軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30 最近どう?

仕事が終わり休憩スペースで一息ついていたら、何やら騒ぐ声が聞こえてきた。この声は木本さんじゃないかな? てか、注意しに行った方がいいのか…。

どうするか葛藤していると彼女の声が休憩スペースまで近づいて来た。ああー、一方的に中原君に話しかけていたのか。ガン無視されとるんだが。

「ねぇねぇ、中原さん。いいじゃないですかぁ。」

「……………。」

「ちょっとぉ、聞いてますぅ? 中原さんのオススメの店でもいいですよぉ。」

「……………。」

「えぇ~、なら家に来ますかぁ。えっ、その方がいいかもぉ。」

「……………。」

すげーな、木本さん。あんなにガン無視されても全然めげない。私なら泣くぞ。あの虫を見るような目で見られただけで泣くぞ。

うわーっと聞いてたら、とうとう休憩スペースにやって来た。中原君が私に気づき、あっ!って顔をする。どっちの意味だ? 巻き込むかもって顔か? それとも助かったって顔か? どっちにしろ関わりたくないんだけど。

「……。宇佐見係長、お疲れ様です。」

「……。お疲れ様。……最近どう?」

「ッふ。まあまあです。」

笑いこらえてんじゃん。確かに、いきなり最近どうなんて聞かれてもって感じだし、もっといい話題を振るべきだとは思うけどさ。そんな簡単には出ないよ。

「…そうですか。あぁー、引き継ぎある?」

「あります。引き継ぎしましょう。会議室でいいですか? 荷物も持って行きますね。」

おおー、必死さが伝わる。仕方がないので逃がしてあげよう。前回と同じ方法でイケるだろう。

「また引き継ぎですかぁ? やっぱり係長、中原さんのこと狙ってんじゃないですかぁ。おばさんの癖にカン違いしすぎ〜。」

「…前にも言いましたが、狙っていません。部下と引き継ぎをするだけです。」

「えぇ~、ウソつき〜。中原さん、係長なんてほっといて行きましょう〜。」

「いえ、引き継ぎがあるので。先に会議室に行っています。」

木本さんを振り切って中原君が会議室に向かう。遅れて木本さんもついて行った。とりあえず、1度自分の席に戻り荷物を持ったら近くにいた社員に事情を説明し、何かあれば会議室に来るように伝えた。

木本さんは中に入れなかったようで、扉をドンドンと叩いている。この状況で彼女の前に行くのすごく嫌なんだけど。

「木本さん、叩くのをやめなさい。」

「係長に関係ないでしょ。」

「これから引き継ぎなんです。うるさいからやめてください。中原君、鍵を開けてくれる?」

鍵が開いた瞬間にささっと入り、木本さんを閉め出す。しばらくは扉を叩いていたが、うるさいと怒鳴ったら静かになった。

「前回と同じように中に誘き寄せて、その間に脱出しましょう。どうせ、扉の前で待っているだろうし。」

「そんな簡単にいきますか? ついこの前やったばかりですよ。」

「あの頭なら大丈夫じゃない?」

あぁー、と納得する中原君。少しだけ時間をあけてから作戦を決行することになった。

「何度も大変だろうけど、もう少しだけ我慢してね。早めに退職してもらうから。課長がもう諭旨退職の準備してるし。」

「わかりました。面倒かけてすいません。」

「これは仕方ないよ。」

とりあえずイスに座り一休み。中原君は既にぐったりしている。可哀想に…。

場をもたせるためにダンジョンの話をする。この前ビッグラットを倒したことを話したら、次はホーンラビットですねなんて言う。

「ホーンラビットは怖いなー。角がね、グッサリいきそうで。」

「真っ直ぐに突っ込んで来るので避けやすいですよ。突っ込んで来る前に足をダンダンってするからわかりやすいですし。」

「なるほどね。注意しておきます。」

「それに、ドロップ品の肉はそこそこ美味しいですよ。」

「らしいね。もう食べた?」

「はい、焼いて食べました。ちょっと鶏肉っぽい感じですね。ドロップ率も5回に1回くらいで肉が出ますし、帰り道で狩るにはちょうどいいんですよ。」

うさぎ肉かー。あんまりレパートリーにないな。今度レシピでも探してみるか。その前にまだ倒せないんだけど。

ちなみに、脱出作戦はあっさり成功した。