軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

638話 大変だ!

村に入ると、女性達の笑い声が聞こえた。

クスリの禁断症状で暴れる人が現れてから、村全体が異様な雰囲気になっていると聞いていたので、少し驚いた。

視線を向けると、50代ぐらいの女性4人が靴屋の前でおしゃべりをしている姿が見えた。

「女性は強いよな」

ウルさんが、4人の女性を見ながら感心した様子で言う。

「何か問題が起きた時に、村を復活させるのは女性の方が多いからな」

「そうなの?」

お父さんを見ると、「そうだよ」と頷いた。

4人の女性を見ると、傍にいた男性が話に巻き込まれたようだ。

少しすると、笑い声に男性の声も含まれた。

こうやって、村の人達は立ち直っていくのかな。

他の村でも思ったけど、村の人達は本当に強い。

「約束の時間があるから行こうか」

お父さんが、トトムさんの店に向かって歩き出す。

後を付いて行くと、隣にアルスさんが来た。

「アイビー。こめの炊き方なんだけど、私にも教えてくれる?」

「はい」と言いそうになるが、少し考える。

何も無い所で、よく滑るアルスさん。

実は、ここ数日で何度も見る光景となっている。

こめを持っている時に滑ったら?

……でも、断るのも。

「俺も一緒に教えてくれ」

エバスさんがアルスさんの隣に来る。

「えっ。私1人で大丈夫だよ」

「アルスは以前、完成した料理を全て駄目にした事があるだろうが」

やっぱりあるんだ。

何となく、ありそうだと思っていたけど。

エバスさんの言葉にアルスさんが、ちょっと拗ねた表情をする。

「そうだけど」

事実は変えようがないからね。

「分かった。一緒に教えてもらう」

アルスさんの言葉に、安堵の表情を見せるエバスさん。

これまでに色々あったんだろうな。

「では、2人にも教えますね」

旅に出たら、一緒に料理をする機会も増えるだろうな。

ちょっと楽しみだな。

「いらっしゃい。あっ、久しぶりだな」

トトムさんの店に入ると、彼が嬉しそうに出迎えてくれた。

ガルスさん達の紹介が終わると、トトムさんが店を閉め始める。

「お店、閉めちゃって大丈夫ですか?」

「あぁ、今日はお昼から休むと言ってあるから、問題ないよ」

店を閉め終わると、調理場に向かう。

お店の調理場だけあって、調理器具など色々揃っていて感動してしまった。

「こめを炊いている間にお昼も作っていいですか?」

「それは嬉しいな。いつも、晩御飯の残りで味気なかったんだよ」

トトムさんが嬉しそうに、色々と食材を持って来てくれる。

というか、どれだけ持ってくるの?

「トトムさん、多いですよ!」

「えっ?」

トトムさんが、不思議そうにガルスさん達を見る。

あぁ、そうか。

若い冒険者の人達って、大食いの人が多いから。

「冒険者の方達は確かに大食いの人が多いけど、彼らはちょっと多いぐらいです」

「そうなのか。まぁでも、これぐらいは必要だろう」

そうかな?

大きな肉の塊が、3つもあるんだけど。

絶対に7人じゃ、多い量だよ。

あっ、お父さんが肉の塊を見て嬉しそうにしてる。

仕方ないな。

何とかしよう。

「アイビーは教えるので忙しいだろうから、下準備は任せてくれ。何をしたらいい?」

お父さんが、肉の塊を1つ持って私を見る。

本当に、肉に目が無いよね。

でも、下準備をしてくれるのは嬉しい。

「じゃ、お願いするね」

ウルさんとガルスさんにはお肉と野菜を切ってもらい、お父さんにはお肉を漬けるタレを作ってもらう。

「タレが出来たら、一番右のお肉を漬け込んでね」

「分かった。任せろ」

お肉に関して、お父さんは失敗しないので安心だ。

「お待たせしました。とりあえず、トトムさんはこめを炊いて下さい。問題点があったら、その都度言いますね」

とりあえず、何が問題なのか知りたい。

「分かった」

「アルスさんとエバスさんは、炊き方を説明しますね」

トトムさんの行動を確認しながら、アルスさんとエバスさんにこめの炊き方を説明。

2人は、説明が終るとすぐにこめを炊く準備に取り掛かった。

ガラガラガラカーン。

調理場にある棚から、鍋が壁際まで飛んで行く。

「うわ~、ごめんなさい」

「焦るな! 動くな! 俺が取りに行くから!」

こめが入ってない時でよかった。

ホッとしながら、トトムさんを見る。

「トトムさん、こめの量を量りましたか?」

「目分量だけど」

「それでは水の量が判断できないので、コップを使ってこめをお鍋に入れてください」

お鍋に入ったこめを違う容器に入れて、近くにあったコップをトトムさんに渡す。

「トトムさん、コップに大盛ではなく。すり切りで入れてください」

「分かった」

大丈夫かな?

「トトムさん、すり切りですよ?」

「あれ? すり切りになってなかったか?」

これってもしかして。

「全然すり切りになってないです。今のはちょっと少ないです」

「そうか?」

「あ~、トトムさん。その鍋に、そんなにこめを入れたら駄目です」

お鍋の大きさを見る。

「これだとコップ4杯か5杯です」

「えっ、それだけ? もっと一気にいっぱい炊けないかな?」

「無理です」

やっぱり、トトムさんって大雑把なんだ。

もう一度やり直し、すり切り4杯のこめを準備出来たので、次はこめを洗ってもらう。

「トトムさん、待って! それだとこめが潰れてしまうから!」

トトムさんのこめの洗い方は、完全にこめを潰しにかかっているとしか思えない。

それに、新しいこめなので優しく洗うだけで十分だ。

「このこめは新しいので、優しく水の中でぐるぐる回して洗うぐらいで大丈夫です」

「そうなんだ」

トトムさんのこめの洗い方を見ながら、エバスさんとアルスさんを見る。

エバスさんの指示なんだろうか。

アルスさんが、コンロの前に椅子を置いて座っている。

その状態だと、物を落とす心配はないね。

「洗い終わったこめを1時間ぐらい水に浸けたら、もっと美味しく炊けるんですよ」

今日は時間が無いから、仕方ない。

「今日はこのまま炊きますね。水の量はこめの1.3倍です」

ここのこめは、こめの量の約1.3倍で美味しく炊けた。

少しぐらいなら、水の量が多くても少なくても美味しく炊けたので、トトムさんにはこの村のこめでよかった。

「トトムさん。水もしっかり量って下さいね」

教える時は、きっちり1.3倍で教えるけどね。

「分かった」

トトムさんが、お鍋に入れる水の量をそっと窺う。

よし、大丈夫。

エバスさんとアルスさんを見る。

アルスさんがコンロに火をつけるところだった。

「トトムさん。あとは火にかけて炊いていきましょう。お鍋の蓋は閉めてくださいね」

アルスさんを見ると、椅子から落ちそうになっているところをエバスさんに支えられていた。

どうして、そうなるんだろう?

「あれ?」

トトムさんの火加減を確認しようとすると、お鍋に蓋がされていない。

「トトムさん、お鍋の蓋を閉めてください。蓋は、炊き終わるまで絶対に開けては駄目ですよ」

「それだと、中が確認できないんだが」

あぁ、初めてこめを炊く人は心配で蓋を開けてしまうんだよね。

というか、トトムさんの場合は最初から蓋が閉まってないけど。

「美味しく炊くためなので、お願いします」

トトムさんが鍋の蓋を閉めるのを確認する。

「絶対に、開けては駄目ですよ」

私の念押しに、無言で頷くトトムさん。

大丈夫かな?

「トトムさんは料理が出来るんですよね?」

「あぁ、切って炒めてソースを絡めれば完成だ」

……まぁ、それも料理かな。

ソースの種類を変えたら、味も変わるし。

「それ以外は?」

「煮込み料理はいつも失敗するから、今は作らないな」

トトムさんの近くにいる人に、こめの炊き方を教えた方が良いかもしれない。

たぶん、それが一番いい方法のような気がする。

「アイビー。こっちは終わったぞ」

お父さんの方の下準備が終ったようだ。

「はい。トトムさん、絶対にお鍋の蓋を開けては駄目ですよ!」

「何度も言わなくても分かってるって」

怪しい。

「俺が見ておくよ」

エバスさんが、笑って私とトトムさんを見る。

「お願いします」

正直、すっごく不安なので。