、頬を染める。

それでも、フェレンティーヌを一番大事にしてくれて。

「フェレンティーヌ。お昼を一緒に食べないか。食堂の良い席を予約しておいた」

「まぁ、嬉しいですわ」

ときたま一緒にお昼を食べて、色々な話をした。

いつもは、女性達とフェレンティーヌはお昼を食べている。

ジェイルも男性達とお昼を食べているのだが、週に一度は一緒に食べて。

交流を深めて。

フェレンティーヌは思うのだ。

家では新しい母と妹が来て、父は構ってくれなくなって。

食事も一人ぼっちでとてもサビシイ。

でも、王立学園を卒業したら、ジェイルと結婚式を挙げる。

そうしたら、ジェイルがレルク公爵家に来てくれて、わたくしは一人ぼっちじゃなくなるわ。

新しい母マリアも妹アリーナも、わたくしに冷たくて。

「フェレンティーヌ様は、お育ちが上品ですから、男爵家出身の私達なんて、馬鹿にしているのですっ」

マリアはそう言って、父に泣きつくのだ。

フェレンティーヌは馬鹿にした覚えがない。

アリーナも、

「フェレンティーヌ様は私達を馬鹿にしているのですっ。お父様。お姉様と顔をあわせたくないですっ」

と、父はフェレンティーヌに、

「私の愛する妻と、娘になんてことをするんだ。お前は。屋敷内を出歩くな。部屋に籠っているがいい。いいなっ」

何でわたくしが部屋に籠って過ごさなければならないの。

庭に面したテラスで楽し気に話をする三人。

フェレンティーヌが窓から眺めれば、アリーナが怯えた顔をして、父に縋って。

「お姉様が窓から睨んでいるわ。お父様」

マリアも

「怖い怖い。薄気味悪いわ」

父に睨まれた。

悲しい。サビシイ。辛い‥‥‥

使用人は古くから働いているから、わたくしをきちっと敬って世話をしてくれるけれども。

ああ、早くジェイルと結婚したい。

ジェイルが時々、訪ねて来て。

「薔薇の花束を買って来た。赤い薔薇。好きだろう」

客間でフェレンティーヌに差し出して来た。

嬉しくて受け取ろうとしたら、アリーナが入って来て。

「有難うございますっ。ジェイル様。私の為に買ってくれたのですね」

ジェイルは不機嫌に、

「何故、君に買ったことになるんだ?そもそも君は?」

「あ、私はアリーナです。レルク公爵家の養女になりました」

「そう。この薔薇はフェレンティーヌに買って来たんだ。返してくれないか」

「私の方が美人ですし、お父様はフェレンティーヌ様がこの家を継ぐよりも、私が継いだ方がいいって言っているわ」

「何だって?」

「私は養女になったのだから、継ぐ権利があるわ。だから、私を大事にした方がいいと思うの」

ジェイルは青くなって、フェレンティーヌに、

「本当か?君がこの家を継ぐのではなかったのか?」

フェレンティーヌは、

「わたくしが継ぐことになっております。幼い頃から母からそう聞かされているわ。わたくしは正式に父の血を継いでおりますし。いくらなんでも、父の血を継いでいないアリーナに家を継がせるなんてことはないと思いますわ」

本当に父の血を継いでいないの?

父は母を愛していた。

少なくとも死ぬまでは。

アリーナは一つ違いの16歳。

父の子だなんてありえない。

でも、もし、父が母を愛しているふりをしていたとしたら。

マリアの前夫は病で亡くなっていると聞いた。

マリアの実家は男爵家で、前の嫁ぎ先も男爵家だと聞いている。

でももし、もっと昔にマリアと浮気していて、アリーナがお父様の娘だったら。

お父様はわたくしなんて愛していない。

そもそも養女になった時点で、アリーナは‥‥‥この家を継ぐ権利が発生するわ。

わたくしは、追い出されるの?

わたくしがこの家を継がないとなると、ジェイルとの結婚はどうなるの?

ジェイルはにこやかに、

「まさか…いや、フェレンティーヌがこの家の長女だから、家を継ぐのは当然だろう。私達は幼い頃から、私が婿入りする約束で結ばれた婚約だ」

「そうですわね。絶対に、それを無しにするだなんて。あり得ませんわ」

いくら冷たくなっても、フェレンティーヌは父の娘だ。

幼い頃からの両家の婚約を無しにするだなんて考えられない。

フェレンティーヌはそう思ったのだ。

そう信じることにした。

女神レティナの祝福を受けるには、結婚式の時に花嫁が被るベールに白い花を沢山着けると良いと言われている。

人によって、自分で縫い付けたり、商人に頼んで作って貰ったり様々だが、フェレンティーヌは自分で白い花をベールに縫い付けたかった。

出来るだけ長いベールを用意して、沢山沢山、花を縫い付けるの。

女神レティナ様の祝福を受けて、ジェイルと幸せになる為に。

後、三か月で結婚式。

それまでに沢山沢山、縫い付けるわ。

ジェイルはわたくしをいつも慰めてくれていた。

わたくしが父に愛されなくなった時も、

「元気を出して。一時的な事だ。実の娘を嫌いな父親なんていない。それに、私が婿入りしたら、君とレルク公爵が仲良くなれるように、力になろう」

そう言ってくれた。

将来、レルク公爵家の為になるように、一生懸命、努力してきた。

母が生きていた時は、父も色々とフェレンティーヌに教えてくれたのだ。

マリアとアリーナが来てから、冷たくなって、フェレンティーヌに教えてはくれなくなった。

結婚すれば、ジェイルが婿入りしてくれば、父もわたくしを認めてくれて、態度も改めてくれる。

わたくしはジェイルと一緒に、このレルク公爵家を盛り立てていくのよ。

幸せになりたい。幸せに。

女神レティナの祝福を受けて、ジェイルと幸せになるの。

毎日毎日、一つ一つ、白い花をベールに縫い付けた。

まさか、あんなことになるとはその時、思いもしなかった。

一月前、フェレンティーヌは父に書斎に呼ばれた。

その場に、マリアと、アリーナ。そしてジェイルがいたのだ。

父レルク公爵はフェレンティーヌに、

「お前は修道院へ入って貰う。この家の跡継ぎはアリーナ。アリーナと新たにジェイルは婚約を結んで、一月後、結婚式を挙げる。これは決定した事だ」

フェレンティーヌは驚いた。

「お父様。わたくしが跡継ぎではありませんの?母が生きていた時は懸命にこの家の事を勉強して参りました。お父様が教えてくれなくなっても、わたくしなりに励んで参りました。ジェイルと一緒にこの家を継ぐ為に。それなのに、アリーナ?わたくしは幼い頃から、ジェイルと婚約をっ」

レルク公爵は、

「マリアがアリーナに継がせるべきだというのだ。最愛の妻マリアが。だからお前は修道院へ行け」

アリーナがジェイルに腕を絡めて、

「フェレンティーヌ様。そういう事で。貴方なんてお姉様だなんて呼びたくないわ。これからは、私がこの家を継いで、ジェイル様と幸せになるの」

フェレンティーヌはジェイルを見つめた。

ジェイルは、

「申し訳ない。私は婿入りする身だ。私の希望は叶えられない。レルク公爵家がアリーナを跡継ぎにするというのなら、私はアリーナと結婚しなくてはならない。本当に申し訳ない」

フェレンティーヌはジェイルに訴えた。

「貴方はずっとわたくしを慰めて下さった。貴方はわたくしの傍にいて、わたくしをとても大事にしてくれた。貴方はわたくしを愛しているのではなかったの?母が亡くなった時だって、傍でずっと慰めていてくれた。それなのにそれなのにっ???」

ジェイルは俯いて、

「我が父、ブルク公爵も、承知している。婚約者の変更に。本当にすまない。私は貴族でいたいんだ。アリーナとの結婚を受け入れなければ、私は行くところが無くなってしまう」

マリアがにこやかに、父に向かって、

「そういう訳だから。荷物を早い所、まとめて出て行って頂戴。いいわね」

アリーナが、ジェイルに腕を絡めながら、

「フェレンティーヌ様が作っていたベール。貰ってあげるわ。凄い沢山、花が着いていてとても綺麗。あれだけ美しいベールなら、女神レティナ様も幸福を私に授けてくれるわね」

涙が零れる。

フェレンティーヌは翌日、何も持ち出すことを許されず、身、一つで修道院へ行くことになった。

粗末な馬車に押し込められたフェレンティーヌは誰も見送ることも無く、修道院へ出発した。

一月後、豪華な結婚式が行われた。

ジェイルと、アリーナの結婚式は、大勢の貴族達が出席する中、神殿で行われた。

女神レティナの祝福を受ける為に、神官長が待つ女神像の前まで、赤い絨毯を花婿と花嫁は共に、歩いていかねばならない。

大勢の出席者が両側から二人が歩いて行くのを見ている。

ベールから、花が一つ、また、一つと落ちていく。

真っ白な花が、真赤な絨毯の上に、一つ一つ、また一つと。

人々が騒ぎ出す。

「花が落ちるなんて」

「それも、一つ二つじゃないぞ」

「普通なら落ちないように、しっかりと縫い付けるはずだ」

「女神様が怒っている?」

「この結婚は間違っているのではないのか?」

花嫁は振り返り、悲鳴をあげた。

赤い絨毯はベールから落ちた沢山の花で埋め尽くされている。

「私は間違っていないわ。私がジェイル様の花嫁になるのよ。私は間違っていないっ。

間違っていないのよーーーーー」

ジェイルは青い顔をして、そんなアリーナを見つめていた。

アリーナはジェイルに向かって、

「あの女がっ。フェレンティーヌが、私を陥れようと、わざと花が落ちるようにっ。酷い。酷いわ」

レルク公爵も慌てて、周りの貴族達に、

「ベールに縫い付けた際に使った糸が、弱かったのでしょう」

貴族達が、

「それにしても、歩き始めた途端、花が落ちるなんて」

「なんて縁起が悪い」

「この結婚、祝ってよいものなのだろうか」

神官長がレルク公爵達の傍に歩み寄って、

「女神レティナ様が怒っている。花嫁のベールから花が全て取れるなんて、前代未聞ですな。この結婚を承認する訳にはいかない。誠に申し訳ないが」

マリアが神官長に向かって、

「花が取れただけで???いくら言い伝えが、ベールに花を沢山着けて結婚したら幸せになれるからって。言い伝えでしょ」

神官長は首を振って、

「でも、花は取れてしまった。ベールに着いていた花全て。見てごらんなさい。100個位はあるでしょう。それが全て取れてしまうだなんて。女神レティナ様が怒っているに違いない」

アリーナが食ってかかった。

「女神様がなによ。この結婚、認めなさいよっ。私はジェイル様と結婚して幸せになるんだから」

ジェイルの父、ブルク公爵が、

「婚約者を変更したのがまずかったのか。女神様が怒っているとは。この結婚、我が公爵家としても、ジェイルを婿入りさせる訳にはいかない。女神様の怒りを更に買って、災いを受けたらたまらないからな」

そしてブルク公爵は出席者たちに向かって、

「結婚式は中止だ。申し訳ない。お詫びの品は後日、皆様にお届けすることにしよう」

こうして結婚式は中止になった。

前代未聞の、式の最中で、ベールから花が全て取れてしまった件は、国中で有名になった。

「女神様の怒りを買ったんだ」

「何でも、婚約者を変更したというではないか」

「後妻の娘が先妻の娘の婚約者を横取りしたそうだ」

「そいつは酷い。先妻の娘は?」

「家を追い出されたとか」

レルク公爵がフェレンティーヌにやった所業は全て、国中の人達に知れ渡ることになった。

マリアとアリーナも、先妻の娘の婚約者を横取りし、娘を追い出した悪女達として有名になった。

マリアが、

「どこの家でも私をお茶会にも呼んでくれないの」

アリーナも、

「ジェイル様との結婚はどうなるのよっーー。この家を私が継ぐっていう話はどうなるの???」

レルク公爵の元には、

アリーナが婿を取ってこの家を継ぐのは認めないと、国王陛下から命が下った。

女神レティナの怒りを買った女をこのまま、跡継ぎとして認めるのはまずいのであろう。

その頃、フェレンティーヌは隣国にいた。

以前、王立学園で留学しに来ていて、知り合いだった隣国のアレス第二王子が、

「君が修道院行きになったってジェイルから手紙を貰ったんだ。我が王国で働かないか」

と誘ってくれたのだ。

ジェイルの気遣いがとても嬉しかった。

彼は彼なりに、フェレンティーヌの事を心配して、アレス第二王子に知らせてくれたのだ。

アレス第二王子の秘書の一人として、今、王宮で働いている。

秘書と言っても数人いて、周りの人達はとても親切だ。

不慣れな環境のフェレンティーヌをとても気遣ってくれる。

そんな中、アレス第二王子が、フェレンティーヌに、

「君の家、レルク公爵が、君の事を探しているらしい。アリーナとかいう娘の結婚式でベールから花が全て落ちて、女神様の怒りを買ったとかで、レルク公爵家は評判が最悪だそうだな。君を連れ戻して、巻き返しを図りたいのだろう」

「そうですの。わたくしはあの家に戻ることはありませんわ」

「ところで、そのベール、君が花を着けたのだろう。何か細工をしたのか?」

「細工なんてしませんわ。わたくしはジェイル様の事を愛していた。だから、結婚を楽しみに一つ一つ丁寧に縫い付けていったのです。取れないように。それはもう、気を付けましたわ。それなのに、全て取れてしまった。女神様がアリーナの悪行を見ていたのでしょうね」

「そうか。そんなものか。ところで、ジェイルから手紙が私の元へ来ている。君に会いたいと‥‥‥」

フェレンティーヌは、アレス第二王子に、

「もう、お会いすることはありません。ジェイル様がアレス様に手紙を書いてわたくしを修道院行きから、助けてくれたことは感謝しております。でも、あの人は、アリーナと結婚式を挙げた。あの人が貴族でいる為には、ブルク公爵やわたくしの父に逆らえなかった事は仕方がないことだと解っております。でも、心がついていかないのです。ですから、二度と、ジェイル様とは会いません。会いたくないと伝えて下さいませんか」

アレス第二王子は頷いて、

「解った。そう伝えておこう」

人の心って、複雑で。

どうしようもなかったって解っていても、それでもジェイルの事が許せなくて。

胸に刺さったガラスの破片。それをわたくしの心臓に刺したのは貴方。

その破片は一生取れないのよ。

ベールに着けた花は全て落ちてしまった。

それはきっと。わたくしの悲しみの涙。

涙で花は全て落ちてしまったのだわ。

涙が零れる。

でも、自分がジェイルに二度と会わないという選択に間違いはないと、後悔はないと。

そう思うフェレンティーヌであった。

フェレンティーヌは後に、共に働いている秘書の一人と親しくなり、結婚した。

結婚後も、アレス第二王子の秘書を続けて、夫と共に一生、働いた。

二度と自国に戻ることは無かった。

レルク公爵は家を守る為に泣く泣くマリアを離縁し、アリーナと共に二人を修道院へ送った。

親戚の娘を養女に貰い、ブルク公爵に頭を下げ、

「ジェイルをどうか、婿入りさせて欲しい。このままでは我が公爵家が途絶えてしまう。どうかお願いだ」

「どっちにしろ、ジェイルもこのままでは婿入りさせてくれる家も無いだろうし、仕方が無い」

ジェイルは改めて婿入りすることになった。

再び、行われることになった結婚式。

新たに養女になった女性は、フェレンティーヌに似ても似つかない金髪碧眼の華やかな女性だ。

「わたくしが、貴方と結婚して差し上げるのですから、婿として一生、わたくしに仕えるのです。いいですね」

上から目線の高飛車な女。

フェレンティーヌはとても可憐で、とても優しくて。とても前向きで。

ああ、私は何を失ってしまったのか。

彼女は隣国で他の男と結婚して、アレス第二王子殿下の元で働いて過ごしているという。

君は幸せなのか?本当に幸せなのか???

沢山の人達の見守る中、

その女性と共に、赤い絨毯をジェイルは歩く。

ベールに縫い付けられている沢山の花。

その花はひとつも落ちることなく、赤い絨毯を歩ききって、女神レティナ像の前で待つ神官長の元へたどり着いた。

参列した貴族達は口々に、

「以前の結婚式は女神レティナ様の怒りを買ったとみて間違いない」

「悪行を女神様は見ているのだな」

その言葉を聞きながら、ジェイルは思った。

この結婚は女神レティナ様は祝福をして下さっているのだろう。

でも、私は‥‥‥

失ったものの大きさを、一生、胸に刻みつけて、生きていかねばならないのだろうな。

妻になった女性が微笑む。

ジェイルはにこやかに、微笑み返すのであった。

その後、ジェイルは妻に頭が上がらず、公爵家内での発言力も弱く、鬱々とした日々を過ごすことになった。

レルク公爵は、早々に爵位をジェイルとその妻に明け渡すことになり、領地の片隅で寂しく暮らすことになった。

今回のレルク公爵家、結婚式事件がきっかけで、

女神レティナ信仰は、更に王国で広まったと言われている。