軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 狩りと守り

―ある男の視点―

痛みを訴える体を何とか動かし、光の森にある小さな教会の中に入る。

中央にあるのは、台座に置かれた直径50㎝ほどの石。

この石が、この世界に掛かっている呪いを完成させた。

そして今は、その呪いを解くために使用されている。

「憐れな物だな」

役目を終えちゃんと壊れてさえいたら、こんな使われ方をしなかったのに。

壊れなかったせいで、守る力が壊す力に変わった。

石に手を伸ばすと、バチッと音がした。

そして、石から微かな光があふれ出した。

「随分と弱い光りになったものだ」

以前に比べると、溢れた光は弱い。

初めてこの石を見つけた時は、本当に光輝いていた。

石の役目を知っていた俺は、未来を見つけたようにその光に縋った。

なのに、今は風が吹けば消えてしまうほど、光は弱くなってしまった。

「お前の命も、もうほとんど残っていないんだな」

ふわっと風が吹き、目の前の光が揺れる。

石から手を離すと、溢れていた光も消えた。

「王都に雪はもう降っていない」

そろそろ合図が来る頃だ。

「失礼します。合図がありました」

ふっ、今日は勘が冴えているな。

まるで以前の様だ。

「魔物を放て。狩りを始める」

「はっ」

マーチュ村には特殊な守り手がいるらしいが、送り込む魔物の数は多い。

きっと魔物達にとって、彼等は良い餌になるだろう。

「んっ?」

どうしたんだ?

外が騒がしい。

痛みを抑えながら、教会から出る。

そこでは、王都と連絡を取り合っている部下の慌てている姿があった。

何だ?

「全ての魔物を送る事が出来ません!」

「何があった!」

計画に、問題はなかったはずだ。

「魔物を放てと連絡を入れた瞬間、向こうから通信が着られました」

どういう事だ?

生贄にする村や町とは、絶えず連絡を取り合っていた。

もしも、犬どもに勘づかれたらすぐに別の村や町を用意する必要が……。

「通信が犬どもに乗っ取られていたのか……くそっ!」

あぁ、魔物の情報は上手く隠せたから、こちらも大丈夫だと。

いや、しっかり警戒していた。

なのに、なのに!

おそらく、生贄にする予定だった者達も処理されただろう。

バレないように、王都から離れた場所の村や町を選んだ事が裏目に出てしまった。

異変が起きていても、気付けないのだから。

「どれだけの魔物をマーチュ村に送り込める」

「予定の6割です」

たったの6割?

「くそっ!」

落ち着け、落ち着け、6割はいるんだ。

送り込んだ魔物は少し弱いが、餌の血を少しでも浴びれば一気に強くなる。

だが……王都に送り込むには。

「オカンノ村の魔物も全てマーチュ村に送れ」

オカンノ村にいる、実験中の魔物を使うしかない。

「あれを、ですか?」

あの魔物には少し不安が残るが、この作戦が失敗したら次は無い。

「そうだ。あとお前、空間移動を使ってマーチュ村に行って様子を見て来い」

1人なら、生贄は3人か4人で済む。

「分かりました」

各自に連絡を終えると、部下は急いで空間移動ができる場所に走って行った。

少し焦ったが、大丈夫だ。

今日中に、王都を潰す。

―「炎の剣」ラットルア視点―

いきなり「風」のジナルに呼び出され、そのままマーチュ村に出発する事が決まった。

数日前にこれからの予定を話し合ったが、マーチュ村が生贄にされると分かり大きく変わった。

それにしても、王都を襲う魔物を強くするためにマーチュ村の人達を生贄にするなんて。

本当に教会の奴らはどうしようもないな。

「大丈夫か?」

「あぁ、なんとか」

と、言ったものの寒い。

それに、あまり乗り心地も良くないな。

「魔物に乗るなんてな」

セイゼルクの言葉に苦笑しながら、俺を乗せている魔物を見る。

4足歩行で足が速く、頭も良い魔物「グーク」。

「確かにな。でも、アイビーも魔物に乗った経験があるみたいだし」

ジナル達と話している時に、アイビーがサーペント達に乗って大移動した事を聞いた。

しかもジナルまでアイビーの紹介でサーペントに乗った事があるらしい。

正直、羨ましい。

次にアイビーに会ったら、お願いしてみよう。

「バッシュ。このまま走って大丈夫か?」

「悪い。少し休憩が必要だ。魔物達が疲れてきている」

「分かった」

先頭を走っていたジナル達の仲間でテイマーのバッシュ。

彼が、俺達を乗せている魔物の様子を見て、首を横に振る。

「彼の力は凄いな」

「あぁ。星の数は5つらしい」

だから、魔物を6頭も一気にテイム出来るのか。

どの魔物もよく彼の指示に従っている。

「休憩しよう」

「分かった」

魔物から降りて、体をほぐす。

魔物の背は固く、ちょっと尻が痛い。

まぁ、かなり早く移動できるので、あと1日もあればマーチュ村に着けるだろう。

「ガウガウッ」

「ガウガウッ」

「どうしたんだ?」

バッシュの言葉に魔物が再度鳴く。

その鳴き声に少し不安を覚え、視線を向ける。

魔物達は、今から向かうマーチュ村の方へ視線を向けている。

「どうした?」

ジナルが、バッシュに様子を聞くと彼の表情が険しくなっていた。

何かあるのか。

「警戒している。何かあるみたいだ」

何かって……もしかして、もう?

ジナルと見ると、彼も顔色を悪くしている。

「間に合わないのか?」

シファルの言葉に、ぐっと両手を握る。

ここから魔物に頑張ってもらっても、マーチュ村までは半日は掛る。

しかも、俺達を乗せてくれた魔物はかなり疲れている。

人の足だと、1日以上。

「アイビー」

アイビーの傍には、ドルイドがいてジナル達の仲間でウルという人物がいる。

でも、教会の奴らは相当な数の魔物を送り込むらしい。

生贄に選ばれた村や町を排除したらしいから、何割かは防げるみたいだけど。

「また……」

また俺は、助けられないのか?

大切な家族を守れなかったように?

「何か方法――」

「「「「「ガウガウッ、ガウガウッ」」」」」

魔物達が一斉に、唸りだす。

それにどきりとするが、魔物達が向いている方向がマーチュ村ではなく俺達の後ろ?

「何か来る!」

バッシュが魔物達の様子を見て、剣を抜いた。

俺達も急いで、剣を向き警戒態勢を整える。

「「「「「ガウガウッ、ガウガウッ」」」」」

「「「「「ガウガウッ、ガウガウッ」」」」」

森に魔物達の唸り声が響く。

「森が異様に静かなだ」

シファルの言葉に頷く。

バッシュがテイムしている魔物の唸り声が聞こえるが、動物や小さな魔物の鳴き声も、気配も消えている。

何が起こっているんだ?

バサッ。

木々に間から現れた魔物に、全員が唖然とする。

しかも1匹では無い。

こんなに近くに来られるまで気配に気付かなかった事にも驚きだが、俺達が知っている魔物より大きい。

「やるしかないか」

セイゼルクの言葉に、ぐっと剣を握る。

「待て! 落ち着け」

ジナルの言葉に、ちらっと視線を向ける。

「えっ?」

ジナルは、武器を収めて現れた魔物、巨大なヘビに近付いていく。

「危ないぞ。サーペントは凶暴だ」

「あぁ、その情報な……本当なのかな?」

ジナルの言葉に首を傾げる。

「そういえば、アイビーが乗っていた魔物はサーペントだったな」

ヌーガの言葉に頷く。

確かにそうだけど、ここにアイビーはいない。

彼女がテイマーだったから、サーペント達は協力してくれたのではないのか?

「「「「「ガウガウッ、ガウガウッ」」」」」

「ククククッ」

「ぐわ」

あれ?

バッシュがテイムしている魔物達が落ち着いた。

「サーペント、もしかしてアイビーを助けに行くのか?」

ジナルの言葉に、1匹のサーペントがスッと頭を下げる。

そしてジッと見ると、移動して背を見せた。

「ははっ、やっぱり。おい、サーペントに乗って行くぞ」

ジナルの言葉に、全員の動きが止まる。

「よしっ、これならすぐにマーチュ村に行けるな」

フィーシェがすぐに、魔物「グーク」からマジックバッグを取ろうとする。

それを見たサーペントがグークを咥えると、傍にいるサーペントの背に乗せた。

そしてすぐに俺達に視線を向ける。

「おい、急げと言っているみたいだ」

「えっ、あぁ」

ジナルの言葉に、セイゼルクが戸惑いながらサーペントの背に乗る。

俺やシファル達も慌てて乗ると、すぐにサーペント達は移動を始めた。

「速い!」

バッシュの言葉通り、サーペント達の移動速度は早くちょっと恐怖を感じる。

あれ?

「魔法で守ってくれているな」

シファルの言葉に、振り落とされない理由が分かった。

それにしても、まさかサーペントがアイビーを助けに来るなんて。

あの子には、何があるんだろう?