軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87 フルスイングしたら爆笑された件

朝からやる気満々でダンジョンにやって来た。少し回り道をして金属バットを購入し、準備万端。ダンジョンに入る前の準備運動もいつも以上に頑張った。必要以上にテンションを上げて、よく動くことを意識して行動する。

朝から3人前の朝食を食べたからだ。

いや、あんなに食べれるとは思わなかったんだよ。普通にいつも通りに食べていたら、気がついたら3人前。しかも、お腹にはまだ余裕があった。これはヤバいスキルだわ。マジで気をつけないと…。

「スキルを試したいんだけど、危ないかもしれないから何かあったら対応してもらえる? 私には危ないけど、良輔なら大丈夫だと思うから。」

「何をするのかわからんけど、何で俺は大丈夫なんだ?」

「脳筋だからだよ。まあ、できるかどうかわからないし、とりあえず試してみるだけだから。」

わかりやすい魔物を相手にしたほうがいいから、ホーンラビットがいる場所までやって来た。昨日手に入れた『拍手上手』を使ってみる。

パァン、パァン、パァン……

「音、めっちゃ響くな。やりたいことってこれ?」

「そう。ちょっとだけ待っててくれる? 少し時間がかかるかも。」

ダンジョン図鑑を表示してマップを確認する。見ながら何度か拍手していると、音につられて近くのホーンラビットが寄ってきた。

「おおー、近寄ってきた。しばらく拍手するから、近寄ってきたやつは倒してくれるかい。」

「すげ〜な、それ。でも、拍手じゃなくて指笛でもいいんじゃないのか?」

「指笛するたびに手を洗うのが面倒だから拍手のほうがいい。」

「潔癖〜。」

「ダンジョンの中なんてどんな菌がいるのかわからないのに、手洗いしないなんてあり得ない。良輔も気をつけないと変なところで腹壊すよ。」

「あんまり気にしてなかったわ。」

寄ってくるホーンラビットを倒してもらっている間に、図鑑で魔物の動きを確認する。思ったよりも狭い範囲にしか響いてないみたいだ。音は聞こえていても、動くほどじゃないんだろうな。

「ありがとう、もう大丈夫よ〜。」

「了解。何かわかったのか?」

「拍手すると魔物が寄ってくるけど、近い場所にいる魔物しか来ないから、結局は自分で移動したほうが早い。」

「なるほど、多少は使えるみたいだな。」

「いや、使えないでしょ。わざわざ拍手するくらいならホイッスルでも吹きながら歩いても同じじゃん。」

魔物を集めたい時はうるさくすれば寄ってくるから、微妙なスキルを使う必要はないな。拍手上手のスキルはダンジョンでは出番がなさそうだ。

次は『フルスイング』を試してみる。インベントリから金属バットを出して、それっぽく振ってみる。昨日の夜、動画サイトでバッティングの基礎を教えてる動画を見たから、少しだけ振り方がわかる。

ホーンラビットの近くまで行って、ジャンプしてくるのを待つ。ダンダンと足踏みをし始めたと思ったら、こっちに向かってジャンプしてきた。

両手で金属バットをしっかり握って、思い切りフルスイングする。腕だけじゃなく、腰から回転するように振るらしい。

ガゴッと鈍い音がして、ホーンラビットが少しだけ飛んでいき、ボテボテっと転がってドロップ品になった。

「うわぁ~、絵面ヤバ…。」

角に当たったのか、頭蓋骨の硬いところに当たったのか、手がジーンと痺れる。グラスホッパーとか、柔らかめの魔物にはいいかもしれないけど、角や骨がある魔物にはやめたほうがいいな。

的が大きいし、そんなに強い魔物じゃないから上手いこといったけど、ちゃんと練習しないと外しそうだな。

金属バットは一旦インベントリにしまって、剣でフルスイングを試してみる。バットと同じように両手でしっかり握って構える。

ジャンプしてきたホーンラビットにフルスイングをブチかます。ちょうど当たりどころが良かったようで、首から胴体にかけてザックリと斬れていた。

もっとしっかり当たれば首チョンパできるやつだな。これは練習する価値がありそうだから、しばらくやってみよう。

ところで、良輔はなんであんなに爆笑しているんだろうか? 結構上手くいったと思うんだけど…。

「なぜ爆笑?」

「動画撮ってやるから、自分で見てみな。」

もう1度ホーンラビットをフルスイングで倒す。ギリギリまでよく見て、思い切り振り抜く。さっきよりも深く斬りつけることができたと思うけど、どうだろう?

「動画は送ったから見てみなよ。」

「わかった、この動画かな? ぶっ、あっはっはっは!! ちょっ、無理無理、あははは!!」

真剣な表情をしたおばちゃんが剣をバットのように構え、飛んできたホーンラビットにフルスイングする。想像以上にシュールな映像になっている。バット(剣)の構えが微妙に様になっていて、スイングのフォームもきれいだ。それが余計にツボにハマってしまう。

「あっはっはっは! ヤバい、ウケる!」

「絶妙に微妙だろ。すげーバランス。」

「これ、友達に見せるわ。絶対笑うと思う!!」

いや〜、久しぶりに爆笑したわ。フルスイングは当たりのスキルだったわね。この動画が撮れただけでも満足だよ。

使い勝手はよさそうだから、しばらく練習して慣れておくことにしよう。もう少しきれいに倒すことができれば、爆笑されることもなくなるだろうし。

良輔や友人達に笑われるのはいいけど、知らない人には見られたくない。家に帰ったらバッティングの動画をチェックしないといけないな。