軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

886話 アイビーの防具

「ははっ。これは、凄いな」

お父さんが、テーブルに並んだおにぎりとサンドイッチの量に笑う。

「そうだね。ちょっと作り過ぎたかな?」

私も料理を作るのが楽しくて次々と作って行った結果を、さすがに作り過ぎたかと反省中。

ロティスさんが買って来た材料は、私が紙に書いていた量より多かった。

それなのに、全て綺麗に使い切った。

綺麗に使い切れた時の気持ちよさ。

あれは、いいね。

で、大量の料理が並んだわけだけど。

「ただいま……えっ? 多くないか?」

ジナルさんが調理室を覗き込んで、目を見開いた。

「まぁ、マジックバッグに入れておけば腐らないし、な」

お父さんの言葉に頷くと、ジナルさんが私を見る。

「楽しかったか?」

バレている。

「うん。それは、もう」

笑って答えると、ジナルさんに笑われた。

「それは良かった。まぁ、アイビーのおにぎりもサンドイッチもうまいからな。無駄には絶対にならないよ」

ジナルさんからの嬉しい言葉に、笑顔になる。

「おいしい」「うまい」という言葉は、気持ちよ良くしてくれる言葉だよね。

「ドルイドの防具は調整が終わっていたから貰って来たぞ。あとドルイドが言っていた、アイビーの防具もだ。フレム、ソル、ちょっとこっちに来てくれ」

私の?

「てりゅ?」

「ぺっ?」

ジナルさんの呼びかけに答えるフレムとソル。

2匹が傍に来ると、ジナルさんがマジックバッグから小ぶりの防具を取り出した。

「アイビーの防具に付ける魔石を作って貰えないか?」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

彼の言葉に嬉しそうに鳴くフレムとソル。

すぐに魔石が作ってジナルさんに向かって転がした。

「早いな。こんなに早く作れる物なのか?」

ジナルさんが私とお父さんを見る。

それに頷くと、彼はフレムとソルの頭をポンポンと撫でた。

「ありがとう」

ジナルさんは持っていた小ぶりの防具に魔石をはめ込むと、私に差し出した。

「これが私の防具?」

受け取ると、お父さんを見る。

「あぁ、今回はあった方がいいと思ってな。動きが鈍くならない様に、軽めの素材を選んでもらう様に言ったけど、どうだ?」

お父さんの言う通り、もの凄く軽い。

「着けてくれるか? 違和感があったら教えて欲しい」

ジナルさんの言葉に頷いて、防具を付ける。

防具を付けると、少し動きにくくなうと聞いた事があるけど、これは大丈夫みたい。

「大きさはどうだ? 横の紐で調整出来るけど……このままで大丈夫そうだな」

ジナルさんが、防具を付けた私の全身を見て頷く。

「お父さん、ジナルさん。ありがとう」

それにしても、凄く軽いな。

これで本当に体を守れるのかな?

防具に手を当てて首を傾げる。

攻撃を受けたら、防具が砕けそう。

いや、さすがにそれは無いか。

「背中からの攻撃と正面からの攻撃は、これでしっかり防げるから。あと、首元への攻撃も防御魔法が守ってくれるから」

「分かった」

首も守ってくれるんだ。

それなら安心だね。

「ドルイド、悪い~。少し手を貸してくれ」

玄関の方から、セイゼルクさんの声が聞こえた。

それに、お父さんが返事をすると向かう。

「アイビー、それ凄く軽いだろ?」

ジナルさんがなぜか小声で聞くので、私の小声で返す。

「うん。ちょっと驚いた」

「ドルイドが、アイビーが防具を着けても速く走れる様に、素材にかなり注文を付けたんだよ」

お父さんが。

「その防具。ドルイドの防具代のほぼ2倍だ」

「2倍? そ、そんなに高いの?」

私の言葉に、笑いなら頷くジナルさん。

「防具の素材が、レアな魔物の皮を使用しているからな」

「レアな魔物……そうなんだ」

「そう。でもドルイドが言っていた値段よりは安く収まっているよ」

お父さんは、私の防具代に幾ら出そうとしていたんだろう。

聞きたい様な、ちょっと聞くのが怖い様な。

「大切に使わないと」

「ははっ。防具は消耗品の1つだ」

ジナルさんの言葉に、頬が引きつった。

「でも、全てが終わった時にアイビーの防具が綺麗なままだといいな。それ以外だと、危険な目にあった事になるからな」

「あっ……」

そうなるんだ。

防具に手を当てる。

「私も気を付けて行動しないと駄目だね」

絶対にお父さん達の邪魔にならない様に気を付けないと。

「どうしたんだ?」

セイゼルクさんの用事が終わったのか、お父さんが戻って来る。

「なんでもない。セイゼルクの用事は?」

「終わった。彼から、準備は終わったと伝えてくれと頼まれた」

お父さんがジナルさんに視線を向ける。

彼は、少し考えてから頷く。

「出発は、明日の朝。明るくなったら、すぐにカシメ町の近くにある研究所に向かおう」

お父さんは頷くと、私を見る。

「大丈夫か?」

「うん。お父さん、マジックバッグにおにぎりとサンドイッチを入れるから手伝って」

「分かった」

「俺は出発時間を、皆に知らせて来るよ」

ジナルさんがセイゼルクさん達の方に向かうと、お父さんと2人で大量のおにぎりとサンドイッチをマジックバックに入れていく。

「よしっ。こっちは終わり。アイビーは?」

「あとはスープのお鍋をマジックバッグに入れるだけ……終わったよ」

テーブルの上に置いた2個のマジックバッグを見て、頷く。

「アイビー、ドルイド。今日の夕飯は屋台の物を買って来たから食べましょう」

ロティスさんが調理場に顔を見せる。

「わかった。お茶を持って行くので、先に食べてて」

「ふふっ。それぐらいの時間だったら、待つわよ。食堂に買って来た物を並べて置くわね」

ロティスさんは持っていたカゴを持ち上げて笑うと、楽しそうに食堂に向かった。

「お父さん。ロティスさんの持っていたカゴが、少し多くなかった?」

「まぁ、彼女だからな。食べる量が以前に比べて少なくなったとはいえ、まだまだ多いから」

お茶を作ると、コップをカゴに入れて一緒に持って行く。

食堂に入ると、ロティスさんが笑顔で手を振ってくれた。

「お茶は、テーブルの開いている所に置いて。料理は好きな物を取ってね」

ロティスさんの言葉に、空いている所にお茶とコップの入ったカゴを置く。

「どれを食べる?」

お父さんとカゴに入っている料理を見ながら、気になった物をお皿に乗せていく。

お父さんの分は、私が彼のお皿に乗せる。

「お父さん、野菜は?」

「野菜を煮込んだ物が良い」

「分かった」

それぞれ料理を選んで、テーブルに着く。

ジナルさんが立ちあがると、全員を見渡す。

「連絡した通り、明日の朝には出発する。目的はカシス町の近くにある研究所の破壊と、王都襲撃を防ぐ事。おそらく研究所で実験体となっていた魔物が襲ってくるだろう。研究所の近くの森にも、何か仕掛けがあるかもしれない」

そういえば、研究所の周りの森には魔法陣が刻まれていたよね。

今から行く研究所の周りにも、何かあるかもしれないんだ。

気を引き締めないとな。

「細心の注意で、今回の事件に挑んでくれ。誰かが欠ける事なく、もう一度全員でこうやって夕飯を囲める様に」

ジナルさんが水の入ったコップを上にあげると、皆も水の入ったコップを上にあげる。

明日からの旅がどうなるのか、本当はちょっとだけ不安。

でも、皆がいる。

木の魔物もサーペントさんもシエルも。

だから、またこうやって皆で夕飯を食べる事が出来るはず。

ポンとお父さんが私の頭を撫でる。

視線を向けると、お父さんの優しい笑顔。

それに私も笑う。

うん、きっと大丈夫。