軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 ジナルたちの暗躍

「ギルマス、怒ってくださいね。まったく、まだ駄目だって言うのに無理をするから!」

「分かったよ」

廊下から聞こえるエッチェーの怒り狂った声。

やばいな。

本気で怒らせてしまったかもしれない。

これからは彼女の持ってくるお茶には気を付けよう。

いや、食べ物もか?

……後で、ちゃんと謝ろう。

勝てる気がしない。

「倒れたんだって?」

扉を叩く事もなく開けるのは、この村のギルマスをしているウリーガ。

ベッドの上から手だけを上げて挨拶をする。

ちょっと調子に乗って動き回りすぎたようだ。

立ち眩みを起こしてしまった。

「まぁ、しばらく寝ていれば問題ないだろう」

「そうか。エッチェーに毒を盛られないようにな」

毒って。

彼女が盛るのは毒ではないだろう。

まぁ、数日は起き上がれなくするぐらいは平気でするだろうが。

「どうだった?」

「村か?」

「あぁ、ある程度情報は得たと思っているが、ギルマスの立場から見た情報を貰いたい」

「一言で言うなら異常だ。危機感が一切ないという不気味さが村全体を覆っている。魔法陣の術の影響だと知らなければ、すぐにこの村から逃げるな」

魔法陣。

二度と関わりたくない最悪な物だ。

「王都からは? どうせ王から何か話があったんだろう?」

「あった」

「彼らの事は話していないだろうな?」

ベッドから体を起こしウリーガを見る。

友人というよりギルマスとして訊いていることが、その視線の鋭さから分かる。

「ふっ。話せない事を知っていて聞くのか?」

魔法陣に関わった者には監視が付くことが多い。

魔法陣に魅せられて、何か問題を起こさないか。

正直、あんな恐ろしいモノを使おうとする者は愚かだ。

だが過去に、魔法陣に魅せられてしまい、使用して町に大きな被害を及ぼした冒険者がいたのも事実。

だから、監視されることも仕方ない。

「まぁ、それはそうだが。解除は出来ないんだな?」

「あぁ、あの紙を使用した場合、サインをした者同士の同意がない場合の一方的な解除は呪いが発動する」

視線をベッドの近くにある机へ向ける。

ウリーガが机の上の紙を1枚取る。

そこにはドルイドとアイビーのサイン。

そして俺のサインがしてある。

「しかし、よくこんな紙を彼らは持っていたな」

ウリーガが持っているのはマジックアイテムの紙。

契約を交わす時に、一般的に使われる紙のように見えるが、実は少しそれとは異なる性質を持っている。

その紙は王と契約を交わす時に、使用することが多い。

何故なら、ある特殊な魔法がかかっているからだ。

その紙を使用した契約書を見た時、正直戸惑った。

これほどの紙を使用する必要があるのかと。

今思えば、ジナルたちの判断は正しかった。

「王は何と?」

「魔法陣の詳しい性質についてだ。あと被害とこれからの事だな」

「そうか。誤魔化せたのか?」

ウリーガを見ると視線が合う。

どうもドルイド、いや違うなアイビーの事を気に掛けている様子。

「彼女の事が気になるのか?」

「少しな。まだ、それほど話はしていないが。何か特殊なモノを感じる」

ウリーガも感じたのか。

俺も最初に出会った時に、何かは分からないが感じた。

それを言葉で表現するのは難しいが。

「誤魔化すことは出来なかった。協力者については話したが、疑問を持たれたよ。他にもいるのだろうと」

今の王は鋭い。

魔力量も相当あると聞いているから、何か感じたんだろう。

「それで?」

「契約書があるので話せないと言っておいた」

「解除すると言われなかったのか?」

マジックアイテムの紙でも、通常に使われている紙でも王家が抱え込んでいる者たちに掛かれば無効化できる。

まぁ、それなりに痛手はあるので、相当の事がない限りそんな横暴な事はしないが。

だが、今回は魔法陣が関わっている。

つまり横暴な事をしても情報は全て欲しい。

実際、人をよこそうとしたからな。

すぐに呪いの紙を使用しての契約だと言ってそれを阻止した。

「言われたが、呪いの紙を使用したことを言ったら、止めてくれたよ」

相当悔しそうな声を出していたが。

さすがに、呪われて死ぬのは嫌らしい。

「呪いの紙にかかっている術は解けないのか?」

「あぁ、王家のお抱えの奴らでも無理だ。下手に関わると、呪われるわ記憶を消されるわ魔力を喰われるわで、最悪死ぬ。死ななくても廃人とか再起不能とか。まぁ、関わらないのが一番だ」

一度目にしたことがあるが、あれは何というかすごかった。

呪いの紙から溢れる、まがまがしい魔力。

それに包まれる者の叫び声。

しかも、関わった者、それを命令した者まで見逃すことがないからな。

「そんなにすごいのか?」

「あぁ?」

「気付いてないのか? アッパス、お前ひどい顔してるぞ」

ひどい顔って、せめてひどい表情をしていると言って欲しい。

俺の顔が、ひどいみたいじゃないか。

「前に、呪いの発動を見た事があってな。それを思い出した」

「そうか。この紙を使用したジナルたちは、契約違反をしたらどうなるか知っているのか?」

「あぁ、それは確かめた。知っていて必要だと感じてこの紙を使用したらしい」

少し前のジナルとのやり取りを思い出して、眉間に皺が寄る。

「知らないわけないだろう? まさか異論でも?」と、にこやかに紙を渡しやがったからな。

しかも、「昔の君の立場を知っているのに、普通の紙で契約書? ありえないだろう」とも言われた。

あの口ぶりは、俺が王のお抱えの1人だったと知られている様子だったよな。

あれはもう20年以上も前の事なんだが……まぁ、今も王家に反発している貴族たちの情報は流してるが。

「大丈夫か?」

「あぁ、ジナルたちは抜け目が無い。あれは、恐ろしい奴らだよ」

かなり極秘の情報を、どうやって手に入れたのか。

本当に恐ろしい。

しかも、王がどう動くかある程度予測を立てて契約書を作っているのが、もっと怖い。

ウリーガが持っている契約書に手を伸ばし受け取る。

そこには『契約者を村からどんな手段を用いても安全に逃がす事』と書かれてある。

王は間違いなく、魔法陣の解除や魔物の討伐に必要な人員と共に、協力者を探る者たちも送りこんでくる。

魔法陣の研究者から、思ったより人が多く派遣されると『ふぁっくす』が届いたからな。

あの王が、諦める訳がない。

情報を精査して、俺に言わなければ契約違反にはならないと考えるだろう。

そしてそれを見越して、ジナルはこの契約書を作ったんだろう。

おそらく奴らは魔法陣の事をある程度知っているはずだ。

だが、それをドルイドたちに話した様子は無い。

もしかしたら、奴らも契約で縛られている可能性があるか。

……いや、それにしても魔法陣について無防備すぎる。

契約で縛られていたらもっと言葉を選ぶはずだが、話した時にそんな印象は受けなかった。

それに、奴らはどこか掴みどころがないんだよな。

見えているモノが、どこか作られたモノのような。

言い方はおかしいが、違和感はないのに違和感があるような。

……駄目だな、よく分からなくなってきた。

「そう言えば、森へ行ったナルガスたちとドルイドとアイビーは、まだ帰ってきていないのか?」

ん?

そう言えば、まだ話していなかったな。

これを話したら、驚くんだろうな。

俺ですら、いまだに疑っているのだから。

「シャーミの洞窟に魔法陣が刻まれていることが判明したんだ。それで一度戻ってきて、魔法陣を無効化するためにソルを連れて、森へ戻ったんだ」

「はっ? 魔法陣を無効化? ソル?」

お~、間抜け面だな。

さすがに、この説明だけでは分からないか。

仕方ない、詳しく説明するか。

人に話せば、頭の整理も出来るだろう。

まぁ、どれだけ話してもスライムが魔法陣を無効化できるなんて、自分で見ない限り信じられないだろうが。