作品タイトル不明
527話 実感
ソラの頭を撫でると、じっと私を見る。
何かを訴えているような気がして抱き上げる。
何だろう?
「ソラ、どうしたの?」
「ぷっぷぷ~」
腕の中で、不服そうに鳴くソラ。
なんだろう?
「もしかして、遊び足りなかったとか?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
フレムも?
村に入ってした事と言えば、家を見て教会の中を調べたぐらいだもんね。
ソラたちが、思いっきり遊べる場所ではなかったね。
「ソラたちは探検が好きだもんね。ちょっと少なかったね。ごめんね」
ソラとフレムの頭を撫でると、2匹は仕方ないという感じで鳴く。
そんなソラたちに苦笑が浮かぶ。
「そう言えば、サーペントたちはどうしたんだ?」
ジナルさんの言葉に、慌てて周りを見る。
「あそこだ」
お父さんの言葉に視線を向けると、少し離れた場所にサーペントさんたちがいた。
私たちの視線に気付いたのか、するするとこちらに来るサーペントさんたち。
「悪いな。待たせた」
ジナルさんの言葉に、1匹がドンとジナルさんのお腹に顔を寄せる。
ただ、ちょっと勢いがよかったのかジナルさんの体が空中に浮いている。
「うわっ! 勢いが強いだろ!」
慌ててサーペントさんにしがみつくジナルさん。
その姿につい笑っていると、お父さんとフィーシェさんも笑っているのか笑い声が聞こえた。
サーペントさんは楽しくなったのか、ジナルさんを顔に乗せたまま左右に顔を振っている。
「こらっ! 降ろせ!」
ジナルさんの声に、ソラが楽しそうに鳴くと向かって行く。
「ぷっぷ~!」
「ソラ、待て! 遊んでない!」
ジナルさんに向かって飛び跳ねたソラは、ちょっと着地を失敗してしまったようだ。
「ぶっ」
見事に、ジナルさんの顔にぶつかった。
「楽しそうだな」
「ドルイド、変な感想は要らない! 止めてくれ!」
お父さんが肩を竦めながら近付くと、サーペントさんは動きを止めた。
「なんでドルイドだと言う事を聞くんだ?」
「さぁ?」
お父さんが不思議そうに首を傾げながら、ジナルさんの頭の上にいるソラを抱き上げる。
「はぁ。疲れた」
ジナルさんを振り回していたサーペントさんが、じっとジナルさんの様子を窺っている。
「遊びたいみたいだぞ」
フィーシェさんの言葉に不思議そうな表情のジナルさん。
フィーシェさんがジナルさんの隣にいるサーペントさんを指すと、ジナルさんがため息を吐いた。
「遊ばないぞ。というか、俺は遊んでないぞ」
遊んでいるというより、遊ばれているように見えるかな。
「あのサーペント、ジナルの事が気に入ったみたいだな」
お父さんの言葉にフィーシェさんが頷く。
実は私もそう思っていた。
「あの子は、たぶん初めて見ます」
「えっ? 見分けつくのか?」
私の言葉にフィーシェさんが驚いた表情をする。
「あっいえ。えっと、ちゃんと見分けがつくわけではないんです。ただ、初めての子とそうじゃない子は何となくわかるというか。何回か会った事がある子も、分かる子がいますが、それも全員じゃないので」
「十分すごいから」
フィーシェさんが、感心した様子で私を見る。
ちょっと恥ずかしいな。
「うおっ」
ジナルさんの叫び声に視線を向けると、ジナルさんが先ほどのサーペントさんに転がされていた。
ジナルさんを気に入ったサーペントさんはまだ若いのか、ちょっと力加減が苦手みたい。
「あのジナルが本気で困ってる。面白い」
フィーシェさんが興味津々でジナルさんを見る。
サーペントさんに懐かれているジナルさんが、困った表情でサーペントさんの顔を撫でている。
撫でられたサーペントさんは、機嫌がよさそうだ。
「これからどうする?」
ジナルさんが、サーペントさんを撫でながらお父さんたちを見る。
そろそろ、今日の寝る場所を確保しないと駄目な時間になっている。
「そうだな。この周辺で休める場所を探すか」
お父さんの言葉にサーペントさんたちが動き出す。
「どうやら知ってるみたいだな。付いて行こうか」
フィーシェさんの言葉に全員が頷くと、動き出したサーペントさんの後を追う。
チラリと後ろを振り返るサーペントさんたちは、数分進むと止まった。
「テントが張れそうな場所だな」
お父さんの言葉にジナルさんが周りを見回す。
「そうだな。シエルもサーペントたちもいるし、テントを張っても安心して寝られそうだ」
「慣れたな」
フィーシェさんの言葉にジナルさんが苦笑する。
確かに、少人数での旅でテントを張る事に最初は渋っていたからね。
「慣れるしかないだろう」
ジナルさんが笑いながら、マジックバッグからテントを出す。
「そうだ、今日は大型のテントを出さないか? ここなら大丈夫そうだ」
「アイビー、どうする?」
お父さんの言葉に、頷く。
大型のテントは、旅ではなかなか出てこない。
森の中では広めの平らな場所を探すのが難しいから。
でも、サーペントさんが教えてくれたこの場所は、かなり広く平らだから大型テントも大丈夫そうだ。
「賛成です」
私の答えを聞いたジナルさんが、別のテントをマジックバッグから出してフィーシェさんに渡す。
お父さんたちがテントを張る間に、他の事を済ませよう。
「枝とか拾ってきますね」
お父さんたちに声を掛けて探しに行こうとすると、ソラたちがついてくる。
「にゃうん」
「ん? 案内してくれるの?」
「にゃうん」
私の少し前を歩くシエルの後を追って森の中を歩く。
途中で手ごろな大きさの枝を、持ってきたマジックバッグにどんどん入れていく。
夕飯を作る時と、夜にも必要だから枝は結構必要かな?
湿っている枝は、やめておこう。
「にゃうん」
「ぷっぷぷ~」
シエルとソラの声に、下に向いていた視線を前に向ける。
少し離れたところに、大きな青い実をつける木がある。
シエルはその傍に座っている。
「これを見せたかったの?」
「にゃうん」
青い実か。
「これ、美味しいの?」
「にゃうん」
美味しいのか、皆に持って帰ろう。
木を見ると、足を掛けられる場所があるので、実の生っているところまで登れそう。
「ぷっぷぷ~」
ソラの声に視線を向けると、ぴょんと青い実のなる木に向かって飛んだ。
「おぉ~、さすが!」
ソラに続いてフレムも木に向かって飛び跳ねる。
ソルは、木の下で上を見ている。
ソラたちのように、木に登る気はないようだ。
そんなソルの頭を撫でると、枝の入っているマジックバッグを置く。
「確かもう1つあったはず」
マジックバッグのポケットから小ぶりのマジックバッグを取り出し、ポケットに入れる。
さて、登ろう。
枝を掴むとぐっと体を上に持ち上げる、足元を見て、足を掛けられる場所を探す。
足を掛けると、上を見て掴める枝を探す。
「そう言えば、最近は木に登るのも減ったな~」
一人旅の時は、木の上が当たり前だった。
それが、今では木の実を採る時ぐらいにしか登らない。
何だか久しぶりだから楽しくなってきた。
足を掛けて手を伸ばしてを繰り返し、青い実のなる場所まで登りきる。
「ふ~、昔より登りやすい気がする」
両手を見る。
そう言えば、しっかり食べるようになってまた身長が伸びたっけ。
それに、昔に比べて手も大きくなった。
ただ、体を上に持ち上げる時は、昔より力がいるけれど。
「ぷ~?」
私の様子を不思議そうに見るソラ。
「ソラ。私、ちゃんと成長してるね」
「ぷっぷぷ~」
何だか、実感しちゃった。
青い実に手を伸ばして収穫する。
それを小ぶりのマジックバッグに入れる。
「皆が食べる分でいいよね」
それにしても、鮮やかな青い実だな。
シエルが紹介してくれたから、きっと美味しい実なんだろうけど。
匂いを嗅いでも、甘い匂いはしない。
本当に美味しいのかな?