軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

816話 当たり!

洞窟の奥に向かっていくにつれ、魔物が強くなっているみたい。

ただ、それが問題になる事は無いみたいだけど。

「皆、強いね」

マジックアイテムを調べている時間の方が長いなんて。

「にゃうん」

シエルは出番が無くて、少し残念そう。

「全員が上位冒険者だからな」

シファルさんの言葉に、首を横に振る。

「お父さんは中位冒険者だったよ」

今は冒険者でも無いし。

「ギルマスが手を貸しているんだろう? 中位冒険者以上にならないように」

私の言葉に、チラッと視線を向けるシファルさん。

やっぱりバレているのか。

「まぁ、そうだけど」

お父さんの戦いを見て、中位冒険者で納得する人はいないかな。

片腕だけど、ジナルさん達と引けを取らないもんね。

「下がれ!」

ジナルさんの声に視線を向けると、彼等の前に巨大な魔物の姿が見えた。

大きな前脚に見える巨大な爪。

牙も鋭く、口からは唸り声が聞こえてくる。

長い尻尾が洞窟の壁に叩くたび、パラパラと壁の破片が落下している。

「ぎゅあわ~」

魔物の鳴き声が、洞窟内に響き渡る。

「来るぞ」

お父さんの声と同時に、魔物がジナルさんに襲いかかるのが見えた。

「うわっ!」

ジナルさんの剣が、襲い掛かって来た魔物の牙を止めるが、かなり押されている。

すぐにお父さんとセイゼルクさんが、左右から魔物に向かって剣を振り下ろす。

ガキン。

ガキン。

「えっ?」

セイゼルクさんの驚いた声。

お父さんも少し驚いた表情をしている。

「ぎゅあわ~」

魔物が左右を見ると、尻尾を振り回し始める。

「下がれ! あと剣は、無理だ!」

お父さんとセイゼルクさんが、尻尾の攻撃を避けるために少し後退する。

「かなり硬いのか?」

「あぁ、剣が欠けた」

ヌーガさんの質問にセイゼルクさんが、剣を見て嫌そうな表情をした。

どうやら剣では切れないほど硬い皮膚のようだ。

大丈夫なのかな?

「大丈夫だよ。こういう魔物は、魔法による攻撃が効くから」

シファルさんが、私の肩を安心させるようにポンポンと軽く叩く。

「いっけ~!」

ラットルアさんの声に視線を向けると、拳ほどの大きさの火矢が魔物に向かっていくのが見えた。

かなり魔力が込められているのか、火矢は赤黒い色をしている。

「ぎがぁ~」

鋭く尖った火矢は、魔物の首のあたりに深く刺さると魔物を火で包み込む。

しばらく魔物は暴れたが、徐々に動きは鈍くなり倒れると、火は消えた。

「よっし!」

嬉しそうなラットルさんにセイゼルクさんが近付き、バシンと肩を叩いた。

「お見事」

「痛いって。加減してくれよ。それに早い者勝ちだろう?」

「ちくしょう。次は俺が討つ」

セイゼルクさんの態度に首を傾げていると、シファルさんからため息が聞こえた。

見ると、呆れた表情で2人を見ている。

「セイゼルクは他の技を試したかったのに、ラットルアさに先を越されて拗ねているんだよ」

「あっ、はははっ」

私は、あの魔物の皮膚の硬さに不安を感じたけど、皆はあれぐらいの事では動じないのか。

経験の差というものかな。

「ラットルアはラットルアで、アイビーにかっこいい所を見せたかったんだろうな」

「ふふっ。ラットルアさん、かっこいいですよね」

あんな強い魔物を、火矢の1本で倒してしまった。

本当にかっこいい。

「当たりだ」

ドロップしたマジックアイテムを調べていたジナルさんが、箱の中身を周りに見せた。

確かに空では無いみたい。

「思ったより早く、当たりを見つけたな」

えっ!

シファルさんの言葉に驚いてしまう。

だって、この当たりまでかなりの数の魔物を狩ってきたから。

「アイビー。近くで見よう」

「はい」

少し興奮したシファルさんと一緒に、マジックアイテムの傍による。

箱の中身は……正直、よく分からない。

大小さまざまな石とそれを繋ぐ線? が箱の中に詰まっていた。

これでどうやって、遠くに声を届けるんだろう?

「使えそうなのか?」

シファルさんの言葉に、ジナルさんがニヤッと笑う。

「あぁ、間違いなく使える。しかも前のより性能がいいかもしれない。まぁ、これは王都に行ってから調べないと分からないが」

前より性能がいい?

皆の様子を見ると、かなり嬉しそうだ。

「よしっ。最低3個は欲しいな」

セイゼルクさんの言葉に全員が頷く。

「えっ?」

3個も?

1個でも結構な時間がかかったのに?

「行くぞ」

ジナルさんの言葉に、洞窟の奥に向かう。

というか、この洞窟は本当に大きい。

未だに、洞窟の一番奥に辿り付けないなんて。

「アイビー、疲れてないか?」

お父さんの言葉に、笑って頷く。

「大丈夫だよ」

「そうか? んっ? それはどうしたんだ?」

「えっ?」

お父さんの真剣な声に首を傾げると、お父さんが私の足元を指した。

「靴に傷がある。右側だ」

お父さんの言う場所を見る。

確かに、靴の右側の革に傷がある。

「いつの間に?」

立ち止まって、傷の部分を確かめる。

思ったより深く、中まで貫通しているようだ。

「足は大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

傷ついた革の部分を押すが、足に痛みは一切ない。

「休憩の時に、その部分を補強した方がいいかもしれないな」

シファルさんの言葉に、お父さんが頷く。

靴は足を守る防具。

しっかり補強した方がいいよね。

「うん、そうする」

「お~い、ジナル。少し休憩しよう」

えっ?

「お父さん。今すぐでなくてもいいよ?」

「いや、結構な距離を歩いたから、そろそろ休憩を入れようと言っていたんだ。俺も疲れたし。でも、さっきの魔物やドロップしたマジックアイテムのせいで、その事をすっかり忘れていたな」

お父さんの動きから、疲れている様子は無いけどな。

「ドルイド、疲れたのか?」

「あぁ」

ジナルさんの言葉に、お父さんが頷く。

「どこか、ゆっくり座って休憩できる場所は無いかな?」

シファルさんが周りを見ていると、ヌーガさんがある方を指した。

「少し先に座れそうな岩がある。そこまで行こう」

彼が指した方には、確かに座れるような岩が沢山ある。

シファルさんも、それを見て頷いた。

「行こうか」

「うん」

お父さんと一緒に休憩場所まで来ると、ジナルさんが傍に来た。

そして、小さく頭を下げた。

「悪い」

「えっ、どうしたの?」

ジナルさんに謝られる事は無いと思うけど。

「休憩をすっかり忘れていた。体は疲れていないか?」

「ふふっ。大丈夫」

なんだ、そんな事か。

私が笑うと、ジナルさんがホッとした表情を見せた。

「アイビー、靴を貸して?」

「お父さん、自分で出来るよ」

お父さんが座っている私の足に手を伸ばすので止める。

焦ったぁ。

「俺の方が、うまく出来ると思うぞ」

補強にうまいも下手も無いと思う。

「大丈夫。自分で出来るから」

靴を脱いで、大きく切り込みが入っている部分を確かめる。

本当に大きい傷だな。

切り込みが入った部分に靴専用の接着剤を塗り、切り込み部分を中心に表面にも接着剤を塗り込む。

少し乾いてきたら、接着剤が付いている部分に補強のための革を張り付ける。

靴の内側にも同じように革を張り付けて、補強は完了。

「これだけだから、うまいとか下手は無いよね?」

お父さんと反対にいるシファルさんを見る。

お父さんに同意を求めても、首を横に振られそうだから。

「ん~、張り合わせた革から接着剤が飛び出していたりすると下手だと思うかな」

接着剤か。

補強した部分を見る。

「あと接着剤の量では、補強してもすぐに剥がれてしまう事もあるんだ」

そういえば、接着剤の量までは考えなかったな。

……大丈夫かな?