軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九十一話「後ろ盾」

シルフィに操を立てよう。

シーツに残る赤いシミを見ながら、俺はそう考える。

シルフィはとても大切なものを俺にくれてまで、俺を助けてくれた。

彼女の望むことをしてやりたい。

シーツに残る赤いシミをナイフで切り取りつつ、そう思う。

しかしながら思い出すに、シルフィが自分の主義を主張することはなかった。

自意識過剰でないのなら、俺と一緒にいたいという意志は伝わってくる。

だが、彼女がそれを口に出す事はない。

もしかすると、アリエル王女の 護衛(しごと) の話も関わっているのかもしれない。

やはり、一度アリエル王女と話してみるべきだろう。

切り取ったシーツの切れ端を土魔術で作った小箱に入れて、神棚へと置いた。

手をあわせる。

ようやく、人に戻れた気がした。

---

月に一度のホームルームへと顔をだす。

相変わらず、ナナホシの姿はない。

「おはようございます、師匠」

「おはよう、ございます、ぐらんどますた」

ザノバとジュリが並んで挨拶をしてくる。

今思ったのだが、ジュリって結構可愛いな。

今年で七歳になるんだったか。

まだまだ俺のストライクゾーンには遠いが、外ハネな橙色の髪がキュートだ。

頭を撫でる。

ジュリはびっくりしたように俺を見上げていたが、すぐにうつむいて体を震わせた。

まだ怖がっているらしい。

取って食いやしないというのに。

「おはようございます、ザノバ、ジュリ」

俺が挨拶をすると、ザノバは「おや」と首をかしげた。

「師匠、何か良い事でもありましたか?」

「ええ?」

気づいたか。

ザノバも日頃から心配してくれていたからな。

すぐにでも報告したい所だが、しかし、EDが完治したと言って、どうやってと言われると難しい。

シルフィの正体は話せない。

フィッツ先輩に手伝ってもらったというと、変な誤解をされそうだ。

なんて思いつつ、自分の席へと向かう。

「お、ボス、おはようニャ」

「おはようなの、もぐもぐ」

リニア、プルセナがいつものように座っていた。

リニアは机の上に瑞々しくも張りのある若い足を乗せ、

プルセナはその豊満な肉体を制服に押し包み、窮屈そうに干し肉を噛んでいた。

思えば、俺はこの二人の巨峰の育ち具合を確認したり、

濡れたパンツを引きずり下ろし、その下に隠された理想郷を拝見した事があるのだな。

そう思うと、なんだか急に二人が可愛く見えて……。

「ニャ!?」

「ファックなの……」

俺が近づくと、二人は鼻を押さえて立ち上がり、俺から遠ざかった。

ちょっとショック。

あれか、例の臭いか。

俺は数年ぶりに復活した。

三年ぶりに新しいパンツを履いたかのような、清々しい気分である。

さぞや、発情の臭いとやらも強烈であろう。

「どうしようなの。ボスがとうとう我慢できなくなったの」

「病気だったんじゃニャかったのか?」

「私の魅力のせいなの、罪な女なの」

「じゃ、じゃあプルセナが生贄になるニャ。故郷のことはあちしに任せるニャ」

「いや……実はリニアに欲情しているのかもしれないの」

「ぼ、ボスの女になれば世界を牛耳れるかもしれニャいぞ? 毎日お肉食い放題ニャ」

「…………し、仕方がないの、リニアを守るためなの」

何やら話し合いをした後、プルセナが意を決した感じで俺の前にやってきた。

そして、可愛らしく目をパチパチさせると、シナを作って胸を強調してきた。

「うっふんなの、可愛がってほし……あいたっ!」

チョップした。

非常にバカにされている気分だ。

なにがうっふんだ。

「まあ、座ってくださいよ。取って食ったりはしませんから」

そう言うと、プルセナは頭を抑えつつ、尻尾を丸めて、俺の横に座った。

手が届かない位置に行かないとは珍しい。

リニアは逆に、そろそろとやってきて、やや手の届かない位置に座った。

こっちは珍しく警戒している。

いつもと距離が逆だ。

「ルーデウス、どうしたんだ? いつもと様子が違うぞ」

クリフも首をかしげていた。

俺は普段通りにしているつもりだが、そんなに違うのだろうか。

やはり、一皮むけた男というのは、外から見ると違うのか。

いやいや、別に初めてってワケじゃねえし。

「どう違うと?」

「なんか……自信に満ち溢れてる……? ように、見える」

ザノバに視線を送ってみると、彼も頷いていた。

自信。

そんな単語を聞いて、俺は人神の言葉を思い出していた。

男としての自信を取り戻す。

こういう事か。

自分ではあまり実感できないが、外から見ると違うのだろうか。

「皆さん、今までありがとうございました。

詳しい内容については言えませんが、先日、アレが治りました」

そう宣言すると「おお」という声が上がった。

ザノバが得心がいったという顔で頷き、クリフが肩を叩いてくれた。

リニアとプルセナは顔を見合わせ、ジュリはよくわからないという顔で首を傾げていた。

「何にせよ、おめでとう、だな」

「ですな。おめでとうございます、師匠」

「おめでとうなの」「おめでとうニャ」

なぜか拍手された。

俺にとっておめでたいのは確かだが、何かちょっと恥ずかしいな。

まるで最終話だ。

実はこのおめでとうって言うの、死ぬ順番じゃないだろうな。

「でも、ボスが治ったとなると、ピンチだニャ。全校女生徒の貞操の危機だニャ」

リニアがそんな失礼な事を言い出した。

「失礼な。僕は紳士ですよ」

シルフィ以外には手出ししないとも。

と、俺はここで、また改めてそう決意した。

---

ホームルームの後、職員室に赴く。

先日の旅の分の補習授業を申請するのだ。

職員室に入ると、空気にざわりと震えた。

やはり、外から見ると、何かが変わったように思えるのだろうか。

まるで全員にシルフィと致した事を知られているようで少し恥ずかしいな。

などと思っていると、ジーナス教頭に呼び止められた。

「ルーデウスさん、何かありましたか?」

「ここ三年ほど悩んでいた問題が解決して、スッキリしただけですよ」

「そうですか、それはよかった」

ジーナス教頭は頷いて。

そして、苦笑した。

「となると、もしかすると、この大学から去ろうと考えていますか?」

「え?」

ジーナス教頭の言葉に、俺は首をかしげる。

しかし、考えてみれば。

確かに、この大学における、俺の最初の目的は達成した。

そのために来たのだ。

それを達成した今、家族と再会するべく、ベガリットへと移動してもいいが……。

だが、一年間で、他にも色々とあった。

ザノバと出会い、ジュリを買い、

リニアとプルセナと仲良くなり、

クリフとの繋がりも得た。

そしてナナホシ。

彼女との出会いは、俺にとって何か意味がある気がする。

人神は、奴と出会わせるために、ここに連れてきたのでは、と思えるぐらいだ。

奴にとって、シルフィとの再会は、ついでだったのかもしれない。

しかし、俺が一番大事なのはシルフィだ。

彼女がここにいる以上、離れるわけにもいくまい。

いざという時には守ってやりたいしな。

王女の護衛なら、危険な事もあるだろうし。

微力ながら力にもなりたい。

しかし、アリエル王女らは今、確か五年生だったな。

卒業後はどうするのだろうか。

まあ、卒業まではここにいるだろう。

一応、パウロ達には定期的に手紙を出している。

届いたかどうかは確かめようがないが……。

しかし、あれから一年だ。

今から移動を始めると行き違いになる可能性も高い。

大した成果が上がらないからといってすぐに方針を変えるのは素人。

と、一日で30件以上の新規契約を取ってくる凄腕サラリーマンも言っていた。

今はまだ待つとしよう。

「いえ、卒業までかどうかはわかりませんが、あと数年は在籍すると思います」

「そうですか、それはよかった」

ジーナス教頭は苦笑していた。

嬉しいんだか、嬉しくないんだか。

よくわからない苦笑だ。

---

ナナホシはいつもどおりだった。

彼女は、俺の事など眼中にないのかもしれない。

会話も必要最小限だ。

彼女と話していると、会話にジェネレーションギャップを感じる時が多々ある。

この間も、知っているだろうと思って月に代わってお仕置きする女子中学生の話題を出したら「なにそれ」と首をかしげられた。

最近の若いモンは月光の伝説を知らんらしい。

俺たちの世代では、見ていなくても名前ぐらいは知っているはずなのに。

しかし、オタクではないのであれば、それもまたしょうがない。

そう思ったのだが、彼女は俺のような重度のオタクではないにしても、漫画やライトノベルなんかはそこそこ見ている子らしい。

そんな子なのに、知らないというのだ。

もしかすると、7つの竜の玉を集める話も知らないのかと聞くと、それは知っているらしい。

元の世界にいた頃のナナホシの年齢は17歳、対する俺は34歳。

二倍の差がある。現在はもっと離れている。

仕方がないのかもしれない。

まさにジェネレーションギャップである。

放映期間を考えれば当然の事かもしれないのだが、実際に会って話してみると、面食らってしまう。

そんなナナホシだから。

俺も口が滑ったのかもしれない。

「ナナホシさんは、もし誰かと付き合ったら、その相手に何を望みますか」

ナナホシはずるりと手を滑らせた。

そして、書いていた紙をクシャっと丸めて、捨てた。

「突然、何を言い出すの? コイバナ?」

「似たようなものです」

「あのね、私ははやく帰りたいの。真面目にやってくれない? いつもいつも雑談ばっかりして、黙って手を動かせば、それだけ効率が上がるのよ?」

こんな事を言っているが、ナナホシも別に雑談を嫌っているわけではない。

現に、今まではよほど酷くない限り、ぽつぽつと何かを喋りながら作業をしてきたのだ。

それが、こんな言い方をしているということは。

「ナナホシさんはあれですか。恋愛経験は無い人ですか?」

「……ちっ!」

盛大に舌打ちされた。

「私にだって、好きな人ぐらいいるわ。

喧嘩して、それっきりだけど……」

そういえば、ナナホシは痴話喧嘩の最中に召喚されたのだったか。

あのどちらかが好きだったのか、

それとも、どちらか選べない逆ハーレム状態だったのかは知らんが。

謝るにしろ、喧嘩の続きをするにしろ、帰らないといけないのは確かだろう。

そういえば、あの二人も召喚されている可能性が高いのか。

ナナホシ以外は、まったく噂を聞かないから、来てない可能性も高い。

もっとも、この世界に魔力無しで放り出されて、誰の助けもなく高校生が生きていけるかというと……。

いや、これは彼女に言うべきじゃないだろう。

あるいは、ナナホシもそれぐらいは、想定しているかもしれない。

自分がここまで生きてこられたのは、運が良かったからだと。

そして、運が悪ければどうなるかを。

ナナホシは口をへの字に曲げつつ、ぽつりと応えた。

「好きな人は……普通に、一緒にいてくれるだけで十分よ」

つらそうだった。

聞かなければよかったな。

---

昼休みになった。

俺は食堂には行かなかった。

今日は別の場所に用事があった。

生徒会室である。

シルフィと真面目に付き合うとして、彼らに黙っているわけにはいかないだろう。

彼らは俺とシルフィをくっつけようと動いていた。

ゆえに、ある意味、すでに許可は得ているようなものである。

が、これもケジメであろう。

本校舎最上階。

一番奥。

少しだけ豪華なその扉には、『生徒会室』の文字が刻まれていた。

そこを、ノックする。

「誰だ!」

ルークの声だ。

「ルーデウス・グレイラットです。

例の件でお話があります」

そう答えると、中で一瞬シンとした後、

ドタドタと何やら慌ただしい音が聞こえてきた。

アポイントメント無しで来たからな。

悪いことをしたかもしれない。

「は、入れ!」

ルークの声。

俺は扉をあけて、入室する。

高そうな椅子に座るアリエル王女。

綺麗な金髪を編み込んでいる。

透き通るような美貌だ。

だが、体つきは歳相応といった所か。

筋肉は普通の女子と同等で、胸は大きくもなく、小さくもない。

その脇には、サングラスをつけたシルフィとルークが直立不動で立っていた。

仕事中のシルフィは凛々しい。

キリッとしていて、なんというか腹心という感じだ。

いつものなよっとした泣き虫の姿は無い。

俺の持っていた、気さくでちょっと子供っぽいイメージともまた少し違う。

冷たい印象だ。

なるほど、このイメージを保ちたいなら、確かにシルフィは喋ったらダメだな。

「お初にお目にかかります。ルーデウス・グレイラットと申します」

俺は貴族の礼をしつつ、アリエルの前に跪き、頭を垂れた。

王族に対する礼儀作法は習っていないが、多分、こんな感じでいいはずだ。

「ここは王宮ではありません。私と貴方はお互い生徒同士。顔をお上げください」

アリエル王女の言葉に、俺は頭を上げた。

しかし、膝はついたままだ。

シルフィに恥をかかすわけにはいかないからな。

恋人の上司の前では、下手に出て置いたほうがいい。

「それで、この学校に雷名を轟かせるルーデウス殿が、本日はいかなご用向きですか?」

アリエルの声は、聞いていると、脳のてっぺんあたりが痺れてくる感じがする。

心地いいのだ。

これがカリスマ性というやつだろうか。

あるいは、こいつも神子なのかもしれない。

声による魔術があるのだ。

声で相手を魅了するような神子がいてもおかしくない。

「すでに、シルフィ……シルフィエットより、色々とお聞きかと思いますが。

その件について、少々お話をさせて頂きたいと思い、参じました」

アリエルの顔が真剣味を帯びた。

シルフィより、王女の思惑は少しばかり聞いている。

彼女はこんな所に逃げ延びつつも、なお王位を諦めてはいないらしい。

そのため、この学校に通いつつ、有力者を仲間に引き入れていると。

「私は、シルフィに病を治してもらいました。

殿下はそのシルフィに協力してくださったと聞き及んでおります。

ゆえに、何か私が力添えをする機会があれば、何卒お声をお掛けください」

アリエルはその言葉を、ゆっくりと聞いていた。

そして、ルークに目配せをした。

ルークはこくりと頷くと、口を開いた。

「お前は、アスラ貴族の政権争いは忌避していると思っていたが?」

言われ、俺は即答する。

「確かに、アスラ王国の政権争いになんて首は突っ込みたくはありません。

僕なんて虫けらのように潰されかねませんしね。

けれど、想い人が渦中にいるとなれば、話は別です」

そう言って、シルフィを見る。

顔が真っ赤だった。

「シルフィが死にかけている時に、自分はのほほんと暮らしていた、なんて事は嫌ですからね」

「へぇ……」

アリエルは驚いた顔をしていた。

ルークもだ。

何か変なことを言っただろうか。

ルークが口を開く。

「グレイラット家に確執はないのか? 叔父……パウロの出奔したノトスや、お前をこきつかっていたボレアスに」

「サウロス様が処刑されたのは少々残念だったと思っていますが、それ以外は、特には」

ん?

なんか今、話が咬み合ってなかったな。

まあ、その事については、俺の中で整理は済んでいる。

「あとは、ルーク先輩に嫌われている程度ですかね」

すると、ルークは眉根を寄せて言った。

「お前は女の気持ちに気付かない鈍感野郎だからな」

「それについては、返す言葉もございません」

なにせ、一年もシルフィの性別にすら気づかなかったのだ。

鈍感と言われても仕方がない。

積極的に探ろうとしなかったのは言い訳に過ぎない。

あんなにかわいいのに、なんで気づかなかったのだろうか。

「ルークは女の気持ちを弄ぶクソ野郎だよね」

ぼそっとつぶやいたのはシルフィだ。

案外、過激なことを言う。

俺の前では猫をかぶっていた……というのもあるか。

しかし考えてみれば、ルークとシルフィはこの六年間、ずっと仲間だったのだ。

俺よりもシルフィといた時間が長いのだ。

ゆえに、遠慮も少ない。

気安い言葉も出るだろう。

少し妬けるな。

「なんだ、色気の欠片もないくせに、一端の女を気取っているのか?」

「ちゃんと色気あったもん、ルディはありがとうって言ってくれたもん……あったよね?」

そう言って、シルフィは助けを求めるように俺を見てきた。

この二人の漫才の仲間入りをして、大変よろしゅうございました、と正直に答えてもいいが。

しかし、アリエルの前でそれを言うのは、少々気が引けるな。

そう思って王女に視線を送ると、彼女が静かに口を開く。

ふと見ると、その口元に、パンクズがついていた。

食事中だったのだろうか。

「ふたりとも、少々御黙りなさい」

シルフィとルークは口をつぐんだ。

これもいつものやりとりという感じだ。

年季を感じられる。

「ルーデウス・グレイラット。

貴方の力を借りられるのであれば、非常に心強い」

「ありがとうございます」

「ですが……」

アリエルはそこで、ちらりとシルフィを見た。

そして、意を決したように、言い放った。

「貴方の力は必要ありません」

「なっ! なんでですか! アリエル様!」

声を上げたのは、シルフィだった。

彼女の機先を制するように、アリエルは続ける。

「勘違いしてもらっては困りますが、シルフィは決して、貴方の力が目当てで近づいたわけではないのです」

「はい、そこは勘違いしてはいません」

シルフィも、そうした下心はあったと言っていたような気がしたが……。

いい、ここはアリエルの言葉を素直に聞いておこう。

「私が貴方に頼むことはただ一つです。

シルフィを、私の友達を、幸せにしてあげてください」

俺は深く頷いた。

言われるまでもない事であった。

「はい、必ずや」

「言葉だけでは、なんとでも言えますが……まず何をすべきですか?」

「…………」

何をすべきか、とアリエルは極めて強い口調で聞いてきた。

俺は口をつぐむ。

何をすべきか、わからないからここにきたのだ。

いや、わからないなんて言い訳はやめよう。

どこの世界でも、男女での責任の取り方というものは同じなはずだ。

そうだ、パウロだってそうだと言ってたじゃないか。

責任を取るために、アスラに家と職を用意したのだ、と。

「やはり、結婚でしょうか」

俺がそう言うと、シルフィが口元を抑えた。

ルークが直立不動を崩し、ショックを受けた顔でよろめいている。

「そうですか。素晴らしい。シルフィに聞いていた通りの男ですね、ルーデウス様」

アリエルは満足気に頷いて、シルフィを見る。

「シルフィエット・グレイラット」

「はっ!? え!? グレイラットって、ええ!?」

シルフィエット・グレイラット。

そう呼ばれ、シルフィはおろおろしていた。

「ルーデウスの妻となるならば、今後、男装をする必要はありません。女らしくなさい」

「え、でも……変装しないと、アリエル様が……」

「その代わり、ルーデウス。貴方の『名』を使わせて頂きます。

いまや、この辺りであなたを知らない人はいませんからね。

そんなあなたに、腹心であるシルフィをさし出したという事で、勝手に勘違いしてくれる人も出てくるでしょう」

なるほど。

俺がシルフィと一緒になれば、

アリエルと俺に繋がりが出来た、と考える奴もいるということか。

力は借りないが、威は借りる。

やってる事はほぼ同じだが、面白い言い回しをするものだ。

「お安いご用です……私としては、素直に傘下に入ってもいいんですがね」

「要りません。あなたの力は強すぎますので。私の手に余ります」

そんなに強いかね。

と、思ったが、俺としても都合のいい展開である。

アリエル王女にくっついてあれこれと動くのも面倒だしな。

素直に受け止めておく事にしよう。

「もちろん、もし貴方に何かあった時は、私の名前を使う事も許します。このような身の上なれど、アスラ王国第二王女の名、何かしらの役に立つこともありましょう」

「それはありがたい」

偉い人の後ろ盾というのは、いくらあってもいいものだ。

しかし、本当に俺にとって都合がいいな。

シルフィはもらえるけど、俺は何もしなくていい。

それどころか、何か問題を起こした時はアリエルに後ろ盾になってもらえる。

よく問題を起こす俺にとって、アリエルの後ろ盾というのは非常にありがたい。

でも、本当にいいんだろうか。

後で何か要求されたりとかしないだろうか。

いい話には裏があると言うが……。

いや、世話になったら、その分をお返しするのはやぶさかではないんだがな。

「それで、シルフィエット。貴女はどうなさいますか?」

「は、はい! ボクは、い、いえ、私は、その、今までどおりアリエル様に仕えつつ、る、ルディ……いやルーデウスの妻として頑張りたいとおもいます!」

「…………そうですか、お幸せになりなさい」

アリエルは少し含むような沈黙の後、シルフィの背中をぽんと押した。

シルフィが俺の所までやってくる。

恥ずかしそうに、耳の裏を掻いている。

可愛い。舐めたい。

いや、ここは我慢だ。アリエルの前だしな。

「あ、あの……えっと……る、ルディ……その、よろしくおねがいします」

「あ、はい。こちらこそ」

ぎこちなく、俺達は頭を下げあった。

シルフィはしばらくもじもじとしていたが、

ふと、背後を振り返った。

そのまま、アリエルと見つめ合うシルフィ。

「その……アリエル様、ルーク、今までありがとう」

シルフィはサングラスを外すと、そう言って頭を下げた。

俺もそれに習って頭を下げる。

こうして、俺はアリエル一行との繋がりを得た。

そして、シルフィと結婚する事となったのであった。