軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

477話 小さな小さな変化

シエルを先頭に森の奥に向かって歩き出す。

しばらくするとシエルが立ち止まり、周りをきょろきょろと見渡す。

「どうしたの?」

「にゃ?」

不思議そうにするシエル。

「何かあるのか?」

お父さんが剣の持ち手を握り、周りを警戒する。

ソラたちも、少し落ち着かない様子をみせ始める。

「アイビー、気配を探ってくれないか?」

「分かった」

深呼吸をして、気配を探る。

なるべく広範囲を調べるが、何も引っかからない。

「特に何もないけど……」

「そうか。人でも魔物でもないのか?」

「あっ、魔物の気配はあるけど、遠いし近付いて来る感じじゃないの。それに、魔物だったらシエルはこんな反応はしないと思うし」

「確かにそうだな。シエル、気になるのは何かの気配か?」

お父さんの質問に少し考えて首を横に振るシエル。

気配ではないんだ。

という事は物? 場所?

「シエル、その気になるモノは危険なのかな?」

私の質問に、首を横に振るシエル。

その隣でフレムとソラも、体を横に振っている。

「危険な物や場所ではないみたいだな」

危なくないけど、気になる……。

「気になるモノを、確認したい?」

私の言葉にシエルが「ぐるっ」と喉を鳴らす。

そう言えば、ソルが森の奥をじっと見つめているな。

「ソル、何か魔力を感じるの?」

ソルが気になるとしたら魔力だよね。

「ぺふっ」

ソルが鳴いて私をじっと見る。

「気になる魔力なんだ?」

「ぺふっ」

シエルが気になっていたのは、魔力という事になるのかな?

皆が気になる魔力を出す物か場所。

「お父さん、何か思いつく事はある?」

「いや、全く何も。アダンダラのシエルやスライムのソラたちが気になる魔力。そもそも力が違いすぎるから、注意する魔力が異なるだろうし。場所? ん~、大地から魔力が溢れる事はあるが……」

大地から魔力が溢れる?

そんな事、初めて聞いたな。

「そんな事があるの?」

「かなり珍しい現象で、これが起きた場合は要注意なんだ」

「要注意?」

「あぁ、周りにいる魔物に魔力が影響を及ぼして暴走させる」

「それって最悪な事なんじゃ」

「そう。だが、シエルたちは危険はないと言ったからな。これではないだろう。となると珍しいマジックアイテムでも落ちているのかもしれないな」

マジックアイテム?

そんな物が、自然の中に落ちている事なんてあるの?

冒険者が落としていったとか?

いや、お金になるのに落とさないよね。

要らなくなって、捨てていくのなら説明がつくけど。

「冒険者たちが作った違法な捨て場があるのかな?」

「それだと危険がないとは、言わないんじゃないか?」

確かに。

違法な捨て場に集まったゴミの魔力で、魔物が凶暴化することがあるんだよね。

シエルたちが危険がないと判断するのは、少し違和感を覚えるな。

「シエル、気になる場所は違法な捨て場?」

私の言葉に首を傾げるシエル。

ソラたちを見ても、同じような反応をしている。

「話していても答えは出ないみたいだし、気になる魔力の元へ行ってみるか。アイビーも行きたいんだろ?」

「うん」

お父さんがシエルを見ると、すりっと頭をお父さんの太もも辺りにこすり付ける。

「道案内頼むな。まぁ、いつもだけど、今回も」

「にゃうん」

「ぺふっ」

ん? ソル?

お父さんの言葉にシエルが返事を返すと、なぜかソルの声も聞こえた。

視線を向けると、ソルがシエルの隣を颯爽と移動している。

今まで気になる魔力を察知しても、何も言わずにただただ窓から外を見ていたソル。

気になって、外を見つめるソルに「気になるなら、その場所に行こうか?」と聞いても、決して行こうとしなかったのに今は、率先して誘導している。

「ソルがやる気になってるな。珍しい」

お父さんがソルを不思議そうに見る。

「そうだね」

私もソルのこんな姿は初めてで、わくわくしてくる。

それだけ気になる魔力があるって事だよね。

何があるんだろう?

「なんか、俺も気になってきたな」

お父さんを見ると、楽しそうにシエルたちを見つめている。

その表情にちょっと驚いたけどすぐに笑みが浮かぶ。

「何?」

「なんでもないよ。行こう」

出会った時のお父さんは、全ての事がどうでもいいみたいに見えた。

一緒にいるようになって、色々な事に挑戦した。

でも、それは全て私のため。

お父さんが好きでとか興味があってではなく、私が楽しめるかどうか。

一緒に挑戦すれば、楽しんではいたけれど。

でも、今のお父さんはこれまでとちょっと違う表情をしている。

優しい目はいつも通り、でもどこか……きらきらしているような? ちょっとした変化。

ほんの少しの変化だけど、嬉しい。

「どこまでいくんだろうな?」

「結構な距離を歩いたよね?」

シエルとソルを先頭に森の中を歩き続ける。

ゴツゴツした岩が少しずつ増え始め、見える景色が変わってきた。

「にゃ!」

シエルが鳴くと、1つの大きな岩の前で立ち止まる。

「ここ?」

「にゃうん」

シエルが言うにはここらしい。

ソルもじっと岩を見つめている。

「この岩が、気になる魔力を放っているみたいだな」

「感じるの?」

私も魔力を察知出来るのに何も感じない。

首を傾げると、お父さんがポンと頭を撫でる。

「かなりうっすらだ。あの距離があって、この魔力を感じられたシエルたちが凄すぎる」

お父さんが感心したようにシエルたちを見る。

そんなに微かな魔力なんだ。

私ももっと頑張って魔力感知を鍛えないと駄目だな。

「ぺふっ」

ソルの声に視線を向けると、岩にソルがへばりついていた。

あまりの光景にお父さんも私も固まる。

「何、してるの?」

何とか言葉を口に出すが、ソルは岩から離れない。

ソルの様子を見ていると、隣をシエルの尻尾がポンポンと叩きだした。

「ちょっと嫌な予感がするな。アイビー、下がった方がよさそうだ」

「えっ、でもソルが」

ソルをもう一度見ると、岩が微かに揺れている事に気付く。

ソルの力?

ソルには岩を震えさせる力でもあるの?

「あれってもしかして、岩から魔力を吸っているんじゃないか」

お父さんの言葉に、ソルを見る。

「あっ、触手が岩に突き刺さってる」

微かな魔力を、ソルは吸い取っているみたいだ。

「あっ。ソルが岩から離れたな」

ソルがぴょんぴょんと岩から離れると、少し離れた場所にいたソラたちと合流した。

ボン、ボン、ボン。

森に響く低い打撃音。

お父さんが予想した通り、シエルの尻尾が何度も岩に当たる。

「尻尾は大丈夫かな? シエル! 無理しちゃだめだよ!」

「にゃうん」

尻尾で岩を叩きながら、普通に返事をするシエル。

器用だね。

ボン、ボン、ボン……ピシッ。

「音が変わった!」

じっと岩を見る。

シエルの尻尾が岩に向かって、叩きこまれる。

ピシッ、ピシッ……ドン。

大きな岩の一部がシエルの尻尾の威力に崩れ落ちた。

「穴だ」

お父さんの言葉に、岩を見ると大きな穴が開いている。

「シエルの力じゃないよね?」

あんな岩を一気に空洞にする力はないはず。

「あぁ、元々空洞だったんだろ。でも、シエルの尻尾はすごいな」

「うん。すごかった。あれっ? 魔力だ」

今まで私には感じられなかった魔力が、なぜか微かにだが感じられた。

「あの岩の魔力ではなかったんだな。あの中にある物が原因のようだ」

お父さんは、不思議そうに砕けた岩を手に持って首を傾げる。

なるほど。

さて、穴の中には……あれ? 人の気配?

ん?

「お父さん、岩の中から人の気配がするんだけど」

「えっ!」

お父さんが慌てて岩の中を覗き込む。

「人が倒れてる。アイビーちょっと灯りを頼む」

マジックバッグからマジックライトを出して、岩の穴の中を照らす。

「「あっ!」」