軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

468話 襲撃

ソラたちと遊んでいると、部屋の外にお父さんの気配を感じた。

お父さんが、フォルガンの事を調べると出ていってからほぼ2時間。

思ったより、早く帰って来た。

「ただいま」

「おかえり。早かったね、何か分かった?」

「あまり収穫は無かったな。2年前の春にいきなり壁を越えて村を襲った事は分かった」

壁には魔物除けが施されているので安心していたはずだから、驚いただろうな。

「その時に、104名が被害にあって亡くなっている。怪我人も多数出て大変だったそうだ」

かなり大きな被害だよね。

「そうなんだ。お茶を淹れるね」

「ありがとう。もうかなり暑くなってきたな。歩くと汗が噴き出るよ」

「冷たいお茶の方がいい? それなら下の調理場から貰ってくるけど」

今日は朝から気温が上がってたもんね。

冷たいお茶を用意しておけば良かったな。

「いや、まだ熱いお茶の方が良いかな」

「そう?」

「あぁ。冷たいお茶より、温かいお茶の方がホッとする」

お茶を入れて、お父さんの前の机に置く。

椅子に座ると、トロンがとことこと窓へ向かっているのが見えた。

1日に数時間、太陽の光に当たっている姿を見ると、植物なんだな~と実感する。

「トロンの葉っぱ、少し成長したよな」

「やっぱりそう思う? ほんの少しだけど大きくなったよね?」

「まぁ、相変わらず細いけどな。もう少し体が太くなってくれると、抱き上げる時に安心なんだが」

確かに、ギュッと力を入れるとポキンと折ってしまいそうな細さだから、ちょっと怖いんだよね。

実際はソラたちに挟まれても、折れる事なくしなっていたので大丈夫なんだろうけど。

見た目が細いと心配になる。

「てっりゅりゅ~」

フレムの声に視線を下に向けると、足元で上に伸びている姿が目に入る。

これは抱っこの合図なので、そっと抱き上げて膝の上に乗せる。

「りゅっりゅ~」

満足そうな声に、つい笑みが浮かぶ。

「さてと。何から話そうかな」

「お父さんは、何が気になっていたの?」

私の質問に、苦笑を浮かべるお父さん。

「魔物と魔物を組み合わせたという話があっただろう?」

フォルガンが不意に現れたために流れた噂の事だよね。

それが何かあるのだろうか?

「もしかして、実際にそんな事があったの?」

お父さんが気にするという事は、魔物を組み合わせた実例があるのかな?

「あぁ。俺は実際にその問題に関わったわけでは無いが、数年前にどこかの村で実際に見つかっているんだ」

数年前にどこかの村?

ちょっと曖昧な情報だな。

「どこの村かは分からないの?」

「詳しくは調べられなかったんだ。守りが厳重で。深入りすると、やばそうだったし」

お父さんって、絶対に普通の冒険者じゃないよね。

「フォルガンも、魔物の組み合わせで誕生した魔物だと思ったの?」

「それが分かるかと思ったが、話だけでは分からなかったよ。ただ、いきなり現れたというのが気になる。進化だったら、必ず痕跡は残るはずだ。突然変異にしても、元の魔物が近くにいると思うんだ。この村の周辺にいないとしても、近隣の村や町に」

確かに、進化や突然変異だったとしても変化する前の魔物がいるはずだよね。

店主さんの話では、フォルガンに似た魔物はこの村の周辺にはいないと言っていた。

「近隣の村や町の周辺にもいないの?」

「あぁ、聞いた限りではいなかった。蛇系統の魔物を訊いてみたが、冒険者たちは違う魔物だと思っているようだ。実際に戦った事のある冒険者たちから話が聞けたから、ある程度は信じられると思う」

そうか。

「あっ、元の魔物の特徴が全くないぐらいの突然変異とか?」

「突然変異で誕生した魔物はいるが、ある程度は元の魔物の特徴を持っていたらしいけどな」

やっぱり無理があるよね。

「すごい大移動をしたとか?」

「最初にフォルガンが村を襲った時、17匹いたらしい。3mの魔物が17匹で移動していたら、どこかで噂になっているはずだ」

「そうだよね」

サーペントさんで移動した時も、すごい事になったもんね。

「フォルガンの住処が特定されれば、何か分かるかもしれないが」

「住処? まだわかってないの?」

「そうらしい。これまで数回にわたって調査をしているそうだが、未だに見つけられていないそうだ」

確か魔物の生態を調べるのに重要なのは、住処を知ることだと聞いたような気がする。

住処を見れば、何を主に食べているか、子供の状態などが分かるから。

「フォルガンについて、まだまだ不明な点が多いんだね」

「みたいだな。冒険者ギルドでちょっと酒を飲みながら数人の冒険者に探ってみたが、ほとんど同じような情報しかなかったからな。あっ、そうだ。商業ギルドでちょっとだけ魔石を売って来たんだが、良かったか?」

「もちろんいいよ」

そんな事は気にしなくていいのに。

「それで出発前に――」

ピーピーピーピーピー。

「えっ、何?」

ピーピーピーピーピー。

ピーピーピーピーピー。

「警報か?」

警報という事は、フォルガンが壁を登っているという事?

えっ、襲撃?

「アイビー、ちょっと様子を見てくる。大丈夫か?」

「うん。ここにいる。皆もいるし」

「シエル、何かあったら元に戻っていいからアイビーを頼むな」

「にゃうん」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

シエルは分かるけど、ソラとフレムまでやる気なのはどうしてだろう。

スライムって弱かったよね?

「ソラとフレム? ははっ、2匹も頼むな。とりあえず行ってくるよ。もしかすると、手を貸すかもしれないから」

「分かった。気を付けてね。無理はしないでね」

「あぁ、もちろん」

剣を掴み部屋を出ていくお父さんを見送ると、1階でバタバタと複数の足音が聞こえた。

フォルガンの討伐に冒険者たちが準備しているのだろう。

扉を閉めて鍵をしっかりと掛ける。

「この部屋の窓からは、壁は遠すぎて見えないね」

窓辺に立ち外を眺める。

複数の冒険者たちが、壁に向かって走っていく姿が見えた。

コンコン。

「アイビー。リフリだが」

部屋の外で店主さんの声が聞こえた。

「はい。どうしたんですか?」

扉は開けずに返事を返す。

お父さんがいないときは、なるべく扉は開けないように言われている。

前に開けそうになって、シエルに怒られた。

「ドルイドが行ってしまったけど、大丈夫か? 不安だったら1階の談話室に来てくれ。宿に泊まっている子供たちがいるから」

皆で纏まっているのか。

「ありがとうございます。でも、大丈夫です」

「分かった。でも何かあったら、すぐに言ってくれ」

「はい」

部屋から離れる店主さんの気配にほっと息を吐く。

視線を部屋に戻すと、少し小型になったアダンダラの姿。

「シエル、元に戻っていたの? 大丈夫だよ」

「にゃうん」

私の言葉に一度鳴くと、その姿のまま椅子の足元に寝そべる。

「守ってくれてありがとう」

「にゃうん」

シエルは魔力を完全に制御できるようになっているし、この姿でもばれないかな。

ドーーン。

お茶に手を伸ばそうとすると、重低音の爆発音が聞こえた。

「大丈夫なのかな?」

「にゃうん」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

シエルが頷きながら鳴くと、ソラとフレムも同じ行動をとる。

きっと大丈夫だと言ってくれているんだろうな。

「そう言えば少し前から、ソラたちは頷いて返事を返してくれるようになったね」

ぷるぷるの返事より分かりやすいな。

でも、なんで頷いて返事をするようになったんだろう?

心境の変化とか?

前に教えた時は、無反応だったから諦めたのに……。

まぁ、なんにせよ分かりやすい返事になって良かった。

「分かりやすい返事を、ありがとう」

「にゃうん」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「ぎゃっ」

「ソルとトロンも? ふふっ、可愛い」

ドーーン。

再度聞こえる爆発音。

「水魔法を使うと言っていたから、火魔法とぶつかってるのかな?」

ソラたちには大丈夫と言ってもらえたけど、やっぱり心配だな。