軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90話 組織の者

副団長さんの指示のもと、蔵に大量の荷物が運び込まれて行く。

建物が広いため、その量は私が考えたよりも多かった。

自警団の人達が、建物内を走り回っている。

ちょっと、申し訳なく思ってしまった。

だが、これも証拠の書類とお金を守るためだし、頑張ってもらおう。

誰にも疑問に思われる事無く、順調に進み最後の箱が蔵に運び込まれた。

副団長と団長が確認して蔵に鍵がかけられる。

「さて、疲れているだろうが掃除だ。とっとと終わらせるぞ。今日からこの建物で寝泊まりする奴もいるからな。埃にまみれても良いなら別だが、俺は嫌だ」

疲れた顔をした団員達が、苦笑いをしながら掃除道具に手を伸ばす。

木箱や棚を移動したため、埃が部屋中に散っているのだ。

そして、今いる団員達と冒険者は、掃除をしなければ確実にホコリにまみれて寝る羽目になる。

さすがに、色々経験している人達でも嫌なようだ。

「すみません。誰かいませんか?」

玄関の方から声が聞こえたので向かうと、慌ててラットルアさんが追いかけて来た。

「こらっ! 1人で行動したらダメ!」

「あっ、すみません。同じ建物にいる安心感からつい……」

「安心してくれるのはうれしいけどさ、気を付けないと」

「はい」

玄関には、問題ありと判断した自警団の2人の姿。

見た瞬間、ラットルアさんの服を掴んでしまった。

本当だ、行動には気を付けないと。

「おっ、良い匂いだな。もしかして差し入れか?」

ラットルアさんの言葉で、玄関全体に香ばしい香りが充満していることに気が付く。

「正解です」

1人が手に持っていた、大量の紙袋をあげて見せた。

「お~、悪いな。ただ、もうしばらく掛かりそうだ。今から掃除なんだ」

「掃除ですか? 荷物はもう移動を?」

紙袋を持っていない方の団員が、廊下の奥を見つめて首を傾げる。

「あぁ、全て蔵に運び込んだ。あとは掃除だけだ」

ラットルアさんの言葉に、2人の団員の表情が微妙に歪んだような気がした。

一瞬だったので良く分からないが。

「どうかしたのか?」

「えっ、いえ。元商家だから何か無いかな~って。ほら金目の物とか」

「残念だな。もしあってもマルガジュラが手に入れてるだろう」

「マルガジュラが?」

「あぁ、副団長とマルガジュラが中身を全て調べていたはずだ」

「へぇ、あとで奴に聞いてみようかな。何か見つけたかって」

「見つけてたら、奢って貰おうぜ」

「ハハハ、良いなそれ。俺も参加させろよ」

団員2人の会話から、荷物の中身を確認しに来たことが窺える。

上手く隠しているつもりだろうが、既に運び込まれた事で焦ったようだ。

少し表情に、その焦りが見え隠れしていた。

それにしても、マルガジュラさんに確認させておいてよかった。

おそらくそれで誤魔化し通せるだろう。

ただ、組織の動きは早いな。

「アイビーだったよな。大変だろうが、俺達もいるから安心しろよ」

急に話が変わり、団員の1人が私に向かって話しかけてくる。

それに少し肩が跳ねてしまったが、すぐに笑顔を作る。

「ありがとうございます。ボロルダさんやラットルアさん達がいるので大丈夫です」

「そうか。でも、何かあったら俺達も頼ってくれ」

「はい。その時はお願いします」

2人としっかりと視線を合わせてから、頭を1度下げる。

そんな私に優しそうな表情で、それぞれが笑いかけてくれた。

なにも知らなければ本当に優しそうな表情。

だけど知っているので、余計に怖さを感じて背中をひやりとしたモノが走った。

「おっ、ここにいたのか」

声に視線を向けると、ボロルダさんと、セイゼルクさんがこちらに歩いて来ていた。

その後ろに団長さんがいるのだが、団員の姿を見て眉間に皺を寄せた。

「差し入れを持って来てくれたんだって」

ラットルアさんの言葉に、団員2人は軽く頭を下げる。

「ご苦労。奥にアグロップがいるから、上がって持って行ってくれ」

「分かりました。では、失礼します。アイビーまたな」

「はい。また」

……できれば会いたくないです。

でも、きっとまた会う事になるのだろうな。

奥に向かう団員に鋭い視線を向ける団長さん。

「気を付けろよ。早速動き出したようだからな」

ボロルダさんの言葉に、団長さんは肩をすくめる。

「それより、俺達はいったん広場に戻ることにしたから」

セイゼルクさんの言葉に少し驚く。

このまま、ここで過ごすものだと思っていた。

とはいえ、一度気持ちを落ち着けたいので助かる。

ソラの事もあるし。

「あとは……シファルだけだが、何処にいるんだ?」

ボロルダさんの言葉に周りを見るが、シファルさんの姿は無い。

「悪い。先に戻ってもらった。他の奴らが戻って来ているかもしれないからな」

そう言えば、荷物を運んでいる時から見なかったかも。

「そうか、だったらこのまま戻るか。団長、とりあえず明日の朝、顔を出す予定だから」

「あぁ、ただ何かあったら呼びに行く可能性がある。アイビー今日はありがとうな」

「いえ、お疲れ様です。また明日」

団長に挨拶すると、頭を少しだけ強く撫でられた。

外に出ると、なんだか開放感で満たされた。

ずっと緊張していたためだろう。

「疲れちゃった?」

ラットルアさんが、ポンポンと軽く背中を叩く。

「ちょっとだけ。ずっと緊張していたみたいで」

「大変な役割があったからね。ってまだここら辺にも潜んでいる可能性があるから気を付けないとな」

まだ、元商家と言うか拠点となった家の近くだ。

きっと、組織の者が潜んでいるはず。

気を抜くのは早すぎたな。

「よし、今日は人気の屋台をはしごして帰るぞ~」

先頭を歩いていたセイゼルクさんが、いきなり宣言をして広場へ帰る道からそれる。

それた方向にあるのは、屋台が密集している場所。

どうやら、夕飯を作る必要は無いようだ。

今日は精神的に疲れているので、助かる。

もしかしたらセイゼルクさんには、見透かされているのかも。

……いや、ボロルダさんやラットルアさんにも。

「アイビー、甘い物も買って帰ろうか。俺の一推しがある」

「ありがとうございます」

本当に良い人たちだ。

広場に戻ると、シファルさんとヌーガさんの姿が見える。

そう言えば、シファルさんとヌーガさんは商人の行動を監視していたはず。

どうして別行動をしていたのだろう。

マールリークさんとロークリークさんの姿は見えないけど、大丈夫かな?

トルトさんとマルマさんの森での行動を確かめに行ったはずだ。

「お帰り。おっ、それって最近美味いって人気の店のヤツか?」

シファルさんは早速、紙袋の中身を確認して喜んでいる。

どうやらいつも並んでいるから、諦めていたそうだ。

「ちょっとテントに戻ります」

全員に聞こえるように声を掛けて、テントの中に入る。

バッグからソラを出すと、ものすごいのびのび~と縦運動をし始めた。

どうやらバッグの中は窮屈だったようだ。

「ごめんね。しばらくバッグからなかなか出せないから」

のびのびとしながら跳ねるソラ。

ちょっと形が不気味だけど、愛嬌がある。

運動をしている横で、ソラの食事用のポーションをマジックバッグから取り出す。

今日は頑張ってくれたので、いつもより5本多めだ。

容量いっぱいに拾ってきておいて、よかった。

運動が終わったのか、ポーションに覆いかぶさって食事を始めたソラ。

しゅわ~っと消えるポーションをぼーっと眺めていると、テントの外から声がかかる。

マールリークさんとロークリークさんが戻って来たので食事にするとの事。

急いで、お茶の葉っぱを持ってテントから出る。

ラットルアさんがお湯の用意をしてくれていた。

人数分お茶を入れて、椅子に座るとここ数日でおなじみになった風景が広がっていた。

その光景に心がふっと軽くなった。