軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470話 疲れた……

冷たいお茶をコップに入れて机に置く。

「ありがとう。さすがに動き回って疲れたよ」

「お疲れ様。それよりあの爆発音はお父さんだったんだね」

「聞こえてたのか?」

「うん。たぶん村中に響いていたと思うよ」

「あ~、それもそうか。かなり大きな音だったもんな」

「うん。最初に音が鳴り響いた時は驚いた」

「いや、俺もあんな爆発を起こすとは思わなかったんだ」

「そうなの?」

「あぁ。そもそもフォルガンの数があんなに多くなければ、手助けするつもりは無かったし」

「そんなにいたの?」

「帰りに確かめたが、50匹以上はいたらしい。いつもは10匹ぐらいだと言っていたから、今回はかなり多いな」

いつもは10匹ぐらいで、今回は50匹?

フォルガンに変化でもあったのかな?

「フォルガンの多さに錯乱した冒険者がいて、現場がかなり混乱してたんだ。しかもその混乱に乗じて、壁を越えたフォルガンが数匹出てしまった」

「えっ、壁を越えたの?」

「あぁ、そうなんだ。しかも壁を越えたフォルガンを見て、数名の下位冒険者たちが叫んで逃げ出してきてしまって」

逃げ出すって……。

「大混乱で落ち着きそうになかったから、手を貸したんだよ。フォルガンに村の中を歩き回られても困るしな」

「確かにそうだけど、上位冒険者はいなかったの?」

「戦ってて気付いたんだが、外壁って村を囲うようにあるだろう?」

「うん。……あっ、守るところが多いんだ」

「そうなんだよ。上位冒険者たちもいたんだが、別の場所を守っていて、俺がいた場所にはいなかった。どうも2か所にかなり強いフォルガンが現れたみたいでさ。そっちの対応に追われてた。もう1つの上位冒険者チームは村ではなく森の方で対応していたらしい」

魔物除けが効かないって、本当に大変なんだな。

しかも今日は数が多かったなら、きっと守る場所もいつもより広かったはず。

「ただ俺は、目立ちたくなかったからさ。ある程度、助ける事が出来たらその場を離れるつもりだったんだ。なのに、フォルガンの水魔法で作った球を俺の剣で切ったらあの爆発が起きてしまって。その音に引き寄せられて、他のフォルガンたちが俺に襲い掛かってくるし……」

うわ~、それは災難。

「離れるに離れられなくなって気付いたら、ほぼ中心で戦ってたよ」

お父さんの疲れた表情に、苦笑が浮かぶ。

お父さんは、優しいから。

「しかもあいつらの攻撃を見ていたら……」

「あいつらって?」

「この村の冒険者たちだ。力から判断すると中位冒険者だろうな。そいつらが、フォルガンの水魔法で作った球を火矢で対処していたんだが、その火矢がしょぼくて」

しょぼい火矢?

「1つの球に火矢が20本以上必要なんだよ。確かにフォルガンの作った球はかなり濃い魔力が込められていたし薄いが結界も張ってあった。だから俺の剣とぶつかって爆発したんだと思うが、それでも必要な火矢の数が多すぎる」

「確かに20本は多いね」

「そうだろ? あまりにお粗末な火矢に唖然としたよ。火矢をしっかりと作り込めば、フォルガンを倒すのに20本もいらないのに」

「作りこむ? 火矢って魔力を込めた球を作るようには出来ないの?」

「球は魔力をただ丸に固めるだけなんだが、火矢は先が尖っているだろう?」

「うん」

「丸に固めた魔力を変形させて、物体に刺さるように尖らせるんだけど、ただ形を変えただけで使おうとすると、尖らせた先から魔力が外に流れていくんだ」

そうなんだ、全然知らなかった。

「フォルガンの攻撃に対応できるから火矢を使っているんだろうけど、火矢を作るのにも、強化するのにもコツがいる。それより火魔法が使えるなら、別の攻撃をした方がいいと思うんだけどな。なんであんなに火矢に固執するんだか。意味が分からない」

火矢って難しいんだ。

というか、球も魔力を固めて作ると初めて知ったな。

そう言えば、火矢を使って魔物と戦っているのを1度だけ見た事があるな。

まぁ、私とお父さんは崖の上にいて、ただ見ているだけだったけど。

「お父さん」

「どうした?」

「旅の途中で火矢を使って戦っている冒険者がいたの、覚えてる?」

「……崖の下で戦っていた冒険者たちの事か?」

「うん」

「確かに、冒険者の1人が火矢を使っていたな」

「あの冒険者さんの火矢は強いの?」

結構な威力を持って魔物に刺さっていたような気がする。

2本だったかな?

いや、3本?

たしか、それぐらいで魔物は倒れていたはず。

「あ~、遠かったから確実ではないが、ある程度は作りこまれていたな」

あの威力で、ある程度の作りこみなんだ。

すごく作りこんだ火矢だと、威力はどれくらいになるんだろう?

「あっ、それより。フォルガンの姿を見て何か分かった?」

「見た感じ、この系統の魔物だなとは判断が出来なかった。3種類ぐらいの魔物の特徴があったから」

3種類の魔物の特徴。

「という事は、魔物と魔物を組み合わせてる可能性が高くなったという事?」

「そうなるな。だけど、もしそうなら……」

お父さんの眉間に深いしわが刻まれる。

その様子を見ながら、冷たいお茶を飲む。

「魔物と魔物を組み合わせたのだとしたら、王都からすでに調査のために人が来ていると思う」

王都から?

「それらしい人なんていないよね」

「分からないように変装をしているか、村の人間を臨時で雇ったか。どちらにしても、おそらく誰かいるだろうな。……アイビー、数日内にこの村を出発しよう」

「えっ! ……わかった」

調査をする人と会いたくないって事かな?

お父さんを見ると、何か考え込んでいる。

大丈夫かな?

「お父さん」

「んっ? どうした?」

「今日は疲れているだろうから、考えるには向かない日だと思うよ」

疲れている日に大切な事を考えると、余計な事ばかり思い浮かんだりするから止めた方がいいと思う。

明日、疲れが取れてからの方がきっと頭も働くだろうし。

「そうだな。確かに疲れているな」

「もうすぐ夕飯の時間だから、食べたら寝た方がいいよ」

「ん~、そうさせてもらおうかな」

本当に疲れているみたいだな。

「最近はシエルがいてくれて、中心になって戦う事が無かったからな。そもそも、シエルがいると魔物が近付かないしな」

シエルが威嚇すると、みんな逃げていくもんね。

「でも、洞窟では遭うよね」

「逃げ腰の魔物にな」

「あはははっ、壁に体をくっつけて視線を落としている魔物もいるもんね」

「そうそう。あれを初めて見た時は驚いたよ。以前に襲われた事のある魔物だったしな」

「にゃうん?」

シエルが不思議そうに私たちを見る。

「シエルは強いなって言ってるんだよ」

「にゃうん!」

嬉しそうに鳴くシエルをそっと撫でると、目を細めてプルプルと体を揺らす。

「それを見ていると、強そうには見えないよな。まぁ今の姿はスライムだしな」

確かに戦闘狂のアダンダラだとは、誰も思わないだろうな。

「あっ、夕飯の時間だ」

「行こうか。暴れて、お腹もすいているし」

いつもより動きが鈍いお父さんを見て、少し笑ってしまう。

「どうした?」

「なんでもない。早く食べて休もう」