軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

789話 森の様子

「アイビー、大丈夫か?」

お父さんの言葉に、「大丈夫」と声を張り上げる。

旅の時よりかなり早く移動しているので、声が届きにくい。

「あと少しだ」

「分かった!」

お父さんの横から顔を出して前を見る。

まだ少し距離はあるが、村が見えた。

オカンノ村かな?

「あっ」

魔物の死体が、あちこちに転がっているのが見えた。

その数は、村に近付いていくほど増えて行く。

「木の魔物だ」

村に近付くと、村を囲うような形で木の魔物が黒くなっているのが見えた。

1体の木の魔物の横を通り過ぎた時、木の魔物の下に消えかけた魔法陣があった。

木の魔物の数だけ、魔法陣があるんだろうか?

周りにいる木の魔物は……見えているだけで11体もいる。

オカンノ村の周辺に、これだけの魔法陣があったの?

サーペントさんの速度が少し落ちた。

前を見ると、巨大な木の魔物が黒くなって倒れていた。

倒れた姿でも、分かるその大きさに少し驚く。

「クククッ」

サーペントさんがその木の魔物に向かって鳴く。

ラットルアさんやシファルさんを乗せているサーペントさん達も、顔を上に向けて鳴いた。

それに釣られたのか、あちこちからサーペントさんの声がした。

「多いな」

お父さんが驚いた声を出した。

「どうしたの?」

「俺達がここを離れる時は、こんなに多くなかったんだ。おかしくなったサーペントの方が多かった」

そうなんだ。

でも、今もまだあちこちから聞こえるけど、かなりの数のサーペントさんがこの周辺に集まっているみたい。

「なっ」

息の飲む声に視線を向けると、お父さんは村を見て顔色を悪くしていた。

お父さんの視線を追う。

「あっ」

そこには、多くの村人の倒れている姿があった。

なぜか、村人たちは等間隔に倒れている。

「お父さん、助けないと」

「無理だ。既に……」

えっ?

もう亡くなっているの?

倒れている村の人を良く見ると、首の辺りが真っ赤になっていた。

他の人達も同じ状態だ。

「行こう」

「……うん」

1回深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

オカンノ村でいったい、何があったんだろう?

「アイビー! 目を閉じろ」

えっ?

お父さんの言葉に、何があったのかと周りを見てしまう。

「っつ」

黒くなった木の魔物の下、きっと魔法陣があった場所なんだろう。

そこに人が倒れていた。

正確には、首から下の遺体と、綺麗に並べられた首。

「アイビー? 大丈夫か?」

「大丈夫。あの人達は何?」

「彼らは……生贄だろう」

やはりそうなんだ。

お父さんの背中に額を付けてギュッと目を閉じる。

チラッと見えた苦悶の表情に、眉間に皺が寄る。

「ふぅ」

息をゆっくりと吐き出し、気持ちを落ち着かせる。

よし、大丈夫。

目を開けてお父さんから離れる。

「無理はするな」

「うん。大丈夫」

そっと森に視線を向ける。

森のあちこちに、先ほどと同じ光景があった。

そしてその近くには、必ず黒くなった木の魔物がいた。

「あれ?」

胸元をギュッと掴みながらその光景を見ていると、ある木の魔物が気になった。

でも今は、マーチュ村に戻るのは先決だよね?

……でも、気になる。

傍を通るぐらいなら、別に大丈夫かな?

「アイビー、どうしたの?」

ラットルアさんの声に、お父さんが振り返る。

「気分でも悪いのか?」

「いや、そうでは無くて……」

どうしよう。

傍を通り抜けてもらうようにお願いしようかな?

「あの木の魔物が気になるのか?」

シファルさんの言葉に、つい頷いてしまう。

あっ、しまった。

「どれだ? あぁ、あの少し離れた所にいる木の魔物か?」

お父さんが、少し先にいる少し小さめの木の魔物を指す。

もう隠しても仕方ないので、頷く。

「うん。なぜか気になって」

「ぺふっ」

腕の中で大人しくしていたソルが鳴く。

ソルの気になるのだろうか?

「そうか。悪いが、少し方向を、んっ? ふっ、行ってくれるみたいだ」

お父さんがお願いする前に、サーペントさん達が進む方向を少し変えてくれた。

「ありがとう」

乗っていたサーペントさんの体をぽんぽんと撫でる。

「ククククッ」

気になった木の魔物の傍に来ると、サーペントさん達は速度をゆっくりにした。

「この木の魔物は、他の子よりも少し小さいな」

ラットルアさんの言葉に頷く。

それにしても、何が気になったんだろう?

ジッと木の魔物を見る。

特に他の木の魔物との違いは見つからない。

気のせいだったのかな?

「あっ、枝のところが光ってる」

私が指した枝の先には、微かに光に反射する物が見えた。

「もう少し近付けるか?」

お父さんの言葉に、サーペントさんがゆっくり、ゆっくり木の魔物に近付く。

でも、サーペントさんの移動の振動なのか、木の魔物の幹が少しパラパラと崩れてしまった。

「ありがとう。もう、届くはずだ」

お父さんが腕を伸ばして、枝の先にある物を掴む。

「あっ」

お父さんの小さな声と同時に、パラパラと枝が崩れていく。

その光景に少し気分が落ち込む。

ごめんね。

「これで、いいか?」

「うん、ありがとう」

お父さんが私の手に、枝の先にあった物を載せる。

それを見て、トロンの中にあった小さな石を思い出す。

ポケットから布に包まれた小さな石を取り出す。

「同じ物みたい」

「それは?」

ラットルアさんの言葉にお父さんが、「木の魔物の中から出た物」だと説明してくれた。

「石みたいだな。シファルは何か分かるか?」

ラットルアさんの質問に、シファルさんが首を横に振る。

「木の魔物から石が取れるなんて、噂でも聞いた事が無い」

「他に気になる事は?」

お父さんの言葉に首を横に振る。

「じゃあ、村に戻ろうか」

あっ、そうだった。

森で見た衝撃的な光景で、すっかり忘れていた。

シエル達だから大丈夫だと思うけど、やっぱり早く会いたいな。

光の森から出た時は不安だったけど、今はその気持ちは薄れた。

だってシエル達だからね。

それに、ジナルさん達がいてくれるみたいだから、きっと大丈夫。

「ちゃんと隠れてくれているよね?」

「たぶん、大丈夫だろう」

それならいいんだけど、なぜかそれについては少し不安になるんだよね。

どうしてだろう?

「そうだ。村の人達にシエルは見られていないかな?」

シエルは戦っていた。

もしかしたらマーチュ村の人に見られて可能性がある。

沢山の魔物がいたから、それほど目立ってはいないと思うけど。

……凄く不安になったのはどうして?

「凄いな」

「そうだな」

ラットルアさんの言葉にお父さんが頷く。

私は周りの状況に、お父さんの服をギュッと掴んだ。

「かなり激しかったんだな」

シファルさんは、残された戦闘跡を見て、険しい表情をした。

マーチュ村に近付くと、転がっている魔物数は多くなった。

全て亡くなっているのか、サーペントさん達は気にせず突き進む。

途中で、生き残った魔物がいたけど、なぜかサーペントさん達に追われていた。

姿や行動に異様が見られたサーペント達は、マーチュ村のすぐ傍に多く転がっていた。

かなり危ない所まで、攻め込まれていたみたいだ。

「門が空いているな」

お父さんが、少し警戒したのが分かった。

ラットルアさんとシファルさんも、武器に手を掛けた。