軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 ギルマスさんと魔法陣の発動

「はぁ~、疲れた」

ベッドに俯せに倒れる。

ようやく今日が終わった。

いや、日付は既に変わっているが……今日は色々とあったな。

ドルイドとアイビーには、これからの予定と今日発覚したことは話した。

たぶん、全て話したはずだ……話したよな?

あれ?

あの事は話したか?

「……大丈夫だろ」

明日は、朝から……なんだっけ?

そうだ、アッパスの所に行って、術を解いた者たちの調子を聞いて、村を捜索する者たちを選んで……やる事が多いな。

そう言えば、明日から冒険者の方の術も解くと言っていたな。

「あいつらは、大丈夫なのか?」

魔法陣を短時間に何度も発動させている者たちを思い出す。

アッパスとはかなり親しい、おそらく色々と知っている仲間たち。

彼らの負担を考えると、止めるべきなんだろう。

だが、時間が無い。

早く術を解かないと、門番のようになってしまう。

ソルの作った魔石が、かなり助けになっているみたいだが、いつまでもつか……。

明日、アイビーにソルの魔石をお願いしてみようか。

いや、駄目だ。

これまでだって、彼女たちにかなり助けられている。

これ以上、頼るのは止めた方がいい。

「はぁ~、無力だな」

村を守るために奮闘してきた。

何度も失敗を繰り返し、後悔してきた事も山ほどある。

だが、ここまで自分を無力だと感じたことは無い。

守るはずが、俺のせいでこの村を危機に陥れた。

誰も何も言わないが、俺が術に掛かってしまったせいだ。

今回の事が終わったら、身の振り方を考える必要があるだろう。

「誰をこの地位に据えるのかが問題だよな」

候補となっていた者たちはいた。

だが、記憶が戻った後、少し探してみたがどこにもいない。

思い出したここ最近の記憶の中にも姿は無かった。

洞窟に数体の遺体があったと聞いている。

もしかしたら、彼らではないかと思っている。

そしてなぜ彼らが狙われたのか。それは俺が目を掛けたから。

そんな考えが頭を過ぎる。

「あながち間違いでは、ないような気がするしな」

とりあえず、明日も1日中忙しい。

寝られる時に寝ておかないとな。

目を閉じると、スーッと意識が遠くなるのが分かった。

そうとう疲れているようだ。

ゴンゴン。

ゴンゴン、ゴンゴン。

「ギルマス! ギルマス!」

あ~、なんだ?

なんの音だ?

「どうしたんですか? ……分かりました。起こしてくるので待っていてください」

う~眠い。

「アイビー! 玄関を開ける時は気を付けないと!」

「ごめん。ギルマスさんに用事があるみたい。起こしてくるね」

この声はアイビーとドルイドか?

起こしてくる? って俺の事か?

そう言えば、知った声が聞こえたな。

誰だったか。

「ギルマスさん、起きてください。何か冒険者ギルドで問題が起きたみたいです」

問題?

……起きないと。

目を開けると、薄っすら窓から入る光。

4時ぐらいだろうか。

起き上がって、頭を振ると少しフラっとした。

あ~、疲れてるな。

「ギルマスさん? 起きた? ……どうしよう」

「大丈夫だ。起きたから、すぐに下に行くから」

「はい。冒険者ギルドの職員イイリャさんが来てます」

イイリャ?

……あぁ、確か……ん?

「牢屋を管轄しているイイリャか?」

彼が来るとしたら、サリフィーに何かあったのか?

慌てて、服を着替えると1階に降りる。

玄関に一番近い部屋にイイリャの姿があり、その前にはアイビーとドルイド。

「はい、どうぞ。顔を拭くとすっきりしますよ」

アイビーから温かいタオルが渡される。

それで顔を拭くと、さっぱりして気持ちがいい。

「ありがとう。で、何があったんだ?」

「はい。サリフィー司祭が夜中に魔法陣を発動させたようです。牢屋の近くにいた者たちが倒れました」

魔法陣を発動?

だが、奴には奴隷の輪をしてある。

サリフィー自身が何かする事は不可能だと思うが。

「誰かが牢屋に入ったのか?」

「いえ。確認してきましたが、誰も牢屋には入っていません。最大限に警戒するよう言われていたので、出入りを厳しくしてました。なので誰も近付いていないのは確かです」

「そうか」

厄介だな。

つまり誰の手も借りずに、魔法陣が発動した事になる。

よく考えてみると言葉に反応するような魔法陣もあった。

くそっ。

「倒れた奴らは何人だ? それと容態は?」

「牢屋の近くを警護していた4人の冒険者と2人のギルド職員です。6人全員意識がありません。言われていたように、団長宅へ連絡を入れました」

「そうか。助かった」

イイリャは仕事が出来るので安心だな。

「ドルイド、何が起こるか分からないから明日、というか既に今日だな、出かけるのは止めてくれ」

教会に手を出したからなのか、それとも司祭たちを捕まえた事で奴らの仲間が何かしたのか。

分からない以上、何が起こるか予測がつかない。

とりあえず、アイビーの安全は確保したい。

「分かった。今日は1日、家でじっとしている」

「気を付けてくださいね」

ドルイドが頷くと、アイビーが心配そうに俺を見る。

それに笑みを見せて頭をポンと撫でる。

これ以上、奴らの好きにはさせない。

「冒険者ギルドに戻る。アッパスからも返事が返ってきているだろうしな」

「はい」

イイリャと共に家を出ると、後ろで扉に鍵がかかる音がする。

それを確認してから冒険者ギルドへ向かって走り出す。

とりあえず、魔法陣が発動した以上は近づくのは危険だ。

「俺は平気かもしれないな?」

家を出る時にとっさに持ってきたソルの魔石がポケットに入っている。

教会で俺を守ってくれたものだ。

昨日、アイビーに返そうとしたが「まだ必要かもしれないので」と言って俺の元に戻してきた。

「俺が牢屋に入って様子を見てくる。誰も近づけるな」

「大丈夫ですか? 発動している魔法陣に近付いたら」

ポケットの上からもう一度、魔石を確認する。

「大丈夫だ」

「……分かりました。気を付けてください」

「イイリャ。冒険者ギルド内を見回って、怪しい動きをしている者がいないか確認してくれ」

「裏切り者ですか?」

「あぁ」

疑いたくはないがな。

それにしても、どうやって魔法陣を発動させたんだ?

まだ、知られていない発動方法があるのだろうか?

冒険者ギルドに近付くと、扉の前で集まっている冒険者たちの姿が見えた。

その人数は13人。

俺が信用できる者として、術を早めに解いてもらった者たちだ。

「中の様子はどうだ?」

俺の言葉に、一番近くにいた冒険者が肩を竦める。

「魔法陣が発動したと言っても、特に反応せず通常通り仕事をしています」

「気持ち悪いな」

「少し前まで俺たちも、あぁだったんだろ?」

「うわ~」

術を解いた冒険者たちには、魔法陣で意思が抑え込まれていたことを説明してあったが、実際にどういう反応をするのかを目にして、少し恐怖を感じたようだ。

「大丈夫か?」

俺の言葉に、頷く冒険者たち。

「2名は、自警団詰め所の牢屋にいるグピナス司教を見てきてくれ」

なんの連絡もないから大丈夫だと思うが、確認はしておいた方がいいだろう。

「ギルマス!」

呼ばれた方へ視線を向けると、ピアルとジャッギがこちらに駆けつけてくる。

「どうした?」

「団長から、倒れた者たちを団長宅へ至急移動するようにと」

それは助かる。

だが、大丈夫なのか?

「術を発動させている彼らは?」

「彼らから、大丈夫だから急げと言われています」

「分かった。残りの11人は倒れた6人を団長宅へ移送するのを最優先にしてくれ」

俺の言葉に冒険者たちが冒険者ギルドにある牢屋の方へ向かった。

倒れた6人は牢屋から少し離れた部屋に寝かされているらしい。

「イイリャ、頼む」

裏切り者などいてほしくないが……いるだろうな。

「分かりました」

イイリャが冒険者ギルドの中に入って行くのを見送る。

「裏切り者ですか?」

「あぁ、こういう時は見つかりやすいからな」

ジャッギの言葉に力なく答える。

この手の捜索はいつも気が進まない。

しばらくすると、意識の無い者たちを抱えた冒険者たちが冒険者ギルドから出てきた。

「ギルマスは一緒に来ますか?」

「いや。サリフィーの様子を見てくる」

「えっ! 危ないのでは?」

ジャッギが俺の腕を掴む。

視線を向けると、不安に揺れている瞳があった。

上位冒険者になってまだ日は浅い。

それなのに、こんな大きな事件に巻き込まれてしまった。

しかも、ギルマスの俺が洗脳されて敵にいいように使われていたんだ。

不安になっても仕方ない。

「大丈夫だ」

俺の言葉に、腕を掴んでいる手に力が入る。

「ジャッギは彼らと一緒に団長宅へ行ってくれ。俺は、ピアルと一緒にサリフィー司祭の様子を確認する」

「ですが……」

「大丈夫。お守りを持っているから」

「お守りですか?」

不思議そうな表情をするジャッギに、ポンとポケットと軽く叩く。

「あぁ、だから大丈夫だ」

力強く言うと、小さく頷いたジャッギ。

「分かりました。でも気を付けて下さいね。みんな、行こう」

ジャッギが周りを警戒しながら団長宅へ向かうのを見送る。

姿がある程度見えなくなってから、ピアルが俺に視線を向けた。

「行きましょうか」

「あぁ」

ピアルを窺うと彼からも緊張が伝わってくる。

「ここで待っていてもいいぞ」

「いえ、一緒に行きます」

強い意思を感じる。

だが、魔法陣が発動している以上、近付くのは危険だ。

「途中まででいい」