軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

704話 女医さん

お父さんと私の泊っている部屋に、女医さんを案内する。

もう1人の、女医さんのなんだろうか?

お手伝い?

その方は、なぜか食堂でのんびりお茶を飲みながら手を振っていた。

「チャギュから少し話は聞きました。私に聞きたい事があるとか。とりあえず、あなたから話を聞かせていただけますか?」

「分かりました」

お父さんと女医さんが椅子に座ったのを確認してから、人数ぶんのお茶を用意する。

お菓子もいるかな?

気軽に摘まめる物を用意しようかな。

「あっ、話を聞く前にお伝えしておきたい事があります。まず名前は聞きません。ここに泊っているという事は訳あり、もしくは色々ある方達でしょうから」

それは、私達ではないけどね。

「ついでに私の名前も伏せますね。チャギュから聞いた内容から判断して、長く付き合う事は無いでしょう。それなら、私の事はあまり知らないほうがいいので」

ん?

長く付き合わないなら、知らない方が良い?

……どういう事だろう?

あっ、訳ありの人ばかり見ているから、関わったら面倒ごとに巻き込む可能性があるのかな?

でも、女医さんの名前を知っているだけで巻き込まれるかな?

「分かりました。裏の医者なんですね」

裏?

「ふふっ、あなたも裏を知っている方なんですね」

裏の仕事の事かな?

「まぁ、そこそこに」

そこそこ?

もの凄く知っているような気がするけどな。

「そうでしたか。この村には色々な物を抱えた訳ありの方々が来ます。別に彼らだけならいいんですが、その者達を追いかけて様々な屑が紛れ込みますの。そんな彼らには、私のような医者が必要になるんですよ」

屑?

あっ、これ以上は考えないほうがいいやつだ。

きっと。

うん、名前なんて知らなくても問題ない。

「ふふふっ」

あれ?

女医さんが私を見て笑ったような気がしたけど、気のせいかな?

「さて、話をしてもいいですか?」

「はい。お願いします。気配の事でしたよね?」

お父さんが女医さんに、気配を急に感じられるようになった事や、そのせいで体調が悪くなることを話す。

女医さんは、お父さんの話を紙に書く事も無くじっと聞いては、少し考えこむ表情をした。

「話は分かりました。それで聞きたい事と言うのは?」

「なぜ急に気配を感じられるようになったのか、知りたいんです」

「正直、最初に聞いた時は『ありえない』と思いました」

ありえない?

「なぜですか?」

お父さんが首を傾げる。

「生まれつき気配を感じられないのは、脳に信号を送る器官が壊れているからだと言われているんです。そしてその器官が治ったという記録は、今まで1つもありません」

信号? 器官?

「あなたのように生まれつき気配を感じられない方でも、肌は気配を感じているんです。ただ、肌で感じた気配を脳に信号で送るんですが、その信号を送る器官が生まれつき壊れているため、正しい情報が脳に届かないんです」

そうなんだ。

肌は感じているんだ。

「急に感じられるようになったのは、壊れていた器官が何らかの要因で修復されて脳に信号が送られるようになったからだと思います」

修復と言う事は傷だよね。

つまり、ソラのポーションが信号を送る器官を修復したという事か。

「修復した理由は思い当たりますか?」

「まぁ、そうですね。ポーションかもしれません」

「ポーション? 昔、ポーションを使った実験を行った記録が残っていますが、全て失敗したとありましたが」

そんな実験をしているんだ。

お父さんは、どうするんだろう?

ソラのポーションは……言えないよね。

「もしかしたら俺は、ポーションと相性が非常にいいのかもしれません」

相性?

不思議そうにお父さんを見ると、真剣な表情で女医さんを見ている。

「相性ですか?」

「はい。この右腕を見て頂けると分かるでしょうが、魔物に引き千切られたんです。その時に死を覚悟しました。実際に、凄い量の血を流していましたから。ですが、たまたま通りかかった者が、持っていたポーションや落ちていたポーションを種類関係なく全部を傷に掛けてくれたんです。普通は、傷のポーションしか効果は無いはずです。魔物にやられた傷なので。ですが、ポーションがどのように効果を発揮したのかは不明ですが、血は完璧に止まり傷も綺麗になりました。失った血が多かったわりに、その日のうちに動く事も出来たんです」

「そんな事が。確かにポーションを複数かけ合わせて使うと、思いがけない効果がおこると聞いた事があります。実際に、記録にも残っています。なるほど」

「今回もそうかもしれません。気配を感じられるようになる少し前ですが、原因不明の体調不良だったので2種類の異なるポーションを同時に飲んだんです。その少し後から気配を感じられるようになったので」

女医さんを見ると、神妙に頷いている。

「質問ですが、不調を感じた時はいつも種類の異なるポーションを同時に飲むのですか?」

「今はしていませんよ。冒険者をしていた時は、時々していましたね。特に原因不明の体調不良の場合で、早急に動く必要がある場合は飲みました。原因が不明なので思い当たるポーションを同時に」

お父さんの答えに、女医さんが少し厳しい表情を見せる。

「ある仕事に就いている冒険者が行う方法ですね」

「ははっ。確かに、そうですね」

ん?

ある仕事?

早急に動く……裏の仕事か。

「おそらく複数のポーションを同時に飲んだ事で、信号を送る器官が修復されたのでしょう。あなたの話では、1回ではなくこれまでに何度も飲んできたようなので、少しずつ修復されていたのかもしれませんね。そしてこの方法は、あなただから出来た可能性が高いです。先ほどあなたが言ったように相性が良かった。他の方にも同じ効果が出るのかは不明ですが、期待はしないほうがいいでしょう」

女医さんの答えにホッとする。

今の言い方だと、「さっそく試します」とはならないはず。

ソラのポーションのお陰だから、正規のポーションで試したとしても無駄になるからね。

「体調の方はどうですか? 気になる症状があれば教えて下さい」

「そうですね、一番酷いのは頭痛ですね。あと吐き気もひどい時があります」

女医さんが頷き、お父さんの腕を取って脈を診る。

「少し心音が荒いですね」

女医さんの言葉に首を傾げる。

心音が速いではなく荒い?

よく、分からないな。

「今まで送られて来ることのなかった信号を受け取った脳が、混乱しているのでしょう」

「俺もそうだと思います」

「酷かもしれませんが、耐えられるなら耐えた方が早く体が気配に順応すると思います。ですが、無理なら……気配を感じられなくする薬があります。あまりお勧めしませんけどね」

女医さんの言葉に、頷くお父さん。

「その薬は止めておきます。やはり気配に晒されるのが一番ですか?」

無言で頷く女医さん。

「分かりました。それなら頑張りますよ」

「はい。でもとりあえず、吐き気止めと頭痛の薬はお渡ししますね。しんどい時は、無理せずに飲んで下さい」

女医さんが、持ってきたバッグを開けて2つの錠剤が入った瓶を取り出す。

「これを、右が吐き気止め、左が頭痛の為の物です」

「ありがとうございます」

瓶を受け取ったお父さんが、女医さんに頭を下げる。

「いえ、もう少しお役に立てられればよかったのですが。すみません」

女医さんの言葉に、お父さんが首を横に振る。

「いえ、とても助かりました。ありがとう」