作品タイトル不明
番外編 マーチュ村で
―ジナル視点―
ドルイド達が、アイビーを追っていく姿を見送る。
「ははっ、今さら――」
不快な言葉をこぼす男を蹴りあげ黙らせる。
絶対に、ドルイド達は間に合う。
「現状は?」
「見てくるから少し待て」
俺の言葉にフィーシェが、サーペントに乗って大木を登っていく。
しばらくすると、神妙な表情でフィーシェが下りてきた。
「発動している魔法陣が2ヶ所。そこから魔物がまだ送られてきている様だ。あれを何かしないと、魔物の数は増える一方だろう。あとサーペント達がマーチュ村の方に向かっているのが見えた。マーチュ村から光が見えるので反撃はしているみたいだが、村の様子は分からない」
発動している魔法陣は2ヶ所。
俺達ではその魔法陣を無効化するのは、無理だ。
木々の間から見える、黒くなった木の魔物を見る。
フォロンダ領主から聞いた魔法陣の数よりはるかに少ない。
間違いなく彼等が命を掛けて、多くの魔法陣は無効化させたんだろう。
どうしてそんな行動をとっているのは分からないが、残りの2ヶ所もと願うのはあまりにも身勝だ。
俺達で、魔法陣を無効化出来る方法は無いのか?
「にゃうん」
「えっ? シエル?」
フィーシェの驚いた声に、視線を向ける。
シエルの上にソラとフレムまでいる。
「ぷっぷぷ~?」
「てっりゅりゅ~?」
どうしてこの子達が、ここにいるんだ?
アイビー達を迎えに行ったと思たんだが。
「にゃうん?」
「もしかして、アイビーを探しているのか?」
「ぷっぷぷ~」
見失っていたのか。
「アイビーは、教会の奴らに連れ去られたんだ」
「にゃ!」
「っつ」
これはシエルの殺気だな。
さすがアダンダラ。
殺気に慣れているはずの俺でも、怖いな。
「今、ドルイドとラットルア達が迎えに行っている。光の森にいると思うんだけど、場所は分かるか?」
「ぷっぷぷ~」
んっ?
これはソラが知っているという事で良いのか?
ジッとソラを見る。
……アイビーでは無いから、分からないな。
「行けるか?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「にゃうん」
大丈夫そうだな。
バキバキバキ。
バキバキバキ。
「ググググッ」
くそっ、サーペントだ!
「ガルガルガル」
「サーペントが右から、後ろから魔物も来たぞ!」
セイゼルクの声に、剣を構える。
「シエル達は行け!」
襲って来たサーペント達と俺達の間に、一緒に来たサーペント達が立ちふさがり戦い出した。
これなら俺達は魔物を相手にすれば済む。
「サーペント、ありがとう」
それにしても、魔物の数が多いな。
「マーチュ村の奴らと合流しよう」
「分かった」
フィーシェの言葉に、応えると飛び掛かって来た魔物を避けながら、首に剣を刺す。
くっそ~。
皮膚が硬い!
「ジナル、横!」
えっ?
やばいな。
剣が抜けない。
「に゛ゃっ!」
あっ?
横から襲って来た魔物が、シエルの攻撃を受けフィーシェを襲おうとしていた魔物にぶつかる。
シエルはそのまま、魔物の中に入り俺達を守りながら戦い出した。
「どうして、まだいるんだ?」
「ぷっぷぷ~」
ソラの声に視線を向けるとヌーガの腕の傷を治しているソラがいた。
「ジナル!」
「あっ、悪い!」
今は考える時間なんて無い。
目の前にいる敵を倒さないと。
襲い来るサーペントと魔物を倒しながら、少しずつマーチュ村に近付く。
マーチュ村に近付くほど、魔物が多くなる。
「マーチュ村は大丈夫なのか?」
セイゼルクの言葉に、不安な気持ちが湧く。
「大丈夫だ。攻撃音が聞こえているから!」
ドルイドと一緒にいた男が、村の方へ視線を向ける。
彼はマーチュ村の者か。
彼を今は信じるしかないな。
「もうすぐ村です。えっ? あれは?」
村の門が見えた辺りで、全員が立ち止まる。
「なんだあれ?」
門を攻撃するサーペントの姿が見えたが、その姿が異常だった。
「どうして頭が4つもあるんだ?」
ウルの言葉に、ぐっと手を握る。
教会の連中が何かしたんだろう。
ドドーン。
ドドーン。
村からの攻撃で、門を攻撃していたサーペントが吹っ飛ぶ。
周りにいた魔物は、吹っ飛ばされたサーペントの巻き添えになり押しつぶされた。
「今です!」
男の言葉に、武器を握る手に力を籠め門まで走る。
「ガーディア、マルチャだ! 開けろ!」
マルチャと叫んだ男が門に向かいながら叫ぶと、ギギギっと門の開く音が聞こえた。
「サーペントとシエルはどうする?」
フィーシェの言葉に、ハッとする。
そうだ、彼等は魔物だ。
「大丈夫です。ガーディア、味方になってくれている魔物も一緒だ! 攻撃はするな!」
「分かった! 一緒に入ってくれ!」
マルチャの言葉に、門の中から声が聞こえた。
マーチュ村に、シエルと数匹のサーペント達と一緒に入る。
「ひっ!」
サーペントの姿を見た村の人達が警戒態勢を取るが、俺の横で静かにしていると分かるとすぐに警戒を解いた。
「どんな状態だ?」
マルチャの言葉に、ガーアディアがため息を吐く。
「かなり悪い状況だ。怪我人が大量に出てしまったせいで、ポーションがほとんどない」
怪我人!
「ぷっぷぷ~」
「ソラ、待て!」
ソラが治したら大事になる。
「マルチャ。えっと、あれ?」
ドルイドから受け取ったマジックボックスを探すが、持っていない。
何処にやった?
「えっ?」
スッと前にサーペントの顔が迫る。
そして後ろを向くので、そちらを向くとサーペントの体の上に2個のマジックボックスがあった。
「持って来てくれたのか、ありがとう」
サーペントからマジックボックスを受け取り、中からキラキラ光るポーションを出してマルチャに渡した。
「これは?」
不思議そうな表情で光るポーションを見るマルチャ。
「これは怪我を治すポーションだ。今までのよりかなり凄いから、使う量に気を付けてくれ」
ドルイドから使う量を聞くのを忘れたな。
凄いと言っていたから、一口ぐらいか?
「ぷっぷぷ~」
ソラに聞いたら応えてくれるかな?
「ソラ、このポーションはどれくらい飲ませればいいんだ?」
ソラは俺を見ると、なぜかマジックボックスを覗き込む。
「ぷっぷぷ~」
マジックボックスに顔を入れて鳴くソラ。
何か見つけたのか?
マジックボックスの中を確認する。
……なんだこの異様な光景は。
光ポーションは分かるが、魔石?
いや、デカすぎるし純度が高すぎる。
それに、この大きいのは宝石か?
この大きさ、初めてみる。
……見なかった事にしよう。
「ぷっぷぷ~」
「あっ、ソラ!」
んっ?
マジックボックスに入ったソラが、何かを咥えている。
「ぷっぷ」
「えっ?」
ソラが咥えている物を俺の手に当てる。
スプーン?
……もしかしてポーションの量にこのスプーン?
「このスプーンの量で良いのか?」
「ぷっぷぷ~」
かなり少ないな。
「ぷっぷ?」
「てりゅ?」
「あっ、いや。ありがとう」
少なすぎると思うんだけど、でもソラ達がスプーンの量でいいというから試してみるか。
「ぷぷっ」
ソラがまた何かマジックボックスから取り出して俺の手に当てる。
それを受け取って首を傾げる。
黒い魔石だよな?
「これをどうするんだ?」
俺の言葉に門をみるソラとフレム。
森?
黒い魔石と森?
「森で、これが必要になるのか?」
俺の言葉に少し体を傾けるソラ。
フレムはプルプルと体を震わせた。
「ごめん、アイビーでは無いから伝えたい事が分からない」
「どうしたんだ?」
ウルを見ると不思議そうに俺達を見ていた。
「どこに行っていたんだ?」
マーチュ村に入ってから、姿が見えなかったウルを見る。
「悪い。町の状態と、今わかっている森の状態を確認してきた。やっぱり魔法陣――」
「ぷっぷぷ~!」
「てっりゅりゅ~!」
えっ?
ウルの言葉を遮ったソルとフレムを見る。
2匹は俺が持つ黒の魔石を見ている。
「もしかして魔法陣?」
「ぷっぷぷ~!」
「てっりゅりゅ~!」
手に持っている黒の魔石を見る。
さっき、魔法陣を無効化したいという話していたんだよな。
「まさか、これで魔法陣を無効化出来るのか?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
さすがドルイドが置いて行ったマジックボックスだな。
魔法陣を無効化出来る魔石が、入っているなんて。
とりあえず、このマジックボックスを安全な場所においておかないと。
誰かに中身を見られたら大変だ。
「ウル、このマジックボックスを頼む。これはドルイドのだから、誰にも取られないように」
俺の言葉に頷くウルは、マジックボックスを肩から提げていたマジックバッグに入れた。