軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

497話 大好きなお父さん

「はぁ」

お父さんからため息が聞こえる。

枝を拾いながら、様子を見るとどうも落ち込んでいる様子。

それを見て少し笑ってしまう。

「どうしてそんなに気にするの?」

昔の事なのに。

「それは……俺に大切な人が出来たからだろうな」

ん?

お父さんを見ると私を見ている。

「俺が今まで切り捨ててきた者たちも、誰かの大切な人だったなと思って……。知ってはいたけど、分かってはいなかった。そう思ったら、もっと方法があったんじゃないかと考えてしまって……。簡単に人を切り捨てていた俺を知られるのが、怖くなったんだ」

お父さんの昔の事を知って、私が嫌いになると思ったのかな?

そんな心配は、する必要ないのに。

そもそも簡単に切り捨ててきたのなら、そんな事を悩まないと思うな。

ずっと心のどこかで悩んでいたから、私というきっかけが出来てあふれてしまっただけだと思う。

「それに、王都に近付けばきっと俺の事を聞く機会も増える。恨んでいる者もいるからな。アイビーが悪く言われてしまうかもしれない」

「そうなんだ。でも、私は平気。お父さんはやるべき事をしたと思っているし」

師匠さんもゴトスさんも言っていた。

お父さんは優しすぎるのだと。

だから自ら憎まれ役を買って出ると。

詳しくは訊かなかったけど、なんとなくは理解した。

私にはそれで十分。

「お父さんは、本当に不器用だよね」

「そうかな?」

自ら恨まれ役を買って出て、それで苦しんでいるんだから不器用でしょう。

「そう。不器用すぎる」

お父さんを見ると拗ねたような表情をしていたので、噴き出して笑ってしまう。

私の楽しそうな雰囲気に、ソラとフレムが楽しそうに飛び跳ねる。

「不器用か……。結構本気で悩んだんだけどな」

後悔もあるけど、お父さんに恨みを持っている人が私に何か言ったりするのが怖いのかも。

「お父さんはカッコよくて、でも情けない所もある。すごく優しいのに冷たい所もあるし、器用なのに不器用なところもある。そんな印象かな。あのね、全てを含めて大好きなお父さんだからね」

私の言葉に、お父さんが驚いた表情で私を見た。

お父さんの最初の印象はカッコいいだった。

片腕を無くしても、力強く生きる強さを持っていたからその強さに憧れた。

なのに、親や兄弟の事になるととたんに不安定になる姿を見て驚いたし、失敗した時の情けない表情に強さだけではないんだなと思った。

その姿を一生懸命隠そうとしている姿が可愛かった……これは内緒だけどね。

片手でもなんでも器用にこなす姿はやっぱりカッコよくて。

でも、今回のように心配し過ぎて不器用になる事もある。

全部含めて、大好きなお父さんなんだけどな。

「アイビーは強いな」

「そんなことはないよ。でも、強くありたいかな」

私を大切だと言ってくれる人や私が大切だと思う人の事は信じる。

そう決めたから。

「そうか。ありがとう」

お父さんを見ると、優しい笑みで私を見ている。

うん、やっぱりカッコいい。

「あっ、話し込んでしまったがマリャは大丈夫かな?」

お父さんの視線がお姉ちゃんがいる方を見る。

話しながらでも、手は休める事なく枝を集めていたのでそれなりに集まっている。

マジックバッグの容量を考えると、今日の分は余裕であるだろう。

「お父さんと私の分を合わせると、明日の分も集まったと思う」

「そうだな。ジナルたちの様子では、数日ここに待機しそうだったからな」

「うん。どんな情報を持ってくるか楽しみだね」

何かするような含みがあったけど、無茶だけはしないで欲しい。

まぁ3人なら大丈夫か。

急いでお姉ちゃんの下に行くと、焚火の炎が大きく立ち上がっている。

「あぁ、よかった。どうしてこんなに火が強くなるの!?」

私たちの姿を見て泣きそうになるお姉ちゃん。

「油を含む木を入れ過ぎたんだよ。今手に持っているその木は少しだけ入れないと」

「えっ、これ?」

お姉ちゃんの周りにある木を見ると。

2種類に分けていたはずが、ごちゃごちゃに交ざり合っている。

「あれ? 分けていったはずだが」

「あっ」

お父さんの言葉に、お姉ちゃんの頬が赤くなる。

「足で引っ掛けてしまって……」

「怪我は無いか?」

お父さんの質問に、恥ずかしそうに頷くお姉ちゃん。

怪我がなくてよかった。

「ごめんなさい。上手く出来なかった」

「大丈夫、気にするな」

お父さんが焚火の調整をしてくれている間に、マジックバッグから取ってきた枝を出す。

全て出し終わると、マジックバッグを裏返して中を綺麗にする。

「次は何をするの?」

「夕飯を作ろうと思うけど、何がいい? 食べたいものはある?」

まだ食材は沢山あるので、ある程度の希望の物は作れる。

お姉ちゃんを見ると、少し悩んでいる。

「あのちょっとピリッとしたスープで、こめの入ったのがいい」

「分かった。あれはお父さんも好きだから大丈夫。それにしよう」

お父さんには別にお肉を焼こうかな。

食材が入ったマジックバッグから必要な材料を取り出す。

お鍋と包丁なども出して、焚火の近くで調理を開始する。

「何を手伝ったらいい?」

「お鍋洗って、半分ぐらいまで水を入れて火にかけてくれる?」

「分かった」

火の番をしているお父さんに、味付けしたお肉を焼いてもらう。

その隣でピリ辛スープを作って、ご飯を炊いて。

炊けたご飯をスープに投入して、少し煮込んだら完成。

「肉もいい感じに焼けたぞ」

「ありがとう」

お姉ちゃんがソラたちのポーションをマジックバッグから出しているのだが、手が止まっている。

様子を見ると、劣化が激しく色の区別がつきにくいポーションが出てきてしまったようだ。

手助けした方がいいかなと声を掛けようとするが、区別が出来たのかポーションを並べた。

確認すると、ちゃんと正しい方に置いている。

色の区別がつくようになったのだろうか?

「どうした?」

「お姉ちゃんの目は、色の区別が出来るようになったの?」

「あぁ、少しずつだが治っているみたいで改善されてる。良かったよ。後遺症が残ったらどうしようかと思った。あれ以上何かを背負って生きるのは大変だろうから」

あっ、やっぱりわざと言ってなかったのか。

「治る可能性があったから言わなかったの?」

「そうだ。その可能性にかけた。後遺症だったら、いずれ失明しただろうからな。色々あったマリャには言えなかった」

失明!

奴隷印を使った人は、本当に人として最低。

「色の区別がつくようになったんだし、もう大丈夫だよね?」

「ジナルに確認したけど、もう少し様子を見ないと分からないらしい」

「そうなんだ。……でも、きっと大丈夫だよ」

そうあってほしい。

これ以上、お姉ちゃんが苦しむのは見たくない。

お姉ちゃんが、ポーションを並べ終えてこちらに来る。

「ありがとう。完成しているから、食べようか」

「うん。美味しそう」

お姉ちゃん用とお父さん用に、それぞれご飯入りスープを器によそう。

そう言えば、この料理の名前は何なんだろう。

前の私の記憶にあった、何かの料理だと思うんだけど……思い出せないや。

「はい。どうぞ」

「「「いただきます」」」

ピリ辛スープは体が温まるから夜にお薦めだな。

「アイビー」

「何?」

「明日は捨て場に行かないか?」

サーペントさんのお陰で、ポーションにはまだまだ余裕があるけれど、この先どうなるか分からない以上いつでも移動できるように準備は必要だよね。

「うん。ポーションとか必要な物を確保しておこうかな」

「あぁ、ジナルたちが失敗するとは思わないが、もしもがあるからな」

「分かった」

明日は、朝方に捨て場に行ってお昼からは洞窟でジナルさんたちと待ち合わせ。

……お風呂入りたいな~。