軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

909話 新鮮な肉?

「あと2本は、アイビーだけでやってみようか」

「はい」

シファルさんの言葉に頷いて、深呼吸をする。

的に向かって構え弦を引き、腕全体に意識を向ける。

腕が動かない様に気を付けながら……指を放す。

「あぁぁ」

「大丈夫だから」

「うん」

シファルさんの補助がないと、矢が……今回は左に逸れた。

でも、いつまでもシファルさんを頼る事は出来ない。

最後の1本は、絶対に当てる!

弓を構え、ゆっくりと深呼吸をする。

腕が下がらない様に意識して、弦を引き……指を放す。

「あっ!」

放れた矢は、的をかすめ地面に突き刺さった。

的には刺さらなかったけど、嬉しい。

「惜しい。的まで、あと少しだったな」

「うん」

弓を射る時の体勢を見てくれていた、ラットルアさんの言葉に笑顔で頷く。

「このまま練習を続ければ、絶対にうまくなるよ」

シファルさんの言葉にラットルアさんが頷く。

そんな2人に「今日もありがとうございました」と頭を下げた。

3人で、使った矢を回収して手入れをする。

弓と矢をマジックバッグに入れると、遠くで様子を見ていたソラ達が傍に来た。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

「今日も、協力をありがとう」

皆には、私が弓を使う時は危険だから近くに来ない様に言った。

それをしっかり守ってくれる皆の頭を、順番に撫でる。

「今日の練習は終わりか?」

ジナルさんの声に視線を向けると、手に魔物を持ち森の奥から戻って来た。

「あぁ、終わりだ。狩りは成功したみたいだな」

ジナルさんの言葉に、手に持っている魔物を目の高さまで上げて笑う。

「おぉ、うまくいった」

なぜか今日の朝、新鮮な肉が食べたいとジナルさんが言い出した。

マジックバッグには時間停止の魔法が掛かっているので、新鮮な肉はある。

彼の言葉に首を傾げていると「狩りがしたくなっただけだろう?」とシファルさんが言った。

それに視線を逸らすジナルさん。

「ここ数日は、歩いているだけだったからさ」

確かに、ここ数日はひたすらカシメ町に向かっている。

急いでいるわけではないけど、スノーを疲れさせないため洞窟に寄る事もない。

そしてシエルのおかげで、魔物が襲ってくる事もない。

ずっと歩くだけだったから、暇になったのかな?

「カシメ町周辺の森には、ダルダの生息地があるな」

ダルダは本に載っていた。

大人だと10㎏前後の重さになる魔物で、尻尾に毒針を持っているんだよね。

隠れるのが得意で、冒険者も不意をつかれて亡くなる事があるので注意が必要だと書いてあった。

「あぁ、今いる場所から少し森の奥に進むと、ダルダの生息地だな」

ヌーガさんの言葉に、ジナルさんが森の奥を指す。

「そうだな、今日は狩りをして新鮮な肉を食べよう。ダルダの肉はうまい」

ヌーガさんの言葉にジナルさんが笑う。

セイゼルクさんとお父さんは呆れた様子で2人を見ていたが、一緒に狩りに行った。

おそらく2人も、ちょっとした刺戟が欲しかったのだろう。

ジナルさんが持つ魔物を見て首を傾げる。

「それがダルダ?」

本に載っていたダルダと、毛の色が違う。

もしかして、本に載っていたダルダとは別のダルダがいるのだろうか?

「これは、3年前に変異種だと確認されたダルダだ」

ダルダの変異種?

「11年ぐらい前かな、ダルダに似ている魔物が目撃されたんだ。最初は1年に1件か2件。それが5年前には数十件。森に異変が起きている可能性を考えて、調査が行われて3年前にダルダに似ている魔物の確保に成功。調べた結果、ダルダの変異種だという事が分かったんだ」

ジナルさんの持っている魔物を見る。

ダルダの特徴と言われている3本の角は、2本に減っている。

尻尾の先にある毒針は、絵で見た通りの様だ。

一番大きな変化は毛の色かな?

本に載っていたダルダの毛の色は黒。

変異種だというダルダの毛の色は、茶色だ。

「変異種は毒が強くなっていたんだよな」

シファルさんの言葉に、尻尾の先にある毒針を見る。

見た目でだけでなく、毒も強くなっているのか。

「あぁ。元のダルダより3倍ほど強い毒を持っている事が確認されている」

「先を越されたか」

ヌーガさんが、黒と茶色のダルダを持って森の奥から戻って来た。

「この短時間で2匹? 運がいいな」

ジナルさんが少し悔しそうな表情を見せる。

それを見たヌーガさんが、嬉しそうに笑った。

「俺の勝ちだな」

ヌーガさんの言葉に、シファルさんが溜め息を吐く。

「狩りで勝負を?」

ジナルさんとヌーガさんが頷く。

「重さで勝負している」

ジナルさんが狩って来たダルダは、ヌーガさんのダルダより大きい。

でも、2匹のダルダよりは軽いだろうな。

「あとはドルイドとセイゼルクだな」

お父さん達も勝負に参加しているのか。

ジナルさんの言葉にちょっと呆れた表情をしてしまう。

「森で別行動は危険だぞ」

シファルさんがジナルさんとヌーガさんを睨むと、2人は慌てて視線を逸らす。

「えっと、気を付けるよ。悪いんだが、ダルダを並べるゴザを出してくれないか?」

ジナルさんが窺うようにシファルさんを見る。

彼は、大きな溜め息を吐くとマジックバッグに手を伸ばした。

「もう戻ってきていたのか。ただいま」

「ただいまぁ」

お父さんとセイゼルクさんが、森の奥から戻って来る。

2人の手には、それぞれダルダが。

お父さんが2匹で、セイゼルクさんが1匹。

ただ、セイゼルクさんの持っているダルダの大きさがおかしい。

「それ、ダルダか?」

ジナルさんも思ったのか、セイゼルクさんの持つ魔物を指して眉間に皺を寄せる。

「うん。俺も驚いたんだけど、凄く大きいよな」

セイゼルクさんが持つダルダは、他のダルダよりかなり大きい。

「ダルダは、大人で10㎏前後だったよな?」

ラットルアさんの言葉にジナルさんが頷く。

「これは、新たに生まれた変異種なのかな?」

セイゼルクさんが、シファルさんが用意したゴザの上に大きなダルダを置く。

ジナルさん達の狩って来たダルダを横に並べると、その大きさの異常さがよく分かる。

「とりあえず、重さを測るか」

ジナルさんがマジックバッグからマジックアイテムを取り出して、狩って来た魔物の重さを調べる。

「やった。俺が一番だな」

今日の勝負は、1位がヌーガさん。

2位が同じ重さでお父さんとセイゼルクさん。

最後がジナルさんだった。

「セイゼルクの狩って来たダルダは2匹分の重さなんだな」

ラットルアさんの言葉に、ジナルさんが神妙な表情を見せた。

「どうした?」

「あぁ、ちょっとこれは問題だと思ってな。セイゼルク、悪いがこのダルダを研究用にしていいか? これが新たな変異種なら、調べないといけないから」

「もちろんいいぞ」

ジナルさんはセイゼルクさんに許可を貰うと、ダルダに札を付けてからマジックバッグに入れた。

「よしっ、あとはこのダルダをうまく食べるだけだな」

お父さんの言葉に、全員が私を見る。

それに笑う。

「任せて」

ダルダの肉は赤身でうまみが濃いらしい。

つまり肉の味を活かす料理が良いって事だよね。

一番は串焼きで塩!

簡単だから、他には何を作ろうかな?

「一緒に作ろう」

シファルさんが、ゴザの上のダルダを3匹持つ。

「俺も」

ラットルアさんが残りの2匹のダルダを持つと私を見る。

「うん、ありがとう」

まずは解体。

それから何を作るのか決めよう。