軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

802話 出発は2日後

「ヌーガ、肉の皿を1人で抱え込むな!」

セイゼルクさんがヌーガさんの抱えている皿に手を伸ばす。

それをさっと避けて、背を向けるヌーガさん。

「セイゼルクさん。皆さんのお肉はこっちです」

ヌーガさんがお皿を抱え込むは既に経験済み。

だから、ヌーガさん様にお皿を用意しておいた。

「アイビー」

あれ?

セイゼルクさんに溜め息を吐かれた?

「甘やかしすぎ」

シファルさんにポンと頭を軽く撫でられる。

でも、ヌーガさんからお皿を取り返すのは至難の業だし。

「まぁでも、ヌーガだから仕方無いだろう」

ラットルアさんの言葉に頷くと、セイゼルクさんとシファルさんが呆れた表情でヌーガさんを見る。

見られたヌーガさんは幸せそうな表情で肉を食べている。

肉だけを。

「あれは駄目ですね」

「えっ?」

私の言葉に首を傾げるラットルアさんから離れて大きめのお皿にサラダを載せる。

そしてヌーガさんに持っていく。

「お肉だけでは駄目です。これも食べて下さい」

サラダのお皿を見るヌーガさんがそっと視線を逸らす。

あ~、これは食べないな。

あっ、そうだ。

あれを試してみよう。

シファルさんとラットルアさん、それにお父さんを参考にちょっと冷たい雰囲気を醸し出して。

声も、いつもより少し低めにして。

「ヌーガさん? 食べますよね」

「おう」

私を見て目を見開いたヌーガさんが、慌てた様子でお皿を受け取る。

よしっ。

でも、出来たのかな?

自分では確かめられない。

「アイビーが、シファルみたいな表情をした。毒されている!」

ボカッ。

ラットルアさんの言葉に、不穏な音。

見ると、足を押さえたラットルアさんがシファルさんを睨んでいた。

仲が良いな。

それにしても、シファルさんみたいな表情?

3人を参考にしたんだけど。

そっと頬に手を添える。

シファルさんみたいな、ちょっと怖めの笑顔は作れたのかな?

「シファルさんに、似てましたか?」

ヌーガさんに聞くと、サラダを食べながら頷かれた。

それに笑みが浮かぶ。

なんだか、ちょっと嬉しい。

「嬉しいのか?」

「新しい武器を手に入れた気分です」

まだまだ、改良の余地はありそうだけど。

「「「「……」」」」

ふふっ。

「どうしたんだ?」

お父さんが、私の傍に来るとシファルさん達を見て首を傾げた。

「いや、なんでもないよ。アイビー、その武器はここぞという時に使うんだよ。乱発すると効果が薄くなるから」

「はい」

使う時を見極める必要があるという事だよね。

覚えておこう。

「アイビ~」

ラットルアさんに、なぜかガシッと抱き付かれた。

どうしたんだろう?

「あの可愛いアイビーが!」

「んっ? 今は可愛く……」

なんて事を聞こうとしているの?

「今は可愛くないですか?」なんて。

「今も可愛いよ。シファル化しても、アイビーなら可愛い」

別にシファルさんだけを真似てはいないんだけどな。

「あれは、シファルさんとラットルアさん、それにお父さんを参考にしたんですけど」

3人の冷たい雰囲気って、こう背中がゾクッとなるというか、目を見たら「ひ~」って言いたくなるというか、とにかくひんやりした空気が流れるんだよね。

「そうなのか?」

ラットルアさんが驚いた表情で私を見る。

「はい」

「そうか。俺も入っているのか」

ラットルアさんが嬉しそうに笑うので、つられて笑う。

「はぁ、食べた~」

ウルさんの声に、視線を向けるとテーブルに載っていたお皿はほぼ空っぽ。

かなりの量を作ったけど、見事に皆で完食してくれた。

無事に皆に手料理を振る舞えて良かった。

少しでもお礼になったらいいな。

「アイビー、ごちそうさま」

マルチャさんが、食後のお茶を飲みながらお腹をさすっている。

大丈夫かな?

「んっ? いや~、おいしい料理をつい食べ過ぎただけだから、大丈夫だよ」

心配そうな私の視線に気付いたのか、照れながら大丈夫と言ってくれた。

気に入ってくれたのなら、良かった。

汚れたお皿を持って調理場に向かう。

皆は、このままお酒を楽しむみたいだ。

「お疲れ様。大変だったでしょう?」

シャンシャさんが、汚れたお皿を持って調理場に入ってくる。

「大変だったけど、料理は好きなので楽しかったです」

皆の食べる量を考えて作ったから、量が多かったもんね。

でも、本当に楽しかった。

「明後日、行ってしまうのね」

シャンシャさんの言葉に、寂しさを感じながら頷く。

マーチュ村では色々あったけど、本当にいい村だった。

「寂しくなるわ」

「私もです」

「また、絶対にマーチュ村に来てね」

「はい。もちろんです」

今日の昼頃に、ジナルさんに伝言が届いた。

それは王都から「帰還を急げ」という内容だったらしい。

ただ、フォロンダ領主からはゆっくりでいいと言われていたから首を傾げた。

ジナルさんに話を聞こうと思ったら、伝言が書かれた紙を無表情で燃やしたので驚いた。

どうやら、フォロンダ領主に対抗しようとしている者達からの伝言だったらしい。

「2日後に、マーチュ村を出発しようか」

その後、フィーシェさんと話したジナルさんから、出発の日が伝えられた。

とりあえず、伝言を受け取った以上は急いで王都に向かうのだろう。

まだ少し用意が必要だけど、1日もあれば問題ないので、出発の日は2日後に決まった。

「手伝いに来たよ~」

ラットルアさんが大量のお皿を持って、調理場に入ってくる。

「あらあら、ありがとうね」

シャンシャさんがお皿を受け取って洗い出すと、その隣にラットルアさんが並んだ。

ラットルアさんとシャンシャさんと私で、お皿を洗っていく。

途中で、フィーシェさんも手伝いに来てくれて、あっという間にお皿は洗い終わった。

食堂に戻ると、セイゼルクさんとシファルさんが飲み比べをしていた。

毎回セイゼルクさんが負けるのに、懲りないな。

「アイビー。お疲れ様。ありがとう」

「はい。お父さんも今日はありがとう」

旅に出る事が決まったので、お父さんはお昼から夕方にかけて買い物に出掛けていた。

クラさんの案内があったので店を探す手間は省けたみたいだけど、さすがに買う物が多かったのか疲れた様子だった。

「大丈夫?」

「あぁ。ゆっくり夕飯も食べたし、もう大丈夫だ。それにしても、マジックバッグ2個分の荷物を無くすと大変だ」

お父さんもあの日、マジックバッグを1個無くしていた。

私の無くしたマジックバッグには調理道具や旅に必要な細々した物。

お父さんの方は、日常生活に必要な物や旅に役立つマジックアイテム。

あと、冒険者に必要な手入れ道具なども入っていた。

「でもクラのお陰で、ほとんどの物を揃える事が出来たよ」

たった半日で、必要な物をほとんど揃えたお父さんは凄いよね。

「明日は、アイビーが見ないと分からない物を買わないとな」

「うん。クラさんがお店を案内してくれるみたい」

今日に続きクラさんには、最後までお世話になるな

「そうか。クラには、お礼をしたいな」

「うん。マーチュ村ともお別れだね」

「そうだな」

「王都か。行く予定は無かったのにね」

私の言葉にお父さんが肩を竦める。

「何も無いと思うけど、王都に行ったら俺から離れないようにな」

「んっ? 何か心配事でもあるの?」

教会の問題が解決したのに。

「王が亡くなったり、王子達が王位継承権を剥奪されたり、王都は今色々と問題を抱えているから」

あぁ、そうだった。

王位継承権を争っていた2人の王子が、問題行動が多すぎると継承権を剥奪されたんだった。

確か、王子を煽った母親たちも権力から遠ざけられたとか。

復興で忙しい時にそんな情報が入ってくるから、皆で驚いたんだよね。

でも第3王子がいるから、すぐに問題は落ち着くだろうと言っていたのに落ち着かないのかな?

「分かった。でも、いつも通りだよね」

お父さんと旅を始めてから離れたのは、今回だけだ。

「それも、そうか」

お父さんの言葉に笑ってしまう。

王都か、ちょっと楽しみだな。