軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

502話 ガリットさんが2人

「あ~つまり、この魔石は俺をもう1人作れる可能性があるという事でいいか?」

ジナルさんが確認するように言うと、お父さんたちが頷く。

人間を複写するというのが何か話し合った結果、何とか答えかもしれないモノに辿り着いた。

契約書を他の紙に写すことは出来るので同じものを作りだすまでは良かったが、人間という言葉に全員が首を傾げた。

人間とはだれを指すのか、その人物を紙に写し出すのかそうじゃないのかなど、未知の力なので話し合いはちょっとごたごたした。

が、何とか答えを1つに絞り込んだ。

「ジナルがもう1人いるとか、考えただけで寒気がするな」

ガリットさんの言葉にフィーシェさんが頷く。

ジナルさんが2人?

「それほど悪くないのではないですか?」

私の言葉に、ガリットさんたちがすごい表情をして私を見た。

「アイビー、ジナルに毒されて。可哀そうに」

ガリットさんが泣きまねをする。

それを見たお姉ちゃんが楽しそうに笑っているけど、ジナルさんはかなり凄みのある笑顔になっている。

それが見えているのに続けるガリットさんとフィーシェさんはすごいよね。

「お前らいい加減にしろ」

「ははっ。それより魔石の力は何となく掴めたけど、どうやって複写を作るんだ?」

フィーシェさんの言葉にジナルさんとガリットさんが顔を見合わせる。

通常は魔石に魔力を流すだけでいいのだけど、何か違うのだろうか?

「魔力を流した者の複写が出来るんじゃないのか? 危険はないと信じてやってみるか」

ジナルさんが魔石に魔力を流す。

しばらく待つが何も起こらない。

「違ったみたいだな」

フィーシェさんが残念そうに言う。

「あ~、祈るとか?」

お父さんの言葉にジナルさんたちが首を傾げる。

「もう1人、増えろみたいな感じで」

「あ~、とりあえずやるか」

半信半疑ながら、ジナルさんが目をつぶって少しすると魔石に魔力を流した。

……何も起こらない。

「あ~、どうすればいいんだ?」

ジナルさんとお父さんが首を傾げる。

「自分以外の誰かを想像してみたらどうだ?」

フィーシェさんの言葉にジナルさんがため息を吐く。

「俺以外か……やってみるしかないな」

持っていた魔石を両手で持って、何かを考えると魔力を魔石に流した。

「えっ!」

「すごい」

魔石が少し光るとジナルさんがみるみるガリットさんに変わっていく。

「そっちかよ! ……というか、俺!」

「すごい。見分けがつかないですね」

2人のガリットさんを見比べて、ちょっと興奮してしまう。

話しあって出した答えは、「何もない所に、誰かを作りだすことが出来る」だったが、本当の答えは「自分以外の誰かになることが出来る」だった。

最後まで、この2つのどっちなのかと揉めたんだよね。

それにしても、本当に瓜二つ。

「確かに、俺でも見分けがつかない」

フィーシェさんの言葉に本物のガリットさんが複雑そうな表情で頷く。

「あれだな。自分をこうしてみると……微妙な気分になるな」

「ジナル、話は出来るのか?」

フィーシェさんの言葉に頷くジナルさん。

「出来る。特に何かが変わったという感覚は無いな。というか、本当に俺がガリットになったのか?」

ジナルさんが自分の変わった姿が見られないので、首を傾げている。

お父さんがマジックバッグから鏡を出して渡すと、鏡の中を見て嫌そうな顔をした。

「あぁ、気持ち悪いぐらいそっくりだな」

ガリットさんが、ジナルさんがした嫌そうな表情を見て、嫌そうな表情になった。

本当にそっくりだね。

「でも、この魔石は危険だな」

「そうだな。そこまで似ているなら、悪い事がし放題だ」

フィーシェさんの言葉に頷きながら、ガリットさんがため息を吐く。

あっ、そうか。

この魔石を使ったら、誰かに罪をなすり付ける事も出来るんだ。

自分の犯罪を隠すことも出来る。

「面倒な魔石が出たな」

ジナルさんが頭を掻く。

あれ?

「ジナルさん、姿が戻ってるよ」

「「「「「えっ?」」」」」

私の言葉に唖然とするジナルさんと、驚いているガリットさんたち。

「確かにジナルに戻ってる」

ガリットさんが首を傾げる。

お父さんが、ジナルさんが持っている魔石を見る。

「魔石に何か変化はないか?」

ジナルさんが、手の中の魔石を皆に見せる。

「赤い線は3本あったはずだが、2本に減っているな」

確かに魔石には3本の赤い線が入っていたのを見た。

なのに、今は2本だ。

もしかして回数制限があるのかな?

となるとあと、2回?

「複写できる時間はかなり短いな。これだと悪さは出来ないか……使い道が分からないな」

フィーシェさんが、魔石をジナルさんから受け取り見つめる。

確かに、この短い時間に何が出来るって言うんだろう。

出来たとしても逃げている途中で、複写は解ける。

「相手の気を逸らすぐらいか?」

それなら使えるかな?

「そうだな。まぁ、悪い奴らはこれでも活用するんだろうけどな」

悪知恵だけは働くもんね。

とりあえず魔石については、何が出来るか判明した。

ジナルさんたちは、地下洞窟で見つかった残りの魔石についても調べるそうだ。

「俺たちはお昼から地下洞窟に行くが、その間に村へ行っても大丈夫だぞ」

ガリットさんの言葉に首を傾げる。

危ないと言っていたのに、大丈夫?

「あぁ、村にいた追っ手は今日は全員地下洞窟だ。だから、村へ行っても問題ない」

そうなんだ。

お父さんを見ると頷いた。

「村に行って、必要な物を買ってくるよ。靴に服だな」

お姉ちゃんが少し申し訳なさそうな表情をする。

ん~、気にしているな。

「あっ、そうだ。商業ギルドに行って、お姉ちゃんが拾った魔石を売って、そのお金で必要な物を買おう」

「私が拾った魔石?」

「そう、洞窟で一緒に拾ったでしょ?」

サーペントさんがいた洞窟でお姉ちゃんと洞窟を見回った時に、数個魔石を拾った。

サーペントさんがくれた魔石に比べると、かなりレベルは低いがお金にはなる。

お父さんに見せて確かめたが、レベル7ぐらいなのでいつでも売っていい魔石に分類されている。

「でもあれは、アイビーがほとんど拾ったと思うんだけど」

お姉ちゃんの言葉に首を横に振る。

「2人で拾った魔石でしょ? 私の分も一緒に売るつもりなんだ。夏服が欲しいから」

急に背が伸びたのか、去年の夏服が小さくなってしまったんだよね。

だから仕方ないけど夏服を買う必要がある。

「えっと、それなら」

これでお姉ちゃんの靴と洋服が買えるね。

「アイビーも靴を買うか?」

お父さんが嬉しそうに提案してくれるが、却下!

まだまだ十分履けます。