軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64話 双子と討伐隊のリーダー

「初めまして、緑の風のミーラの兄でトルトだ。こっちが弟のマルマだ」

驚いた。

同じ顔が並んでいた。

もしかして、双子?

「アイビー、驚いた? 兄たちは双子なの。珍しいのよ」

珍しい?

……そうなのかな?

ミーラさんがそう言うのなら、そうなのだろう。

どうも私の知っている知識が、前の私に随分と影響されているような気がして、下手な事が言えない。

でも確かに今まで行った村に、双子と思われる人達はいなかった。

珍しいのか。

覚えておこう。

「初めて見ました。よろしくお願いいたします。アイビーです」

「お~、いい子だね」

トルトさんもマルマさんも、笑顔で対応してくれた。

……でも、なんだろう?

弟さんのマルマさんに何か……気のせいかな?

「そうでしょ! とってもいい子なのよ」

「集まっていたのか」

随分と、どっしりとした落ち着いた声が聞こえた。

声に視線を向けると、がっしりとした体つきに少し強面の男性がこちらに歩いて来ていた。

とても、頼りがいのある雰囲気が漂っている。

初対面の人に、そんな印象を持ったのは初めてだ。

不思議な人だな。

「リーダー。先ほど話をしたアイビーです」

「えっ、あっと、アイビーです。よろしくお願いいたします」

ぼーっと男性を見ていたら、不意に名前を呼ばれて驚いた。

何とか挨拶したけど、大丈夫かな?

それにしても討伐隊のリーダーだったのか、なるほど。

「討伐隊のリーダーをしている、ボロルダだ。よろしくな」

そう言うと、軽く頭を撫でられた。

何だろう、雰囲気かな?

初対面のはずなのに、頭を撫でられると落ち着く。

やっぱり不思議な人だ。

「ミーラはずっとこの広場にいるな?」

「えぇ、そのつもり。と言うか、スライムのテイマーが討伐に参加する事は無いでしょ?」

「ハハハ、確かにそうだ。貴重なテイマーを失うような事はしない。アイビーとなるべく一緒にいてやってくれ」

「もちろんよ。任せて!」

ミーラさんが私に向けてウィンクをするので、少し笑ってしまう。

でも、貴重なテイマーってなんだろう。

テイマーってそれほど多くないのだろうか?

その辺りを聞きたいけど……今度にした方がいいよね。

考え込んでいると、ギューッとラットルアさんが後ろから抱き着いて来た。

「俺も出来るだけ一緒にいるからね! 頼ってね!」

あまり頼りすぎるのもどうかと考える。

だが。

「はい。お願いします」

過度に遠慮することは、相手にとって失礼になる。

甘えるときは甘えて、出来る事で役に立ちなさい。

占い師が、人と付き合う上で大切な事だと話してくれた言葉を思い出した。

過度の遠慮の範囲が分からないが、ここは甘えさせてもらおう。

正直、あの不快感が怖い。

緑の風のミーラさん達3人は、明日会う約束をして別れた。

討伐隊リーダーのボロルダさんはセイゼルクさんと何か話があるようで、2人で何処かに行ってしまった。

「あの、ラットルアさん。食材をもらえますか? 夕飯を作りたいのですが」

「いいの? 昨日のスープもお肉も美味かったから、実はお願いしようと思っていたんだよね」

「うれしいです。頑張って作りますね」

ラットルアさんのにこにこした表情につられて、笑顔がこぼれる。

テントに戻り、バッグの中にいるソラに小さな声で話しかける。

「ごめんねソラ。当分は窮屈な思いをさせる事になりそう」

ソラはバッグの中で、2回大きく縦に伸びたが出て来る気配はない。

いつもならバッグから飛び出してくるのに。

ソラは、私が置かれた状況を理解しているのだろうか?

そっと撫でると、うれしそうにプルプルと揺れる。

「皆、いい人たちでよかった」

私の言葉にソラは、揺れるのをやめて私をじっと見つめてくる。

……何だろう?

いつもと反応が違う。

ソラに話しかけようとすると、テントの外で少し大きな音がする。

気になるが、あとにしよう。

ソラの入っているバッグにポーションを入れる。

討伐は何時ごろまで続くだろう。

ソラのポーションが心細くなってきたな。

「ソラ、頑張ってご飯作って来るね」

縦に伸びて揺れているソラを撫でてから、バッグを閉じて毛布の上に乗せる。

調味料をバッグから出してテントから出る。

既にラットルアさんが火を起こして、鍋や水の準備をしてくれていた。

「すみません。遅くなって」

「大丈夫。食材はこれでいいかな? そうだ、明日は新鮮なお肉が手に入るよ。今日討伐したモウを明日配るって言っていたから」

モウの新鮮なお肉。

それはうれしいな。

貰った食材を適度な大きさに切って、お鍋に入れていく。

今日のお肉は塩漬けにされたコッコと言うお肉らしい。

コッコ……なんだろう、何か思い浮かんだけど知らない動物だ。

とりあえず、塩漬けなので味付けに気を付けないと、塩辛くなってしまう。

持ってきた薬草を数種類、お肉と一緒にお鍋に入れて煮込んでいく。

ちりっと首の辺りに不快感を感じた。

さっと周りを見る。

冒険者が多いので、誰なのか判断できない。

それに、周りを見るときには不快感は消えてしまっている。

誰なんだろう……。

ポンと頭に手が乗る。

「大丈夫。俺達がいるからね」

ラットルアさんが、笑顔で私の頭をポンポンと撫でる。

「ありがとうございます。スープ、そろそろ完成です。コッコを焼いていきますね」

塩抜きしておいたコッコに、薬草をまぶして焼いて行く。

ちょっと独特な香りがする薬草だけど、大丈夫かな?

ヌーガさんがテントから出てきて、焼いているお肉のそばに座る。

何処かに行っていたシファルさんも、いつの間にかスープのお鍋のそばに座っていた。

まったく気配を感じさせなかったシファルさん、さすが上位冒険者?

……なんか、ちょっと違うような気がするな。

「ん? どうしたの?」

「いえ、もう少しだけ待ってくださいね。セイゼルクさんもまだなので」

「セイゼルクは放置でいいよ」

「えっ?」

「シファル、お前な」

セイゼルクさんの声が聞こえたので、視線を向ける。

何だか疲れた表情で、シファルさんを見ている。

「あぁ、お帰り」

「悪気が無く本気なところが、シファルの怖いところだよな」

「やだな~。俺は怖くないよ」

「よく言うぜ。俺の分も食べようとしていたくせに」

「食事の時間に、戻ってこないほうが悪い。残すのはもったいないからね」

「いやいや、俺の分を残しておこうという気はないのか?」

「……冷めたら、もったいないからね」

シファルさんって、最初の印象とはかなり違うな。

なんとなく、ふんわりと言うイメージがあったのだけど。

何だっけ……我が道を行く感じ?

あってるかな?

まぁ、ちょっと変わってる。

「食事にしましょう」

何故かずっと、言い合いをしているセイゼルクさんとシファルさんを止めるために声をかける。

お肉を見つめているヌーガさんが何気に、どんどん不機嫌になってきているような気がするし。

……ラットルアさんだけでなく、炎の剣ってみんな個性的かも。