軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84話 みんなで混乱

「どうしたんだ、ずいぶん深刻そうな顔をしているが」

私たち2人の顔を見て、セイゼルクさんは戸惑った様子で聞いてくる。

ラットルアさんは少し考え込んだ後、覚悟を決めたように大きく深呼吸。

その様子に少しビビっていたセイゼルクさんを椅子に座らせ、今日のお店でのやり取りと、2人で話していた内容をそのまま伝える。

「……いや、だが……だがな……」

セイゼルクさんの眉間に、深い皺が刻まれる。

それほど、今話に上がっている貴族が組織の人間だと考えるのは難しいのか。

私のイメージでは、お金と権力のためなら何でもする人達なんだけど。

セイゼルクさんが大きくため息をつく。

「アイビーの考えは、確かにあり得る事だと思う。だがファルトリア伯爵ではないと思う」

ファルトリア伯爵?

もしかして私が疑っている貴族の名前だろうか?

「どうしてですか?」

「取り締まりを提案したのはファルトリア伯爵なんだ」

「あっそうなのですか。えっと、どういう経緯で取り締まりの提案を?」

「えっと、何だったかな。たしか、ファルトリア伯爵が裏商売をしている商人の情報を掴んだんだ。その商人が出入りしていたのが元商家の……いや、違う。その商人は違う場所を拠点としていたはず……。あれ? どうしてあの場所を取り締まることになったんだ?」

「……もしかして最初の場所とは違う場所を取り調べたのですか?」

「あぁ、そうだ。誰の情報だったかな。思い出せないが」

そんな重要な事を、セイゼルクさんが思い出せないなんてありえないと思う。

考えられるのは、故意に隠されて情報が流された。

でも、何処から元商家の情報は流れて来たんだろうか?

「あれ? なんであの場所になったんだ?」

セイゼルクさんの唖然とした声が届く。

ラットルアさんも複雑な顔をしている。

「あぁ~! 俺はこういうの苦手なんだよ! だから冒険者になったのに!」

セイゼルクさんが、いきなり髪を手でぐちゃぐちゃにして大声で叫んだ。

ラットルアさんと私は驚いて、椅子から飛び上がってしまった。

そして、いまだに意味の分からない雄叫びをあげ続けるセイゼルクさんを見つめる。

……壊れた。

セイゼルクさんが壊れてしまった。

ラットルアさんと視線を合わせて、椅子に座り直す。

どうしたらいいのか分からず、放置して5分ぐらい。

ようやく、雄叫びが止んだ。

よかった。

このままだったらどうしようかと、本当に不安だったのだ。

ただ、顔をあげない彼に少し不安な状態は続いているが。

「何をやっているんだ?」

後ろから聞こえた声に振り向くとボロルダさんが唖然とした表情でセイゼルクさんを見ている。

助けになるかな?

というか、助けて欲しい。

ラットルアさんが、これまでの経緯と話していた内容を伝える。

やはりボロルダさんも途中で少し混乱した様子だったが、最後まで話を聞いていた。

「そうか、それでセイゼルクがこうなったと。こいつな、人のドロドロしたモノが嫌で冒険者になったからな。冒険者はほら、討伐だけすれば済むから」

そうだったのか、それはとても悪い事をしてしまった。

ラットルアさんが何だか面白そうな顔をしているのは、見ない事にしよう。

巻き込まれたくはない。

「しかし、アイビー」

「はい」

何を言われるんだろう。

やっぱり考え過ぎって事かな?

「年を誤魔化しているだろ。絶対9歳ではないよな。正直になれ」

ボロルダさんも混乱中の様だ。

「言っておくが混乱はしていないからな」

読まれた。

「まぁいいか、アイビーの話は驚いた。今日俺達が話してきた内容と似ているからな」

「どういう事ですか?」

「朝、ギルマスに呼ばれて行ったんだが、自警団の団長もいたんだ。で、奴から自分たちの仲間に裏切り者がいる可能性があると言われた。どうやら見張り役をしている奴に怪しい奴がいるらしい」

「うわ~、アイビーが言っていた通りになってる。すごいなアイビー」

「だろ? だから絶対9歳とは言わさん!」

そう言われても、この姿では9歳です。

「で、自警団に裏切り者がいるなら色々と状況が変わってくる。ミーラの行動についてもな」

「あぁ、それで見張りの途中なのに呼び戻されたのか?」

セイゼルクさんが顔をあげる。

何だかここ数十分で5歳ぐらい老け込んだように見える。

「あぁ、下手に動くのは向こうの思うつぼって事になりそうだからな」

「なるほど。で?」

「アイビーと同じ結論、あの元商家に何かあるってな。で、あの場所を調べるように言った人物を調べた。最初はファルトリア伯爵だと思い込んでいたんだが、一応って事でな。そうしたら彼は違う場所を指定していた」

「それは俺も覚えている。ファルトリア伯爵が言った場所は村のはずれの民家だろ?」

「そうだ。で、あの場所に変更したのはフォロンダ領主だった」

フォロンダ領主、この町を治めている貴族かな。

「フォロンダ領主、アイビーに言おうと思っていた2人のうちの1人だよ」

確かボロルダさんが信頼している貴族だったよね。

よかった、この話の雰囲気からフォロンダ領主は味方になってくれるかも。

でも、それをしっかり調べたいな。

どうすれば、敵と味方をしっかり判断出来るだろう。

太ももにあるバッグがもぞりと動く。

視線を向けると、普通のバッグに入っているソラが動いているようだ。

シファルさんがソラにと、くれたバッグ。

中になぜかファーが付いている、ちょっと変わったバッグだ。

入り心地が良いのか、かなり気に入っている。

あっ、ソラに協力してもらって判断出来ないかな?

「あの、ソラに調べてもらうってどうでしょう」

「「「は?」」」

何でそんなに驚くんだろう。

調べるなら最適だと思うのだけど。

「まってアイビー、どうやってソラに協力を? 外に出すわけにはいかないだろ?」

「はい、ソラにはバッグの中から教えてもらいます」

「あぁ、ってそのバッグ。なんだか見たことがあるけど」

セイゼルクさんが、驚いた表情でバッグを凝視している。

何があるんだ、不安になるな。

「はい、シファルさんがくれました」

「マジで!」

ラットルアさんも驚いた様子。

なんだ?

シファルさんがくれたバッグって何か意味があるのかな?

マジックバッグではなく普通のバッグなんだけど。

「あの、このバッグ何かあるのですか?」

「いや、それは大丈夫。シファルって、あまり人に物をあげたりしないからさ。ちょっと驚いた」

「あまりって、まったくの間違いだろ」

そうなのかな?

バッグだけではなく、上から羽織る事が出来る服ももらったけど。

そういえば、綺麗なコップももらったな。

「とりあえずそれはまた今度話し合え、今はソラの協力の話だからな」

ボロルダさんがあきれた様子で、シファルさんの性格について討論しているセイゼルクさんとラットルアさんを見つめる。

「悪い。で、ソラの協力だな。出来るのか?」

「大丈夫だと思います。ソラ、今日会ったカルアさんは味方? 味方だったら2回揺れて。違う場合は止まってね」

バッグの中で何かがプルプルしているのが足に伝わってくる。

カルアさんは大丈夫の様だ。

「カルアさんは大丈夫みたいです。ルイセリアさんはどう?」

バッグの振動は完全に止まって、動きを見せない。

やはり、組織の人間だったようだ。

残念だ。

バッグの状態を見ていた3人から、小さな声が上がる。

「バッグの動きとしてはおかしいですよね」

「それは大丈夫。テイマーの中にはバッグの中でテイムした動物を飼う人もいるから」

そうなのか。

だったら、勝手に動くバッグがあっても問題ないな。

それにしてもソラって何で判断しているのか、不思議だな。