軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

445話 テイムの条件

ソルの哀愁漂う後姿の真実が「あの魔力、美味しそう」だったなんて。

しかもちょっと心が揺れていたなんて……いや、最終的には私達を選んでくれたんだから嬉しいよ。

ちょっと、複雑な心境だけど。

「ぺふ?」

ソルの不思議そうな表情に、もう少し突っ込んで聞きたくなる。

後で悔やんだりしないかな?

……あ~、やっぱり気になる。

「えっと、最近は? 最近も離れようと思った事はある?」

「……」

良かった~。

さっきの間の時みたいに悩むこと無く、じっと私を見つめ返してくれた。

一緒にいる事で、いい関係が築けたのかな。

「よかったな」

お父さんが、私とソルの頭を撫でる。

それに頷くと、ソルも嬉しそうにぷるぷると揺れた。

「それにしても、俺たちは真剣な話が続かないな」

そう言えば、いつもなぜかゆるい話になるよね?

私が首を傾げると、なぜかソルも体を斜めにしてきょとんとした表情をした。

可愛い。

「私たちらしいよね」

笑って言うと、「確かに」とお父さんが頷く。

2人で笑っていると、ソラがピョンとお父さんの頭に乗ってくる。

「ぷっぷ~」

その声がちょっと不服そう。

ソルとだけ話をしていたので、ちょっと拗ねているみたいだ。

「ごめんね。ちょっと大切な話をしていたから」

「ぷっぷぷ~」

ソラを撫でていると、フレムも傍に寄ってくる。

順番に撫でると、皆気持ちよさそうな表情をして体がプルプルと揺れていた。

「ソル、気になる魔力があったら教えてね。少しは希望に沿えるように頑張るから」

シエルやソラの希望で、道を外れて森の奥へ行く事は頻繁にある。

ソルの希望で寄り道をしても、さほど問題はないだろう。

皆が満足する旅をしたいからね。

「ぺふっ! ぺふっ!」

あっ、すごく嬉しそう。

ずっと我慢させてきちゃったのかな?

そっと頭を撫でる。

「あっ、えっ? お父さん! ソルに印が!」

ソルの頭を撫でていると、スーッとテイムの印が浮かびあがってきた。

いや、なんで?

魔力なんて与えてないのに。

「すごいな」

お父さんが隣に来て、ソルの印に触れる。

「アイビーの魔力で間違いないみたいだ」

ソラとフレムが嬉しそうに部屋中を飛び跳ねだす。

シエルの尻尾が……後で片付けよう。

「ソル、いいの?」

「ぺふっ!」

ソルも嬉しそうなので問題ないかな?

それにしてもテイムの条件がさっぱり分からない。

あの瞬間に何があったっけ?

ソルの事を知って、それでなるべくソルの希望に応えたいと思って……それだけだよね。

「お互いに寄り添う事がテイムの条件なのかもな」

寄り添う?

それは、一緒にいるんだから当たり前の事ではないかな?

どちらかが我慢し続ける関係はおかしい。

コンコン。

「ん? ジナルたちか?」

そう言えば、ジナルさんが団長さん宅へ行ってからちょっと時間がたってるよね。

「俺が出てくるな」

「うん。お茶の用意しておくね」

調理場へ行き、ジナルさんとエッチェーさん、2人分のお茶の用意をする。

「お邪魔します」

あれ?

今の声はギルマスさんかな?

「アイビー、3人分頼む」

「分かった~」

もう1つお茶の用意を追加して、お菓子も色々と用意する。

何だかお腹が空いてしまった。

食事をする部屋に戻ると、ジナルさん、ギルマスさんと初めて見る人が1人。

「えっ?」

シエルがそのままだけどいいのかな?

いや、よくないよね?

お父さんを見ると、苦笑を浮かべていた。

「えっと――」

「体の調子は大丈夫かしら?」

「えっ?」

目の前にいるのは、少し背の低い男性。

なのに、女性の声が聞こえてきたので驚く。

しかも聞こえてきた声は、どこかで聞いた事があるような気がした。

男性を見る。

やはり知らない顔だ。

声だけで考えてみる。

「エッチェーさん。えっ? エッチェーさん?」

彼女の声にそっくりな事に気付く。

「えっ、何を……あ~、ごめんなさい。変装してるんだったわ」

見た目は完全に男性なのに、女性の声。

すごい違和感しかない。

「どうして、そんな恰好を?」

「私が誰か分からないようにするためよ。完璧でしょ?」

「はい」

何処をどう見ても、初めて見る男性だ。

「すごいですね。エッチェーさんだと思って見ても分からない」

「昔の仕事で活躍したのよ、変装!」

それって暗殺でですか?

「そうなんですか?」

「そう。近付けば近付くほど仕事がやりやすくて」

完全に暗殺ですね。

「そうだ! 聞いたわ。体の調子がおかしいのでしょ?」

「えっ?」

「違いますよ。大丈夫か見て欲しいだけです」

お父さんの言葉に、エッチェーさんがジナルさんを見る。

「あれ? 言い方間違えた?」

ジナルさんの返答に、エッチェーさんがため息を吐く。

「まったく。まぁ、いいわ。体に魔力を流しておかしな所が無いか調べるわね」

「はい。お願いします」

エッチェーさんだとわかっているけど、見た目が違うため変に緊張してしまう。

それに男性から、知っている女性の声が出てくるのも違和感しかない。

ドキドキしながら、エッチェーさんに向かって両手を出す。

彼女は私の両手を軽く握ると、目を閉じて私の体に魔力をゆっくりと流した。

柔らかい魔力が体を通り抜ける。

「大丈夫そうね」

「ありがとうございます。医者だったんですね」

薬師だと思った時期もあったな。

「医者は色々と便利なのよ」

便利?

「医者って、どこにでも入り込めるから」

なるほど。

エッチェーさんがお父さんの体を調べだす。

心配で様子を窺うが、問題ないと言われていた。

良かった。

「それにしても、すごい魔物が部屋にいるわね。本で見た事があるわ。えっと……アダンダラだったかしら?」

エッチェーさんが、シエルを見て感心している。

「お茶をどうぞ」

「あら、すぐに戻るわ。目を離すと馬鹿な事をする患者を1人置いてきているから。ふふふっ」

それって団長さんの事かな?

何をしたんだろう。

今、本気で目が怖かったんだけど。

「何かしたのか?」

お父さんも気になったのか、エッチェーさんに訊くとニコリと音がしそうな笑みを向けられていた。

訊かなくて良かった。

「あの馬鹿、自分も試す必要があるとか言って、魔法陣をあの体で発動させたのよ。ふふふっ」

怖い、すごく怖い。

というか、団長さんも何をしているの!

「まぁ、今は王都からの連絡がきてたから、馬鹿な事はしないでしょう」

王都からの連絡?

魔法陣についてかな?

「何か情報が?」

お父さんの質問にギルマスさんが頷く。

「この村以外にも、魔法陣の実験に使われた村が見つかったんだ」

「「えっ!」」

この村以外にも?

「被害は?」

お父さんの質問にギルマスさんの表情が険しくなる。

「全滅だ。森の中にある小さな村だったから、誰もその村の異変に気付けなかった。連絡が途絶えていた事で調査が入り、1週間前に発覚したらしい」

全滅。

「そうか。他には?」

「俺はこっちに来たから、それ以上は聞いていない。まぁ、団長が上手く情報を聞き出しているだろう」

ギルマスさんの言葉にエッチェーさんが笑う。

「そうね。団長は情報を聞き出すのが上手いから、必要な事を聞き出せていると思うわ」

後で色々と聞けるかな。

「さて、私は戻るわ。まさか、また馬鹿な事はしないとは思うけど安心できないから」

「信用が無いな~」

「あるわけないでしょ」

ギルマスさんの言葉に、真剣な声で応えるエッチェーさん。

これまでの関係があるからそう言うんだろうけど、いったい何をしてきたんだろう。

聞いてみたい気もするけど、あの怖い笑顔を向けられそうだから止めておこう。