軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

685話 なぜここに?

木の魔物とトロンやソラ達が楽しそうに遊んでいるのを、お茶を飲みながらのんびりと眺める。

当初の予定から大幅にずれてしまったけれど、予定外の参加者がいるんだからしょうがないよね。

「凄いね、あの根っこ。さっきから壁を壊しにかかっているみたい」

リーリアさんが指した方を見ると、木の魔物の根っこが壁にぶつかってその部分にヒビが入っていた。

「木の魔物は、力が強いからな。軽く当たっているように見えるけど、かなりの衝撃なんだと思う」

「結構なヒビが入っているけど、この場所は大丈夫なのか?」

タンラスさんが不安そうにお父さんを見る。

お父さんはヒビが入った壁を見て頷く。

「あれぐらいなら大丈――」

ボコッ。

大きな音に視線を向けると、壁にぽっかりと少し大きな穴が空いている。

本当に大丈夫なのかな?

「壊すなよ。崩れるぞ」

お父さんの言葉に、木の魔物とトロンの枝が揺れる。

大小の違いはあるけど、反応が一緒でなんとも可愛い。

じゃなくて、やっぱりヒビや穴が空けば崩れる可能性があるのか。

「お父さん、あの木の魔物はトロンに会いに来たのかな?」

「どうなんだろうな? トロンではなく同族に会いに来た可能性もあるが」

それもあるか。

木の魔物同士で挨拶をしに来た感じ?

「でも、会うためなら。洞窟まで来る必要はないよな? この村を出るまで待てばいいわけだし。わざわざ洞窟まで会いに来た理由は、なんだろうな」

そうだよね。

「急ぎの用事があったとか?」

「遊んでいるぞ」

お父さんの言う通り、会ってからずっと遊んでいる。

用事があって、会いに来たようには見えないよね。

「ドルイドさん。森に現れる姿が見えない上位魔物って、もしかしてあの魔物の事じゃないですか?」

アリラスさんが、マジックバッグからお菓子を出す。

それを受け取りながら、考え込むお父さん。

「それは分からないが、その可能性は大きいだろうな。木の魔物は、上位魔物になればなるほど擬態が上手くて、上位冒険者でも探すのは大変なんだ。洞窟内だから、魔力がどれくらいなのか確認できないが、あの力強さを見る限りは上位と判断してもいいと思う」

ビシビシビシ。

あっ、壁に大きなヒビが入った。

「おい、本当に気を付けて……あれ? 奥に空間があるみたいですよ」

タンラスさんが立ち上がると、木の魔物が作った穴に近付く。

「気を付けろよ。さっきからその辺りにずっと根っこがぶつかっていたから」

お父さんの注意に、タンラスさんが周りを見ながら穴の中を灯りで照らす。

「やっぱり、広い空間があるみたいです」

リーリアさんが楽しそうな表情で、タンラスさんの隣から穴を覗き込む。

「うわぁ、本当に広いね。奥が見えない」

アリラスさんがため息を吐いて、2人に近付く。

「あちこちにヒビが入っているから、気を付けろと言われているだろうが」

「だって、未知の空間だよ」

アリラスさんの言葉に、少し不服そうなリーリアさん。

確かに、新しい空間には私も興味が湧くな。

「気になるなら行ってみるか?」

お父さんが苦笑しながら私を見る。

「いいの?」

洞窟の壁にヒビが入っているから、あまり近付かないほうがいいんだよね?

「少しぐらいなら、大丈夫だろう」

それなら、見たい!

穴のある壁に近付いて周りを見回す。

「これは、いつ崩れてもおかしくないのでは?」

壁に入ったヒビは、穴が空いた場所を中心に広がっているように見えた。

「思ったより酷いな。これなら今すぐ崩れてもおかしくないと思う」

お父さんが困った表情で木の魔物を見る。

それに気付いたのか、木の魔物の枝が揺れた。

「凄く広いね」

穴から覗きこんだ空間は、奥まで灯りが届かないほど広い。

お父さんも少し驚いているみたいだ。

パラパラパラ。

ん?

うわっ、ヒビがさっき見た時より広がっているし、崩れている!

「お父さん、ここから離れた方が良いみたい。皆も離れて!」

私の視線の先を見たお父さんが頷くと、アリラスさん達も慌ててその場を離れる。

「ソラ? フレム?」

皆の姿を探すと、一緒に壁から離れる姿があった。

えっと、ソラとフレム。

それにシエルの上にソルとトロンも発見。

崩れそうな壁から離れると、様子を見る。

穴が空いた周辺からパラパラと壁が崩れていっているのが見えた。

しばらくすると、大きい破片が地面に落下しだし、数秒後には壁の一部分が崩れ落ちた。

「凄い、洞窟の壁があんなに簡単に崩れるなんて」

リーリアさんが少し興奮気味に言うと、アリラスさん達も興味津々で崩れていく壁を見ていた。

「終わったのか?」

タンラスさんが、灯りを崩れた壁に向ける。

まだ、小さな破片が崩れているが、大きく崩れる事は無いみたいだ。

「ソラ達は、大丈夫だった?」

壁が崩れる前に離れる姿を見たので、大丈夫だと思うけど。

何処にいるんだろう?

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

「「ぎゃっ」」

皆の声に、無事でよかったと安堵する。

ところで木の魔物が、トロンと一緒に鳴いているのはどうしてだろう?

「さっき見た空間に入れるな」

「ぎゃっ」

ん?

お父さんが奥の空間を調べようとすると、木の魔物がスーッとお父さんを追い越し空間に入って行った。

そして、こちらを向くと枝をわさわさと揺らした。

「誘っているのかな?」

「そう、見えるな」

お父さんは苦笑しながら、木の魔物が待つ空間へ歩いていく。

お父さんのあとに続いて、穴から見えていた空間に足を踏み入れる。

手に持っていた灯りで周りを照らすが、壁がどこなのか見えない。

本当にかなり広い空間のようだ。

「奥は何処だろう?」

リーリアさんが、灯りを照らしながら奥へと進む。

「リーリア、あまり奥まで行くなよ」

「分かっているけど、奥が気になるんだもん」

タンラスさんが慌ててリーリアさんの下へ行くと、一緒に灯りを頼りに奥へと歩き出した。

「壁が見えたか?」

お父さんの言葉に、首を横に振るリーリアさんとタンラスさん。

そろそろ2人の姿が闇に紛れそうだ。

「あっ、壁を発見。でも、これは何? 模様?」

リーリアさんの戸惑った声に、お父さんが急いで空間の奥へと向かった。

何かを見つけたのだろうか?

うっすらと見える3人の様子を窺う。

「ぎゃっ、ぎゃっ」

不意に空間に木の魔物の声が響く。

すると、空間の奥。

お父さん達がいる方向がうっすらと光った。

見ると、壁から淡い光が溢れ出していた。

そして、その壁には魔法陣らしきものが見えた。

「離れろ!」

お父さんが、リーリアさんの腕を掴んで淡い光を放つ壁から離れる。

タンラスさんもお父さんの様子に、慌てて壁から離れた。

「何? えっ、これって」

タンラスさんは壁の模様が何か分かったのか、戸惑った表情でお父さんを見る。

「魔法陣だ。もう少し離れた方がいい」

お父さんの言葉に、リーリアさんとタンラスさんが壁から距離を取る。

「リーリアさん、タンラスさん、体に違和感とか無いですか? お父さんは大丈夫?」

魔法陣が淡く光っているのを見ながら、ちらりと3人に視線を向ける。

お父さんは体を動かして、問題が無いか確かめているようだ。

リーリアさんは、少し困惑した様子を見せている。

「リーリアさん、大丈夫?」

「あっ、うん。大丈夫」

リーリアさんが頷くと、隣にいたタンラスさんが安心した様子を見せた。

「ぎゃっ、ぎゃっ」

木の魔物の鳴き声に視線を向けると、魔法陣の前にいた。

隣にはトロンの姿もある。

「トロン?」

「ぎゃっ!」

名前を呼ぶと、枝を揺らしながら鳴くトロン。

魔法陣の前にいるけど、大丈夫なの?