軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

914話 2人の男性

「あっ、来たな」

「本当だ。気配の状態がおかしいと気付かなかったんだな」

お父さんの言葉に、ラットルアさんが呆れた表情をする。

今、お父さんと私は気配を消していない。

森の中にいる魔物を刺激するほどの強い気配。

それなりに経験のある者なら「おかしい」と感じるだろう。

面倒事を避けるための作戦だったんだけど、どうやら敵は「おかしい」と、気付かなかった様だ。

「2人だな。気配から……中位冒険者辺りか?」

カシメ町から私達の元に来る気配は2人分。

その2人の気配は、消そうとして上手く消せていない様な状態で不安定に揺れていた。

「中位冒険者なら、おかしな気配に気付かないか?」

お父さんの言葉に、ヌーガさんが首を傾げる。

「そうだよな」

お父さんも首を傾げる。

「まぁ、それよりも。どうする?」

「にゃうん」

ラットルアさんの問いに、シエルが答える様に鳴く。

「えっ、シエルが行くのか?」

「にゃうん」

驚いた表情のラットルアさんに、シエルが当然とばかりにもう一度鳴く。

しかも、尻尾がいつもより激しく揺れているのでやる気の様だ。

それを見たお父さんが、カシメ町の方に視線を向けて小さく「可哀そうに」と呟いた。

「そう言いながら、止める気はないんだな」

「ない」

ヌーガさんがお父さんを見ると、笑って肩を竦めた。

「シエル、気を付けろよ。弱い奴は、追い詰め過ぎると何をするか分からないからな」

ラットルアさんの言葉に小さく鳴いたシエルは、楽し気に走り去った。

シエルが見えなくなって数秒後。

「た、たすけ。魔物! あまのが!」

助けを呼ぶ声が森に響いた。

「最後の方、何て言ったんだろう?」

届いた叫び声に首を傾げる。

「あまのが」って何?

アダンダラを言い間違えたとしては、違和感がある。

「気になるのはそこなのか?」

ラットルアさんが笑って私を見る。

「えっ?」

他に気にする事があったかな?

楽しそうな気配が伝わってくるから、シエルに問題はないし。

「ん~」

ラットルアさんが背負っている女の子から声が聞こえた。

見ると、目をうっすらと開けて周りを見回している。

「おはよう。騒がしくてごめんね」

「お姉ちゃん。ここはどこ?」

ラットルアさんが、女の子の顔が見られる様に少し背負う位置をずらす。

「カシメ町に向かっている途中なんだ。あと少しで町に着くから、もうちょっと待っててくれ」

「うん。カシメ町に行ったら、お父さんに会える?」

「あぁ、会えるよ」

ラットルアさんの言葉に嬉しそうに笑う女の子。

でも、森に響いた声に体を震わせた。

「うわ~。くるな~」

「ひっ!」

「なあに?」

「悲鳴?」

ヌーガさんに抱っこされていた男の子達は目を覚ますと、彼の首に抱き付き周りを見た。

「おはよう。この場所は安全だから、落ち着いて」

私の声が聞こえたのか、2人の視線がこちらに向く。

「さっきの声は?」

お兄ちゃんの方が弟の手を握ると、ヌーガさんとお父さんを交互に見る。

「襲われている様だ」

「魔物?」

弟の方が、ヌーガさんの首にギュッと抱き着く。

「大丈夫だ。その魔物は頭がいいから、俺達は襲わない。襲うのは悪人だけだ」

ヌーガさんの言葉に、男の子達が不思議そうな表情を見せる。

「こっちに来るぞ」

お父さんは剣を鞘から出すと、ガサガサと音がする方へ剣先を向けた。

「たす、け、て」

真っ青な顔色をした男性2人が、木々の間からお父さんの前に転がり出る。

「何者だ?」

「我々は、カシメ町の冒険者です。オカンノ村に行く途中で魔物に襲われたんです。助けて下さい」

男性は2人とも冒険者の格好をしているが、体つきに違和感を覚える。

2人の腕や首、太ももを順番に見て確信する。

冒険者にしては、筋肉が付いていない。

それでは魔物を倒せないだろう。

「冒険者ね」

お父さんも2人の全身を見て、呆れた表情をする。

「冒険者ギルドのカードは持ってるか?」

ラットルアさんの言葉に、2人の男性が少し焦った表情を見せる。

「カードは……あっ、魔物に襲われた時になくしたバッグの中だ」

男性の1人が言うと、もう1人が何度も頷く。

「魔物にね」

ラットルアさんがチラッと森の奥に視線を向ける。

その視線を追うと、木々の間にシエルがいた。

小さく手を振ると、シエルの尻尾が答える様に左右に揺れる。

とっさに口元を隠し、シエルを見て浮かんだ笑みを隠す。

「冒険者ギルドのカードは、携帯するのが一般的だ。魔物に襲われた時に、バッグを囮に使う事があるからな。どうしてバッグに入れていたんだ?」

ラットルアさんの言葉に、視線を泳がせる2人の男性。

もう、諦めて全て話してしまえばいいのに。

「たまたまだ」

「たまたまか」

ヌーガさんの声に凄みが増す。

「「ひっ」」

震えだした男性2人に、ラットルアさんが溜め息を吐く。

「もう一度聞く。何者だ?」

お父さんが2人に顔を近付ける。

お父さんがどんな表情をしているのか見えないが、おそらく怖い表情なんだろう。

男性2人はお父さんを見て、顔をひきつらせた。

「…………ある人の指示でその……」

チラッとヌーガさんから下りた男の子達を見る。

「子供達に何をしようとした?」

お父さんが2人の男性に向かって二コリを笑う。

「ひぃ。果実水。果実水を飲ませろって!」

男性は、肩から提げたマジックバッグから瓶に入った果実水を出しお父さんに渡した。

「これを?」

「そう。飲ませるだけでいいって。でも確実に飲むのを確認しろって」

お父さんが手にしている瓶を見て首を傾げる。

果実水を飲ませる事に意味があるんだろうか?

もしかして、果実水に何か入っているとか?

「これは俺が預かる。いいな」

お父さんの言葉に無言で頷く2人の男性は、なぜか安堵した表情を見せた。

それに気付いたラットルアさんとヌーガさんが、眉間に皺を寄せる。

「どうしたの?」

「彼等には、何か事情がありそうだ」

ラットルアさんの言葉に2人の男性を見る。

「今の段階で判断は出来ないけどな」

「お兄ちゃん」

ラットルアさんの背から下りた女の子が、男の子達の方に行く。

子供達3人は、少し前まで怯えていたけど今は問題ないみたいだ。

「皆、落ち着いた様だし。カシメ町に行こうか」

「「「はい」」」

お父さんの言葉に、子供達が返事をする。

その行動に笑みを浮かべたお父さん。

ラットルアさんとヌーガさんも、頬が緩んでいる。

「良かった」

小さな呟きが2人の男性から聞こえる。

そっと2人を窺うと、子供達を見て泣きそうな表情になっていた。

先頭を男性2人が歩き、見張り役としてお父さんとヌーガさん。

4人の後ろに私と子供達。

後ろを守るのはラットルアさんと姿は見えないけどシエルだ。

子供達の歩く速さに合わせたので遅くなったが、暗くなる前にカシメ町に着く事が出来た。

カシメ町の門を見ると、ホッとした。

「着いたね。あっ、ラットルアさん。ちょっと先に行って。シエルを迎えに行くから」

「すぐ傍にいるな。気を付けて」

彼の言葉に頷くと、シエルの気配を探り木々の間を抜ける。

見つけた。

「別行動になってごめんね、シエル。カシメ町に一緒に入りたいから、スライムになってくれる?」

私の言葉に頷くと、シエルはすぐにスライムに変化した。

そっと抱き上げ、ソラ達のバッグに入れると急いでラットルアさんの下に戻る。

「おかえり」

「ただいま」

ようやく、カシメ町。

到着直前に色々あったけど、着いた。