軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87話 混乱、後悔、作戦?

「9歳?」

団長さんの困惑した声に、私も困ってしまう。

それほど9歳と言う年齢と、私の見た目には違和感があるのかな。

「はい。9歳です」

「あっ、いや。年齢は関係ないな。悪い。えっと、何だったかな。そうだ、俺のここでの行動に賛成しているんだな」

……賛成?

何の事だろうか……。

隠し部屋を探している事に対してなら賛成だけど。

それを私が賛成する、しないは関係ない事だ。

「団長、落ち着け。アイビーはここであんたが1人、別行動していたのは隠し部屋を探していたためだと予測している。それに見つけたとも思っているはずだ」

ボロルダさんの言葉に、団長さんが私をじっと見つめて来る。

なので、同意の意味を込めて1つ頷いておく。

「本当に?」

「本当だ。しかも自警団に裏切り者がいる事。この建物の中に隠し部屋があり、そこに重要な証拠がある可能性も予測していた。言っておくがアイビーからその話を聞かされたのは、俺が情報を話す前だからな。俺は情報を漏らしてないぞ」

団長さんは微動だにせず、じぃ~っと私を凝視し続けている。

一見穏やかに見えるが、その視線には鋭さがある。

怒られるわけではないと思うが、なんとなく恐さを感じて、数歩後ろに下がってしまう。

「団長~、アイビーが怖がっているよ」

ラットルアさんが、団長さんの肩を軽く叩く。

ハッと気が付いたように苦笑いして、軽く頭を下げてくれた。

「悪い。驚いてしまって。しかし、すごいな」

「いえ。……で、見つかりましたか?」

隠し部屋があったのか、無かったのか。

一番の気がかりだ。

あったのなら使える証拠は残っていたのかどうか。

私の聞き方がおかしかったのか、少し驚いた表情をした団長だがニヤリと笑みを見せた。

「あぁ、見つかった。少し確認しただけだが、奴隷売買に関する書類を見つけることが出来た。あとは借金の借用書や殺しの依頼書まであったよ。これから詳しく調べて、関係者を特定していくつもりだ」

少し確認しただけで、それだけの物が出るとはすごいな。

いったいどれだけの犯罪の証拠があるのだろう。

そりゃ、仲間を送り込んで隠し通したくなるわけか。

「お金はありましたか?」

「いや、まだそこまで詳しく調べていない」

「そうですか」

団長さんと私の会話を聞いていたボロルダさんが

「書類はどうするんだ?」

「自警団詰所まで持って行って調べるつもりだ」

「そうか、部下を呼んで来てやろうか? アイビーも一緒に来てくれ」

ボロルダさんと一緒に行って、自警団の残りの人達の中に裏切り者がいないか調べた方が良いだろうな。

でも、その前に気になる事がある。

ファルトリア伯爵の態度で感じたことだが、この建物の周りは組織の人間が潜んでいる可能性がある。

「あの、書類は移動しない方が良いと思います」

「俺もそう思う」

セイゼルクさんも、同じことを考えているようだ。

「なぜだ? 此処に置いておくと組織に奪われる可能性が高くなる。早急に手を打たないと」

「そうなんだが、この建物の周りに組織の者が潜んでいる可能性が高い」

「どうしてそう思うんだ?」

「ファルトリア、奴の行動からだ。あいつは今回、愚かなミスを犯したかもな」

「おいセイゼルク、ファルトリア伯爵に向かって言葉が過ぎるぞ。誰かに聞かれたら問題視される事になる」

「あぁ、そうか。まだ報告していなかったな。ファルトリアは組織の人間だ」

ボロルダさんの言葉に団長さんが目を見開いた。

「何? あっ、マジックアイテムか! ボロルダ、反応したのか?」

「あぁ、だからファルトリアは組織の人間だ。おそらく組織の元締めか、それに近い幹部。証拠に奴の名前は載っていなかったか?」

「い、いや。まだそこまで詳しくは調べていないからな……しかし、あの方が?」

団長さんは唖然とした顔をし、何かを考え込む。

そして少しずつ、顔の表情が怒りに変わっていく。

視線は鋭さをまし、それを見た私はぶるっと震えてしまった。

「ファルトリアが組織の人間だったなら全てに説明がつく。取り締まりが失敗した事も……潜り込んでいた仲間が殺された事も。奴が組織を動かす存在……ならば俺は……」

憤怒の念を見せていた団長さんの目に、深い後悔が浮かぶ。

仲間の死んだ原因が、ファルトリア伯爵に情報を流した事で起こったのなら……。

「くそっ! 奴に情報を流したのは俺だ。俺が仲間を殺したのか!」

それは違う。

ファルトリア伯爵を疑っていなかったのだから、仕方のない事なのだ。

でもその言葉は団長さんにとって、何の助けにもならない。

誰も声を出せない。

少しの間、元商家の玄関付近は異様な静けさに包まれた。

「はぁ、すまない。もう大丈夫だ」

団長さんは何度か、深呼吸を繰り返し1階の奥へと歩き出す。

「隠し部屋はこっちだ。あと、周りに組織の者が潜んでいる可能性があるのだったな」

「あぁ、何か手はあるか?」

「難しいな、一般人もこの辺りにはいるから、組織の人間と区別するのは」

ボロルダさんが団長さんの後を追う。

その後ろを、残った3人がついて行く。

何事もなかったかのように会話する、団長さんとボロルダさんを後ろから見つめる。

強い人たちだと心から思う。

心に衝撃を受け、それでもすぐに立ち上がれる強さ。

これまでも色々と経験をしているのだろうな。

これが心の強さなのかな?

「アイビー、何か考えはあるか?」

「えっ? いえ、あの」

ボロルダさんが、振りかえる。

見張りを利用する手はある。

でも、これは組織が何処まで手をまわしているのか分からない状態では危険だ。

「何かあるな」

セイゼルクさんが、横から私の顔を覗き込み断言する。

「話してくれ、俺はあいつ等を捕まえたい」

「えっと、危険なのですが」

「構わない。俺達自警団は覚悟の上でこの仕事についている」

「分かりました。えっと、見張りを利用してこの場所を襲わせたらどうでしょうか?」

「「「「ん?」」」」

少し、全員の歩みが遅くなる。

あれ?

説明が足りなかったのかな。

えっと、どう言えばいいかな。

「見張りをしている者たちに、この場所が手薄になった事を見せるんです。そうすれば襲うはずです」

「なるほど、そこでそいつらを捕まえるって事か」

団長さんとボロルダさんは、立ち止まって私に視線を向けてくる。

セイゼルクさんとラットルアさんは、少し驚いた表情を見せる。

驚くような事は言っていないと思うけど……何かまた間違ったかな?

「はい。今一番重要なのは証拠を守ることです。そして組織の動きを鈍くする事。襲ってきた者達を全て捕まえれば、動きが読まれたと考えるでしょう。そうすれば疑心暗鬼になり、行動しづらくなります。ただ、組織が何処までこちらの情報を掴んでいるのかが、問題になってきます」

「「「「9歳じゃないよな」」」」

「9歳です!」

団長さん、どうして首を横に振るのです。

ラットルアさん、笑っているのわかっていますから。

顔を隠しても、肩が震えすぎです。

「でも、手薄になる理由が無いな」

セイゼルクさんの言葉に団長さんもボロルダさんも頷いている。

団長さんは少し歩き、ある部屋の扉に手を掛け開ける。

どうやら1階の一番奥の部屋に、隠し部屋があったようだ。

「たぶん、ミーラさん達が作ってくれます」

部屋に入って、周りを見渡す。

棚が並んでいるので、納戸や物置のような部屋に見える。

「ミーラ達が? あぁ、確かにあいつ等はちょっとおかしな行動を繰り返しているな。……確かに、何か起こそうとしているのはわかっている。それに便乗しておけば、ここが手薄になってもおかしな印象にはならないか」

「はい。なのでミーラさん達次第なんですが」

「……おかしな作戦だな」

ボロルダさんが、笑っている。

それはそうだろう。

敵任せなのだから。

「確かにな」

セイゼルクさんも何とも言えない顔をしている。

団長さんだけがまだ険しい顔をしている。

「そう、上手くいくか? ミーラ達が囮だとしても、ここの警戒だってそれほど手薄にはならないだろう」

「はい。だから、問題ありの人達を中心に警護にあてます」

団長さんの言うとおり、手薄にするにも限度がある。

なら、裏切り者を配置すればいい。

見た目はしっかりと警備していることになるのだから、誤魔化せるはずだ。

「なんだか、敵を利用しまくっている作戦だな」

そうかな?

セイゼルクさんの言葉に首を傾げる。