軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

440話 シエルが小さく?

「ジナルさん、少し休んでください」

しっかり休んでと言っても、聞いてくれないだろう。

でも、顔に疲れが出てるから少しは休んで欲しい。

「いや、大丈夫だよ。というか、警護に来て休んでたら駄目だろう」

いやいや、さっきも様子が少しおかしかったから。

ジナルさんも、疲れているかもと言っていたよね?

「お父さんもいるから大丈夫ですよ、ね?」

「あぁ、少し休んだ方がいいんじゃないか? 本調子ではないんだろ?」

「……そうなんだが」

それでも迷いを見せるジナルさん。

どういえば、休んでくれるかな?

「あっ、何かあったらシエルがいるから大丈夫です」

シエルは強いから、これで少しは安心できるかな。

「あ~、シエルか」

「にゃうん?」

名前を呼ばれたからか、シエルが目を覚ます。

「ごめん、起こしちゃったね」

「そうだな。そうしよう」

ジナルさんは立ち上がると、シエルの傍による。

「シエル。この家の中だったら元の姿に戻っていいから、アイビーたちを守ってくれ」

「えっ!」

「はっ?」

「にゃうん!」

いや、待って。

シエル、やる気にならないで!

というか、本来の姿に戻っていいの?

「かっこいいな」

さっそく元の姿に戻ったシエルに、ジナルさんが嬉しそうに笑みを見せ満足そうにしている。

「部屋が狭く感じるな」

お父さんは少し呆れた表情でジナルさんを見たが、止める気は無いのか部屋の感想を口にした。

えっ、いいの?

駄目だよね?

確かシエルの魔力が強すぎるから、気付かれるとか……あれ?

最近シエルは、魔力を外に出さないようになったよね?

という事はいいのか?

「にゃ~……にゃ!」

お父さんを見ながら首を傾げ、ちょっと迷うように鳴いたシエル。

しばらくすると、小さく鳴いてるうちに体が少し小さくなった。

「すごい」

「おぉ~」

元の大きさの2/3ほどの大きさになったシエルを見て、お父さんと私はすぐにシエルの傍による。

大きさが違うと、見た印象も変わるのかなんとも可愛らしい。

いや、元の大きさの時も可愛いけどね。

「大きさまで変えられるのか?」

「初めて知りました」

「えっ?」

ジナルさんの言葉に返事をすると、驚いたような声が聞こえた。

「シエル、姿を変えずに大きさだけを変えられたんだね。すごい!」

「にゃうん」

頭を撫でると、尻尾がパタパタと揺れる。

可愛い。

いつもより小さい体が、やはりすごく可愛い。

「見た目は同じなのに、可愛すぎる」

「初めて見たのに、驚いてない2人に驚くな。大きさが変わった事は気にならないのか?」

ジナルさんが、少し呆れた表情で私たちを見る。

「特には。シエルはシエルなので」

「……そういうものか? 普通は、驚くだろう」

「アダンダラがスライムになるんだ。大きさぐらいで驚く事でもないだろう」

お父さんの言葉に、ジナルさんが首を傾げる。

「そういう事ではないような?」

ジナルさんは、腑に落ちないような表情をしながらもシエルを撫でる。

「あっ! アダンダラの毛って柔らかいんだな」

「そうなんです。気持ちいいでしょ?」

シエルを撫でているジナルさんの表情に、笑みが浮かぶ。

「ジナルさん、これで安心して休めますね。隣の部屋にベッドがあるのでどうぞ」

私の言葉に、ちょっと困った表情のジナルさん。

「あ~、もう少し……」

「駄目ですよ。ジナルさんが休めるように、シエルが頑張って小さくなってくれたんですから」

頑張ったかどうかは分からないけど。

「仕方ないな。まぁ、何かあったら俺もすぐに起きてくるから」

シエルを見て小さく息をつくと、立ち上がる。

「はい。お休みなさい。3時間以上は寝てくださいね」

「えっ!」

何も言わなかったら1時間ぐらいで起きてきそうだから、先にしっかりと言っておく。

「寝てくださいね」

ジナルさんは諦めたのか、肩を竦めると隣の部屋に行った。

扉の閉まる音がするので、おそらくちゃんと休むだろう。

「シエル、ありがとう」

「にゃうん」

しばらくシエルを撫でると、元の場所に座ってお父さんとお茶を飲む。

シエルは私とお父さんの近くに来て寝そべった。

「お父さん、さっき話を無理やり変えたよね?」

お父さんの気持ちだけ、ちゃんと聞いておこう。

「あぁ、ジナルたちを信じていないわけじゃないが、俺のスキルは人を変える可能性が高いからな」

お父さんの返答に、やはりと頷く。

星が増やせると知られれば、いい人だって変わってしまうかもしれないもんね。

「悪い。アイビーはジナルを信じているのに」

お父さんが申し訳なさそうな表情をする。

「謝る事は無いよ。悪い事なんてしていないんだから」

お父さんのスキルは、人を変える力がある。

星の数を増やしたいと願う人は、とても多いから。

だから、お父さんの判断は間違っていない。

「それと、教会の連中は確かに俺の事を調べていた」

「そうなんだすか? あっ」

お父さんの言葉に心臓がドキリと跳ねると、言葉を噛んでしまった。

お父さんを見ると、少し驚いた後に笑われた。

「もう」

「悪い。あのスキルの力が不明だった時、何度も教会に足を運んだ記憶がある。確か、呼ばれたから行っていたと思う」

教会にとって、必要かどうか調べていたって事かな?

「兄たちの星が消えて、俺のスキルが星を奪うと知ったあたりから接触が減った記憶がある」

「自分たちの星が、奪われるのを恐れたからかな?」

「そうだろうな」

気になるスキルでも星を奪われるのは嫌だって事か。

ある意味、助かったという事だよね。

「こうなると、兄の星を奪っていてよかったかもしれない。もし増えていたら、目を付けられて、自由を奪われていたかもしれない」

間違いなくそうなるだろうな。

お兄さんたちには悪いけど、よかった。

「ぷぷ?」

ソラの声に視線を向けると、シエルを見て不思議そうに周りを見ている。

元の姿になっているシエルを見て、ここがどこか確認したんだろう。

「ソラ、ここはギルマスさんの家だよ」

私の言葉に、体を斜めにするソラ。

「ぷ~?」

「ジナルさんが、家の中だったら元の姿になっていいよって言ってくれたんだ」

ソラが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。

「あまり勢いをつけないでね。ソラ」

「ぷっぷぷ~」

楽しそうに勢いよくシエルに近付くソラ。

起き上がったシエルは、勢いのまま近付くソラの頭に前足をぐっと乗せた。

「ぷっ」

「にゃっ」

なんとも微笑ましい2匹に、顔が緩む。

ソラはじっとシエルを見て、なぜかシエルの目の前で1回飛び跳ねた。

「……ぷ?」

飛び跳ねた後、目を少し見開いてシエルを凝視するソラ。

何をしているのか分からず様子を見ているのだが、どうもソラが驚いているようだ。

「シエルが小さくなっている事に気付いたのか?」

お父さんの言葉に、ソラがぱっとお父さんを見る。

「そうみたいだね。そのままの大きさだと部屋が狭くなるから、シエルが小さくなってくれたんだよ」

「ぷっぷぷ~」

納得したのか、寝そべったシエルのお腹のあたりに飛び込んでいく。

「さっき飛び跳ねた時に、シエルの大きさを測ったんだろうな」

お父さんの言葉に「うん」と頷くけど、ソラは頭がよすぎる気がする。

「そういえば、シエル。大きさの変化はもともとできたの?」

「……」

無言で無反応。

という事は、前は出来なかったのか。

「最近出来るようになったの?」

「にゃうん」

そうなんだ、すごいな。

「今日、初めて挑戦してたりして」

お父さんの言葉に苦笑が浮かぶ。

さすがにそれは無いだろう。

「にゃうん」

ん?

何に対して鳴いたんだろう?

もしかして初めて挑戦という所?

「シエル、体の大きさを変化させたのは、今日が初めてだったのか?」

「にゃうん」

そうなんだ。

すごいな。

「よく成功させたな」

お父さんがシエルの頭を撫でると尻尾がゆらゆらと揺れ、とても機嫌がよさそう。

「団長とギルマスがきたら、話を聞いて」

「うん」

「問題が無ければ、出発する準備を急ごうか」

「そうだね」

守ってくれるという契約をしているけど、迷惑をかけたくないしね。

団長さんが王都から呼んだ人たちが、いつ来るか分からないし。

なるべく、早くこの村を出発しよう。