軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

576話 メモ帳

「ジナル、俺にもメモ帳を見せてくれ。プラフ、見ても構わないか?」

「はい、どうぞ」

フィーシェさんがジナルさんからメモ帳を受け取ると、中を確認する。

「それを見る限り、両ギルマスだけじゃなく補佐達も内密に麻薬組織を追っていたようだ」

ジナルさんが、メモ帳のあるページをフィーシェさんに示す。

「そうだな。ここに書かれてる『怪しいと思われる人物』の事は調べたのか?」

「はい。そこに載っているのは、冒険者ギルドの職員と冒険者でした」

「冒険者もか」

プラフさんの言葉に、フィーシェさんが頷く。

「調べた時に、メモ帳に載っている者達以外に怪しいと思った者はいたか?」

ジナルさんの質問にプラフさんを見ると、眉間に皺を寄せていた。

「はい。父たちの事で公表を急かした者たちを怪しいと思っています。実は、父が大怪我をしたと報告した時に、少し不思議な態度を見せた者がいたんです。まるで話を訊く前に、既に内容を知っていたような。ほんの些細な事だったのですが、気になったので調べた時にその事に少し触れたんです。そうしたら、いきなり怒り出してしまって」

それは、怪しすぎるでしょ。

というか、報告する前に態度に出すなんて、組織が大きくなり過ぎて管理できなくなっているのかな?

「プラフ、君は冒険者ではないんじゃないか?」

えっ?

驚いてジナルさんとプラフさんを交互に見る。

「はい。どうして分かったんですか? 俺は魔石の研究をしています」

そうなの?

全然、分からなかった。

あっ、でも、言われてみれば体格が冒険者にしては華奢かな。

普通の商人よりは、いい体格をしてるけど。

「冒険者ではないが、ギルマスに冒険者の事を叩きこまれているな?」

戸惑った様子で頷くプラフさんに、ジナルさんが笑いだす。

「その、態度に出た奴らは思いもよらなかっただろうな。冒険者の知識をプラフが持っていたなんて」

意味が分からずジナルさんを見つめると、視線が合う。

「プラフの行動に、冒険者ではしないものがあったから気になっていたんだ。で、話を聞いて確信した。冒険者ではないとな。その態度に出た奴は、プラフをただの研究者だと思って気が緩んでいたんだろう。だから、態度に出てしまったってところか」

なるほど。

冒険者は森の中での些細な変化に気付けるように、特訓をするからね。

私の場合は、森で生活をしていたから自然と身についているとお父さんが教えてくれたけど。

「小さい時から魔石の研究がしたくて、10歳の時に研究者になりたいと父に言ったんです。父は賛成してくれて、でも魔石を取りに行くには冒険者の知識があった方が安全だと、時間が空いた時に鍛えられました」

良いお父さんだったんだ。

「ん? 研究者が自分で魔石を取りに行く事は無いんじゃないか?」

えっ?

ホルさんが不思議そうにプラフさんを見る。

「そうです。研究者が自ら魔石を取りに行く事はありません。父に騙されました」

プラフさんの少し拗ねたような態度に、ジナルさんが噴き出した。

「ぷっくく。なるほど、10歳だもんな。仕方ない」

「それは……まぁ、ギルマスの特訓が今回は役に立ったから」

困った表情のホルさんに、プラフさんが苦笑する。

「今回だけじゃなく色々と役立っているので、真実を知った時も怒れなかったんですよね」

プラフさんが小さく笑うとホルさんも笑みを見せた。

どうやらオカンイ村のギルマスさんは面白い人みたい。

元気になって欲しいけど、怪我が治せないとなるとソラのポーションも効果は期待できないかな。

「しかし、冒険者としての知識が叩きこまれているとはいえ、研究者に見抜かれるとは。組織が大き過ぎて、目が行き届いていない可能性があるな」

「ありえるな」

あっ、私の予想も全く間違ってはいないのか。

でも、当たっても特に嬉しくはないな。

「話を戻すな。プラフ、麻薬組織に加担している者は、まだまだいそうか?」

「はい。俺が調べただけで、おかしいなと思う者が数名いました」

「そうか」

神妙に頷くジナルさんに、プラフさんが不安そうな視線を向ける。

「あの、助けて頂けますか?」

ジナルさんの視線が、フィーシェさんとホルさん達に、そしてお父さんに向く。

それぞれ視線が合うと頷いているのが分かった。

「アイビー」

最後に私を見るジナルさん。

その表情は少し困ったような、でも目は真剣なので小さく笑ってしまう。

「はい、私にも出来る事があればお手伝いしたいです」

と言っても、私は守られている立場だから、出来る事なんて無いよね。

何か手助けできればいいのに。

「という事だ」

ジナルさんの言葉に、プラフさんが私たちに向かって深く頭を下げた。

部屋の隅にいるガルスさんたちも頭を下げたのが見えた。

全く音を出さないから、ちょっと存在を忘れていた。

本当に気配を消すのが上手いな。

「プラフ。メモ帳の内容を、ここにいる全員と共有したいがいいか?」

「はい」

ジナルさんがフィーシェさんからメモ帳を受け取ると、ホルさんに渡す。

ホルさんはメモ帳を確認すると、隣に座っていた騎士に渡した。

私も読めるのかな?

「あの、お願いがあるのですが」

真剣な表情でジナルさんを見るプラフさんにジナルさんが頷く。

「そのメモ帳に何度も出てくる、クスリを製造している場所をすぐに探し始めて欲しいんです。父の計算が正しければ、カリョの花が満開になっています。もしもそのメモ帳に書かれている量の花が咲いているなら、出来るクスリの量は膨大です。それが世界に出回ってしまったら……。どうか、お願いです。俺も一緒に探します。だからすぐに探してください」

頭を下げるプラフさんを見る。

カリョの花が咲いていて、クスリを製造している場所とはあの洞窟の事だよね?

ジナルさんを見ると少し悩んでいる表情が見えた。

どうしたんだろう?

ジナルさんはしばらく悩んでいたが、ホルさんに視線を向けると頷いた。

「カリョの花については、既に処分したから問題ない」

「えっ?」

驚いた表情でホルさんを見るプラフさん。

どうやら、ホルさんたちが処理をした事にするみたいだ。

どんな考えがあるのか分からないけど、最初の予定通りなのかな?

「あの、それはどういう事ですか? 処分?」

困惑したプラフさんがジナルさんを見ると、ジナルさんが首を横に振った。

「俺達は話を訊いただけなんだ。詳しい話なら、当事者から聞いた方がいい」

ジナルさんがホルさんを見ると、プラフさんもホルさんを見た。

「暴走した魔物に襲われたんだが、森の中より岩場の方が戦いやすいだろうと、村で聞いた魔石が取れる岩場に行ったんだよ」

「暴走した魔物……」

「魔物は大丈夫。全て倒したから」

「すみません」

プラフさんが申し訳なさそうにすると、ホルさんがポンとプラフさんの肩を叩く。

「気にするな。こうして無事なんだから」

頷くプラフさんにホルさんが苦笑する。

「岩場からはすぐに離れようと思ったんだが、穴を見つけたんだ」

「穴ですか?」

穴?

もしかしてシエルが開けた穴の事かな?

「そう、穴だ。何となく不思議に思って中を覗いたら、カリョの花畑が広がっていたというわけなんだ」

堂々と話すから、嘘だと知っているのに信じそう。

これ、バレるとしたら表情に出やすい私からだよね。

気を付けないと。

なんか、こんな事が最近あったような気がする。

「カリョの花の危険性は知っていたから、すぐに持っていたマジックアイテムを使って処分した。乾燥した根もあったが、そちらも処理をしてきたから安心していい」

ホルさんの説明に、プラフさんの表情に安堵が浮かぶ。

メモ帳に何度も書かれていたみたいだから、きっと気にしていたんだろうな。

「あの、カリョの花畑に見張りはいませんでしたか?」

「見張りらしき者たちの死体があった。傷の状態から、魔物にやられたのだと思う」

「魔物?」

「魔物除けを持っていたが、暴走した魔物には効かない事がある。なぜ見張りが安全な洞窟から出たのかは不明だが、洞窟内部には誰もいなかったよ」

「そうでしたか。あの、ありがとうございます」

プラフさんがホルさんに深く頭を下げる。

ホルさんの表情が一瞬だけ動いたような気がしたけど、気のせいだったかな?

それにしても、お見事。