軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14話「ぶん投げ交渉」

「立ち話もなんですので、椅子に座っていてください。いまお茶お出ししますね」

何となく事情は理解した。

例の女神様のあれだろうな。

お客さんを立ちっぱなしにしておくのはあれなので、適当に椅子を進める。

一部はただの切りっぱなしな丸太だけど許してな。

「あとは茶請け代わりに、焼き芋ですがどうぞ」

「芋……?」

一人だけ食べる訳にもいかないので、とりあえず全員に1本ずつ焼き芋を出すことに。

ただみんな出された物をみてただ首を傾げて、まったく手を付ける様子がない……そうね。焦げた金属の塊みたいのお出しされても困るよね。

「あ、周りのは剥がして食べます……こんな感じで」

自分の分を手に取り、ぺりぺりとアルミをはがして中の紙も皮ごと剥ぐ。

ほかほかと湯気がたつおいしそうな中身が現れたので、みんなに見せてから一口。

うん、おいしい。

ほくほくで甘くて香ばしい。これぞ焼き芋って味に仕上がっている。

にこにこと美味しそうに食べる俺をみて、ほかの人も慌てたようにアルミと紙をはがしてかぶりつく。

火傷注意だけど……まあ言ってもいまさらか。

「あまっ!?」

「ほんとだあめえ!」

「……これはこれは」

「まさか芋を砂糖漬けにしたのですか?」

砂糖ほどじゃないにしろこの時代だと結構強烈な甘みになるんだろう。

それに芋が甘いというのも衝撃だったのか、みんな良い反応をする。

遊佐さんはうんうんと頷きながらぱくぱく食い進めているな。

大分甘いものに慣れてって、そこまで甘いの食わせてないような……サンプルで渡した品、つまみ食いとかしてないよね?

「元から甘い芋なんですよ。こうやって焚火に放り込んでおくとより甘く仕上がるんです」

茹でたり蒸しても割と甘いけど、焼き芋にするとさらに甘くなる。

でも茹でたりしたのもあれはあれで程よい甘さでおいしいよね……うん、やっぱ口の中の水分持ってかれるねえ。

お茶のお替りでも用意しておこ。

「いや、大変おいしい芋でしたな」

「こちらも取引可能なのでしょうか?」

「少量であれば、まあ」

なんだかんだで品種改良された現代のサツマイモだからねえ。

みんな気にいったようで何より。サツマイモは結構お手頃価格だから取引出来なくはないっちゃないけど、量を用意するのは無理。

少量であればと言うと、そうですか……と残念そうに引き下がったのでサツマイモの取引は無さそうかな?

まあ量を用意できるなら取引を望んだのだろうけど……一応ね量を用意する方法はあるんだよ。ただ今すぐは無理だ。

もし用意できるようになったらその時改めて声をかけよう。

「それで、本題の取引の条件ですが……」

お茶を飲んで一息ついてから赤井さんが表情を改めて、そう切り出してきた。

これからお値段交渉となる訳だけど、正直めんど……というよりか、元値から考えてよほど買い叩こうとしない限り、こちらが損をすることはないんだよね。

原価率っていうのかな。業界にもよるんだろうけど3割とかそれぐらいだっけ? そこから大きく外れない限りは多少安くても良いやと考えてる。

「条件はお二人にお任せしますよ」

「……良いのですか?」

「ええ、ここに来れたのなら問題ありません」

俺の言葉を聞いて二人は困惑しているが、遊佐さんはハッとした様子で来た道のほうへと顔を向ける。

その表情はかなり厳しいものであった……多分俺と同じような考えに至ったんじゃないかな。

安全は保障するって女神の言葉の正体が、ほかの商人がここに来れなかったことに繋がるんだと思う。

何かしら害意があると近寄ることも出来ないとかね。さすが女神様良い仕事をなさる。

「それでは器に入っていた砂糖と同量であれば、400文で如何ですか?」

「かまいません。思っていたより高いですが、大丈夫なので?」

事前に調べた感じから200文いけば良いかなって思っていたけど、倍額いくとは思わなかった。

無理してないと良いけど。大量に在庫抱えて赤字になりましたとかは避けて欲しい。

「このように真っ白な砂糖など初めてみますからな……むしろ安いぐらいですよ」

白い……ああ、なるほど。

そういえばこの時代の砂糖って全部黒糖なんだっけ? その分だけより貴重ってことか……赤井さんはこの値段で買い取っても十分商売として成り立つと考えているということだろう。

それならこちらとしても異論はない。

「蜂蜜に関しては……毎月1升ほどの量を供給頂けるのであれば、そうですなあ4貫で買い取らせて頂きます」

「ではそれで」

こっちは緑谷さんか。

蜂蜜にかんしてはこの時代の相場が本当にさっぱり分からなかった。

貴重品でどちらかというと薬扱いとか出てきたけど、果たして売れるのだろうかね?

まあ、蜂蜜は長期間保存が効くから多少在庫として抱えても大丈夫ってことかと納得し、こっちも了承する。

「あとは品物をどう収めるかですが、毎回お二人が来るのも大変ですよね」

遊佐さん曰く慣れれば大丈夫っぽいけど……まあこの二人もそこまでくたびれた様子ではない。

この時代の人の移動手段はほぼ歩きだろうし、鍛え方が違うんだろうねえ。

とはいえ距離があるのは確かなので……最悪、今後は町まで持ってきてとか言われる可能性もあるか?

「そこは手代の者を向かわせますので、最初の取引のみ私と共にうかがいます」

手代ってのが何のことかいまいちだが、代理で誰かを寄越すってことだろうから心配はいらないかな。

町にこいってならずにすんで良かった良かった。

その場合は木をなぎ倒していくはめになるからね。

「とりあえず今ある分だけ……10日分ですね」

「おお、確かに……ではこちらを10日分の代金になります」

「確かに。ありがとうございます」

受け取った袋はずっしりと重く、金属のこすれ合う音がする。いやあ……すごい量のお金もらってしまった。

置くとこどうしようねこれ。