軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

867話 彼等は何者?

気配を抑え、森に同化させながらこちらに来る者達を待つ。

傍にはお父さんとヌーガさん。

「見事だな」

ヌーガさんが、感心したような表情で私を見る。

それに首を傾げる。

「そうだろう? アイビーは、名が知れ渡っている上位冒険者に引けを取らないと思う」

お父さんの言葉に、ヌーガさんが納得した様子で頷く。

どういう事?

2人の話が、全く分からない。

「んっ? 気配を消す技術の事だよ」

私の様子に気付いたお父さんが、ポンと頭を撫でる。

あぁ、気配の消し方か。

「『炎の剣』の皆が教えてくれたんだよ」

セイゼルクさん達の住むオトルワ町に行く途中で。

「そうなのか?」

不思議そうな表情をするヌーガさんに、頷く。

「うん。オトルワ町に行く途中で、旅で注意する事とか気配を抑えるより周りに合わせた方がバレないとか。私に必要な事を、色々と教えてくれたよね」

「あぁそういえば、そんな事もあったな」

ヌーガさんが笑みを見せると、ポンと私の頭に手を置いた。

「あの時より、今の方がかなり上手に気配を操れている。頑張ったな」

彼の言葉に、笑みが浮かぶ。

教えてくれた方法を、私なりに頑張って身に付けた。

それが褒められた。

「ありがとう」

頑張ってよかった。

「見えたぞ」

お父さんの言葉に、隠れた場所からそっと顔を出し、姿を見せた者達を観察する。

冒険者風の格好をした男性8人に女性が4人。

全員が武器を手に、周りを警戒しているのが分かる。

「おい。本当に、こっちで間違いないのか?」

1人の男性が、苛立ったように声を荒げる。

「あぁ。確かに、こっちの方面から気配を感じたんだ。それは間違いじゃない」

男性の質問に、先頭を歩く男性が応える。

どうやら私達の気配に気付いた者がいたようだ。

「変だな」

「あぁ」

お父さんとヌーガさんが、視線の先にいる者達を見て不審な表情を見せる。

「どうしたの?」

「奴等から殺気が漏れている」

確かに、彼等から微かに殺気が感じられる。

気配は抑えているのに。

というか殺気?

私達を探しに来たのではなく、殺しに来たみたい。

あぁ、だから変なのか。

普通は、まず相手が誰で目的は何か、裏に誰かいるのか等を探る。

なぜなら、危険を回避するためには情報が重要だからだ。

でも視線の先にいる者達は、情報より排除を選んでいるような気がする。

研究所に近付いた者は、全て排除するような命令を受けているんだろうか?

「奴等は本当に研究所の関係者か?」

お父さんの言葉にヌーガさんが肩を竦める。

「暗殺者の集まりに見えるな」

暗殺者の集まり?

暗殺など裏の仕事を請け負う集団がいると、聞いた事がある。

それが彼等?

「殺気が隠せていないから、それは違うんじゃないかな?」

その仕事を生業としているなら、殺気を洩らす事は無いと思うけどな。

「「……」」

あれ?

お父さんとヌーガさんが、私を見て笑った?

どうして?

「アイビー」

「何?」

お父さんが、視線の先にいる者達を指す。

「彼等の殺気が漏れていると気付けるのは、上位冒険者でも限られた者達だけだ」

えっ、そうなの?

ヌーガさんを見ると、真剣な表情で頷かれた。

「そうなんだ」

でも、私は気付いたけどな。

「アイビーは気配を抑える技術だけでなく、相手の気配や状態を探る技術も優れているな」

ヌーガさんの言葉に、お父さんが嬉しそうに頷く。

「アイビーは凄いんだよ」

「ちっ、いないな。逃げたのか?」

お父さんの言葉にちょっと恥ずかしいなと思っていると、無粋な言葉が聞こえて来た。

「邪魔だな」

お父さんが目を細めて、怒鳴っている者を見る。

「そうだな」

ヌーガさんまで。

でも、これからどうするんだろう?

ずっと隠れている事は出来ない。

「俺は戻る。ジダ、お前はガルタ達を連れてこの辺りを調べてから帰ってこい。他は俺と一緒に来い」

あっ、二手に分かれるみたい。

調べろと指示を受けた方に視線を向ける。

体格のいい男性が5人か。

「行くぞ」

苛立った様子で指示を出していた男性が、残りの者達を引き連れて戻っていく。

「あの人はずっと苛立っていたね」

もう少し冷静になった方がいいと思う。

そうすれば、あんなに殺気が漏れる事もないのに。

「ぷっ」

お父さんを見ると、笑いを堪えている。

それに首を傾げる。

「殺気が漏れていたからか?」

「うん。他にもいたけど、あの人が一番酷かった」

他の者達に指示を出す立場なのに。

「あっ、ジナル達が動くな」

ヌーガさんの言葉に、周りを調べだした者達に視線を向ける。

ガサガサガサ。

少し離れた所から、木々の揺れる少し大きな音がした。

ちょっと不自然に感じ、視線をそちらに向ける。

「「「ぐっ」」」

「「うっ」」

えっ?

視線を元に戻すと5人が地面に転がっていた。

そしてそれぞれの後ろにジナルさん、ラットルアさん、セイゼルクさん、ガガトさんにフィロさんが立っていた。

「うわぁ、凄い」

何があったのか全く分からないけど、一瞬だった。

「ありがとう」

ジナルさんが木々の揺れる音がした方に手を振ると、木の魔物が姿を見せる。

あぁ、木々が揺れるにしては音が大きかったのは、わざとだったからか。

「ぐっ、お前ら。ひぃ」

眠りが浅かったのか、1人の男性が目を覚ました瞬間に悲鳴をあげて後ろに倒れた。

その彼の視線の先には、サーペントさんの顔。

「ははっ。楽しそうだな」

お父さんがサーペントさんを見て苦笑する。

確かに、あの男性が起きた瞬間に目の前に移動したよね。

「起きろ」

ジナルさんが、意識を飛ばした男性の頬を叩く。

それを見ていたお父さんとヌーガさんが、男性から私が見えないように立ち位置を変えた。

「はっ」

意識が戻った男性は、そっと周りを窺い真っ青になった。

何を見たんだろう?

「木の魔物にサーペントか」

シファルさんの言葉に、笑ってしまう。

私達からはこれ以上ない味方だけど、男性から見たら最悪なんだろうな。

「話をしようか?」

「ぎゃっ」

ジナルさんの言葉に合わせるように木の魔物が鳴く。

それに男性が無言で何度も頷く。

「あれは、怖いだろうな。可哀想に」

ラットルアさんが、楽しそうにジナルさんと男性を見比べる。

「ラットルアさん、言葉と表情があってないね」

私の言葉に、お父さんとヌーガさんが笑う。

「隠し事はしない方がいいぞ。サーペントは嘘が嫌いだから」

ラットルアさんがサーペントさんを見ると、サーペントさんが男性に近付き口を開ける。

「う、嘘なんて! 言わない、言わないから傍に来させないでくれ!」

ただ、口を開けただけなんだけどな。

そんなに怖いかな?

「サーペントさん」

小声でサーペントさんを呼ぶと、嬉しそうに目の前に来た。

「私にも口を開けてみて!」

私の言葉に少し首を傾げたサーペントさん。

でも分かってくれたのか、すぐに私に向かって口を開けた。

「うわぁ、鋭い牙があるんだね。触ってもいい?」

微かに頷くサーペントさんにお礼を言って、牙にそっと触れる。

「つるつるだ」

牙から手を離すと口を閉じたので、もう一度お礼を言う。

「ありがとう」

「くくくっ」

「ちがっ、研究所の奴等は、もう誰も生きてはいない。全員を殺したからぁ」

んっ?

お父さんの背に隠れながら、男性を窺う。

「やっぱり泣いてる」

まさか、泣くなんて思わなかったな。

そんなに、木の魔物は怖いかな?

男性の傍で、根っこを振り回す木の魔物に視線を向ける。

可愛いけどな。