軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 ジナルさんとウルさん

パチッと目が覚める。

あれ?

ここは、どこだっけ?

見覚えのない天井を疑問に思いながら、周りを見回す。

「あっ、起きたか。おはよう」

ん?

なぜかウルの姿が見える。

……あっ、ここはギルマスたちを治療している隠れ家だ。

そうだった。

寝不足だから、休ませてもらっていたんだった。

「大丈夫か?」

「あぁ、寝ぼけてた。おはよう」

横になっていたソファから起き上がり、部屋を占領している4つのベッドを見る。

商業ギルドのギルマスと、冒険者ギルドのギルマス補佐の2人の治療は済んでいるようだ。

少し立ち上がって彼らの顔色を見る。

苦痛に歪んでいた表情が落ち着き、顔色も良い。

寝ている間に無事に治療は済んだようだ。

今は商業ギルドのギルマス補佐の治療が行われている。

「順調のようだな」

「あぁ、彼で最後だ。それより、あの魔石は凄いな。3人とも治療が済むと目を覚まして、すぐに起き上がる事が出来たんだ。医者が『あんな状態にまでなって、ここまで一気に回復するとは』と驚いてた」

「そうか」

さすがあの子達の魔石だな。

有償になると思うが、いったいどんな金額になるやら。

でもあまり高すぎると、アイビーが気にするよな。

もしかして、人生で初めて対価を下げるための交渉をする事になるのか?

「そういえば、トルラフギルマスは起きたのか?」

隠れ家に来てトルラフギルマスと話をしようと思ったが、彼は医者から睡眠薬を処方されて眠っていた。

何かあったのかとプラフに話を聞くと、病み上がりなのに隠れ家からどこかへ行っていたらしい。

気付いた時には、机の上に「すぐに戻る」という走り書きがあったと、プラフが嘆いていた。

30分ほどでトルラフギルマスは何かの資料を持って戻ってきたが、顔色は真っ白で体調が悪い事はすぐに分かった。

それなのに、持ってきた資料を読もうとしたため医者が「体を休ませる必要がある」と強制的に眠らせたらしい。

俺がこの隠れ家に来た時も、医者に見張られながら寝ていた。

小さい頃から世話になっている医者だとプラフが言っていた。

彼が情報を漏らした者でないといいが。

「5分ほど前に起きたとプラフが言いに来た。今は食事中だろう」

「そうか」

起きているなら話が出来そうだな。

食事が終わった頃を見て、部屋に行くか。

「それより、起きたら話があると言っていただろう?」

言ったかな?

言ったような、言ってないような。

……睡眠は大切だな。

「おい?」

「あぁ、話か」

チラリと眠っている補佐達を見る。

寝ているとはいえ、いつ起きるか分からない以上ここで話すのは駄目だな。

「人には聞かせられない話か。なら、これを使うか」

ウルがマジックバッグから、何かを取り出しテーブルに置いた。

四角い、白い箱?

いや、箱ではないな。

「これだったら、周りに聞かれずに話せるだろう?」

あぁ、音を遮断するマジックアイテムか。

ウルが白い箱に手を乗せると、俺を見る。

俺も箱に手を触れさせると、ウルが箱をぐっと下に押した。

少し下がった感触がすると、俺とウルを囲うような力を感じた。

「上手くいったな」

ウルの言葉に箱から手を離す。

周りを見る。

なんだ?

いつもと何かが違うな。

「もしかして、かなりレアなマジックアイテムか?」

「やっぱり分かったか。このマジックアイテムは、口元を読めないようにしてくれるんだ。しかも、囲っている力を感じるだろう? この中に誰かが無理矢理干渉しようとしたら音で知らせてくれるし、それが誰なのかも知らせてくれる」

凄いな。

というか、これ間違いなく高額取引されるマジックアイテムだよな。

「どこから?」

「ちょっと知り合った貴族の、隠し部屋から」

ちょっと知り合った貴族?

ウルを見るとニヤリと笑っている。

犯罪に手を染めた貴族か。

「人身売買か? 違法薬物の販売か?」

「人身売買だ。攫った子供達を貴族や金持ちに売っていた 貴族(くず) だ」

なるほど。

人身売買の捜査のついでに、隠し部屋から持ち出してきたのか。

「あれが持つより、俺の方が有意義に使ってやれると思ってさ。それにあの部屋の物は色々とやばい物が沢山。10個ぐらい消えても誰にも訴えられないんだよなぁ。可哀想に」

今の言い方は、まだ捕まえていないのか?

捕まえているなら、訴えられないとは言わないよな。

「囮に使っているのか?」

「あぁ、上物が引っかかってきたから、そいつを捕まえるために泳がせている。でも、そろそろ解決するだろう。かなり荒れるぞ」

この言い方は、王家に近い存在が引っかかっているのか?

うわ~、関わりたくない。

「俺は何も聞いてない」

「ははっ」

俺の言葉に、笑みを見せるウル。

全く、いらない話を聞かせやがって。

絶対に関わらないからな。

「それで、話は?」

「あぁ、その前にこれに名前を書け」

持ってきたマジックバッグから、紙を2枚取り出しウルの前に置く。

「なんだ……はっ? えっ、本気か?」

「本気だ。というか、ただの契約書だ」

そう契約書だ。

ただ、使われている紙が普通の物と違うだけだ。

「いやいや、なんでこの紙で契約書? これじゃなくても普通の紙でいいだろう?」

「いや、この紙で契約する」

俺の言葉に、じっと俺を見つめるウル。

暫くすると、ため息を吐き名前を書きこんだ。

2枚目の紙に名前を書くと、2枚の紙が少し光る。

これで契約は成立と。

「魔石についての話だよな?」

「あぁ、そうだ」

「この契約書が必要なぐらい、洗脳を解く魔石と、怪我と中毒を治す魔石は、隠さなければならないという事か?」

「その通りだ。それに、この契約書が無いと話せないし、話そうとしたら死ぬ」

俺自体が、契約書に縛られているからな。

アイビーが「ジナルさんの思う通りに使ってくれていい」と言った時は、驚いた。

彼女はこの紙での契約書にちょっと消極的だから、新しい契約書についてどう説明しようか迷っていたんだよな。

俺やドルイドが言えば頷いてくれるだろうけど、無理強いはしたくない。

知らない間に契約者が増えるのもどうかと思うが……まぁ、それは諦めてもらおう。

それに契約者はアイビーではなくて俺だしな。

「ん? まさか、ジナルはその魔石の持ち主とこの紙で契約を交わしてるのか?」

俺が頷くと、ウルが呆れた表情を見せる。

「何を考えているんだ?」

まぁ、言われるだろうな。

マジックアイテムの紙を使用した契約は、代償がデカいからな。

「色々と」

俺の返事に、眉間に深い皺を刻むウル。

じっと俺を見るが、笑って流すと首を横に振られた。

「言わないと決めたら、絶対に言わないよな。もういい。とりあえず説明を頼む」

「ウルがこの村に居てくれて良かったよ」

ドルイドの話では、食料の買い出しに行く時に見張り役がいたらしい。

ドルイドとアイビーが何者なのか掴めてはいないだろうが、アイビーの存在に目をつけられたら厄介だ。

ウルがいなかったら、気になって動き回れなかっただろう。

「洗脳を解いた魔石とギルマス達を治療している魔石は、スライムが生み出した物だ」

「…………はっ?」

まぁ、その反応になるよな。

「洗脳を解いた魔石とギルマスたちを治療している魔石はスライムが――」

「聞こえてるし、分かっているから繰り返すな! いや、分かっているのか? じゃなくて、聞こえたから!」

混乱しているウルを見る。

やっぱりこうなるよな。

ただウル、慣れろ。

アイビーと一緒にいたら、これぐらいで混乱していたら役に立たない。