軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

841話 今日は酔う日

目の前でどんどん消えていく串肉に唖然としてしまう。

「あ~やっぱりこれには酒! 酒よね!」

大きなコップに入った酒を飲んでは串肉を豪快に食べるロティスさん。

その飲みっぷりと食べっぷりに、ついつい見入ってしまう。

「不思議だな」

どこにその量の食べ物が消えるのか。

彼女の細い体を見て首を傾げてしまう。

私の話が終わり、次にこれからの事をジナルさんが話そうとするとロティスさんのお腹が盛大に鳴った。

ズワンを食べたすぐだったのでお父さんも私も驚いたけど、ジナルさんやフィロさん達はやっぱりという表情をした。

どうやら、ズワンだけでは足りないだろうと思っていたようだ。

酒場に下り、ロティスさんが食事を始めると屋台の女性が串肉を届けてくれた。

なぜか、串肉を見た酒場の店主が酒を持って来たので驚いた。

ジナルさんが、「しまった」という表情をした時には既に手遅れ。

ロティスさんが酒を一気に飲み干した後だった。

そして、あっという間に、ロティスさんは酔ってしまった。

「悪い。何時も串肉と酒が一緒だったから持って来たんだが……」

ジナルさん達の雰囲気を感じ取った酒場の店主が、申し訳なさそうな表情で謝る。

それにフィロさんが首を横に振る。

「良いよ。飲んだロティスが悪いんだから。それにしても、今日は酔う日だったか」

「酔う日?」

フィロさんの言葉に、セイゼルクさんが不思議そうな表情をする。

「そう、こいつ。両極端なんだよ。酔う日は1杯でこの状態」

そう言ってロティスさんを見るフィロさん。

視線の先には、楽しそうに酒を飲み、串肉を食べるロティスさん。

完全に酔っているのが分かる状態だ。

「でも、何杯飲んでも全く酔わない日もあるんだ。実は、酔わない日の方が多い。だから今日も酔わないだろうと思って、飲んだんだろうな」

全く酔わない?

今のロティスさんからは、全く想像がつかないんだけど。

「ぎゃはははは」

「「はぁ」」

コップから酒がこぼれて大笑いするロティスさん。

それを見て溜め息を吐くフィロさんとガガトさん。

そんな3人を見てジナルさんが首を傾げる。

「ロティスは酒に弱いだろう? いつもこの状態じゃないか」

えっ?

ジナルさんの言葉に、フィロさん達も驚いた表情を見せる。

「そういえば、ジナルが一緒の時は酔う日が多いかもしれないな」

ガガトさんの言葉にフィロんさんが頷く。

「何かあってもジナルがどうにかすると思っているから、酔えるのかな?」

ラットルアさんの言葉に、ジナルさんが嫌そうな表情をする。

その表情を見て、シファルさんが笑う。

「そんなに嫌そうにしなくても」

ジロッと、シファルさんを睨むジナルさん。

「何かあったら助けるのは別にいい。でも、こいつの面倒も見ないと駄目なんだぞ! 酒でぐだぐだになったこいつの介抱がどれだけ大変か! しかも会う度にだぞ! 暑い日なんて服を脱ぎだすし!」

ジナルさんの叫び声に、シファルさんとヌーガさんが「可哀そう」と呟く。

確かに、可哀想かもしれない。

というか、もの凄く大変そうだ。

「川があったら飛び込むし」

「そうそう」

ジナルさんに続きフィロさんが言うと、ガガトさんが頷く。

「女性が襲われているのを見て止めるのはいい」

あれ?

ガガトさんのは、良い話?

「襲った男性を町中追い掛け回すのはどうなんだ? それも笑いながら。あれは怖かった」

あぁ、途中までは良い話だったのに。

「確かにあれは怖かったよな。追い掛け回された男性は、夜に魘されるようになったみたいだ。まぁ、そいつは犯罪者だからいいんだけど、たまたま追いかけ回すロティスを見た町の人も数日は夢見が悪かったそうだ。あれは、申し訳なかったと思うよ」

あはははっ。

もう笑って聞いている事しか出来ないや。

「アイビー、飲み物はどうする?」

「えっ? 飲み物?」

「ロティスがあんな状態だから、もうこのまま軽く飲んで解散しようという事になったんだ」

「そっか。飲み物は」

そういえば、まだ何も注文していなかったな。

でもお腹もすいてないし、別に喉も乾いていないんだよね。

「お父さんはどうするの?」

「俺は軽く飲むつもりだ」

森に入ってから飲めていないから、ちょっと嬉しそうだな。

周りを見ると、セイゼルクさん達もお酒を飲むみたい。

これは、酒場で過ごす時間が少し長くなりそうかな。

それなら、飲み物はあった方がいいよね。

「私は果実水で。あっ、カージュの果実水がお薦めだって」

店主さんに視線を向けると、彼の後ろにカージュの果実水がお薦めと書いてある紙が視界に入った。

「カージュはカシム町で育てている果実なんだ。ちょっとすっぱいからさっぱり飲めるよ」

「じゃ、それをお願いします」

「分かった。全員の注文も聞いたし、すぐに持って来るよ」

店主さんが、厨房に消えるとすぐに女性が果実水を持って来てくれた。

「ありがとうございます」

コップに顔を近付けると、爽やかな香りがした。

一口飲む。

あれ?

口の中が、ちょっとシュワシュワする?

「どうした?」

串肉を食べながらお酒を飲んでいるお父さんが私を見る。

というか、さっきはお腹がいっぱいだと言っていたのに食べてる。

「んっ? あ~酒を飲むとつまみが欲しくなってな」

「食べ過ぎないようにね」

「分かってる。それで? 果実水に問題でもあるのか? 不思議そうにコップを見ているけど」

そんな表情で見ていたんだ。

「飲んだから口の中でシュワシュワしたような気がして」

私の説明に、首を傾げるお父さん。

「あっ、それ」

近くに座っていたガガトさんが、私のコップを指す。

「たぶん、果実水じゃなくて果実泡水だ」

果実、あわすい?

「村の近くにある洞窟でドロップする、外れのマジックアイテムだ」

外れのマジックアイテム?

「白い石なんだけど、水に入れると細かい泡が出るんだ。というか、それしか用途が無いんだ」

水に入れると細かい泡。

あぁ、細かい泡があのシュワシュワした感じを出すのか。

「それでこの町では果実水に石を入れて、泡を追加した果実泡水があるんだ。注文は果実水だった?」

「はい」

頷くとガガトさんが「悪いな」という。

「きっと間違ったんだろう。果実水に変えてもらおうか?」

「いえ、美味しいから問題ないです」

シュワシュワの原因がわかれば問題ない。

というか、美味しい。

「よしっ、見回りに行くわよ」

急に立ち上がって宣言するロティスさん。

それに慌てた様子を見せるフィロさんとガガトさん。

ジナルさんはため息を吐いて、立ち上がった。

「いこ――」

「はい、止まれ。酔ってるから、部屋に戻ってお前は寝るぞ~」

走ろうとしたロティスさんを器用に担ぎ上げたジナルさん。

慣れたその対応に、セイゼルクさん達から笑い声が聞こえた。

「ジナル、お疲れ様」

セイゼルクさんの言葉に、苦笑するジナルさん。

「あぁ、本当にな。セイゼルク達は、ガガトに宿の事を聞いてくれ。宿もまだ取っていないだろう?」

「そういえばまだだったな。ガガト、頼むよ」

「分かった」

あっ、そういえばまだ宿を取っていなかったな。

町に着くと、まずは宿を探して部屋を確保するのにすっかり忘れていた。

「じゃ、また明日。宿の方に顔を出すよ」

ロティスさんを肩に担ぎあげたまま、酒場を出て行くジナルさん。

ロティスさんが足をバタバタさせているのがみえる。

かなり暴れているみたいだけど、ジナルさんの足取りはしっかりしている。

「凄いね。私だったら倒れるよ」

「暴れている人を抑え込むコツがあるんだ」

なるほど。

「離せ~、馬鹿~。こんちくしょう」

外からロティスさんの声が聞こえてくる。

「もう出て行ったのか?」

何処かに行っていたフィロさんが戻って来ると、周りを見回す。

「あぁ」

お父さんが頷くと、外に足を向けた。

「今までの代金は払っておいたから。これから飲み食いする分は各自で払ってくれ。またな」

慌てて出て行くフィロさんに、皆で手を振る。

やっぱり大変そう。