軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

413話 待て!

ソラとソルの機嫌がすごくいい。

しかもジナルさんたちが、術を解く人たちを迎えに出てからそわそわしている。

これ絶対、ご飯を前にした「待て」だよね。

捨て場で食べている量を見ると、用意するポーションの量が少ないのは分かっている。

どうしても、マジックバッグとはいえ限界がある。

もう1つ、ポーション専用のマジックバッグを用意した方がいいのかな?

2匹で楽しそうに縦運動をしているのを見ると、考えてしまうな。

フレムとシエルもソラたちにつられてなのか、朝から機嫌がよく部屋の中を飛び跳ねて遊んでいる。

「エサが来るのを、待ちわびている感じだな」

お父さんの言葉に頷く。

ソラがお父さんのエサという言葉に反応して、揺れるのが激しくなった。

「ソラ、駄目だよ。エサだとしてもそれを表に出しちゃ。お父さんも」

「……ぷっぷぷ~」

分かってくれたのかな?

「あはははっ」

お父さんは笑って誤魔化すし、もう。

1階から人の声が聞こえた。

どうやら来たらしい。

団長さんの声がすると、一気ににぎやかになる1階。

このあと、団長さんを交えてお茶をする予定だと聞いている。

で、そのお茶に薬草を仕込むとエッチェーさんが楽しそうに言っていた。

薬草を手に持ったエッチェーさんが、ちょっと怖い。

少しすると、階段を上る音が聞こえた。

コンコン。

「準備が出来たけど、大丈夫か?」

アーリーさんが、ちょっと心配そうに聞いてくる。

「ぷっぷぷ~!」

「ぺふっ、ぺふっ!」

私が答える前に答えるソラとソル。

よだれ垂らしてないよね?

ちょっと心配になって顔を覗き込んでしまった。

良かった流れてないや。

ソラとソルを抱き上げて1階に降り、ベッドが4つ並べられた部屋に入る。

お父さんがその後に続く。

見ると、お父さんの頭にフレムがいて腕の中にはシエルがいた。

「悪いなソラ、ソル。無理だったら途中で止めてもいいからな。さすがに人数が多いからな~」

う~ん。

本当の事を言った方がいいのかな。

でも15人、本当に大丈夫なのかな?

食べ過ぎになったりしないかな?

「アイビーさん、無理はさせないから安心していいよ」

隣の部屋に入ると、ジャッギさんにポンと頭を撫でられる。

「えっと、お願いします」

食べ過ぎにならないか心配していましたとは言えないな……。

苦笑しながらソルとソラをベッドに乗せる。

ソルは、勢いよくベッドで寝かされている人の頭に飛びのり、そしてそのまま包み込んだ。

気持ちは「やった! エサ~」かな?

ソルの隣をソラがぴょんぴょんと跳ねている。

急かすと消化不良起こしそう。

「ソラ、ゆっくり待ってあげてね」

「ぷ~」

「お願い」

「ぷっぷぷ~」

何とか落ち着いたかな。

「大丈夫そうですか」

ジャッギさんが、ソルの様子を窺っている。

ソルは目を閉じてじっとしている。

昨日と変わらない状態なので、問題はないだろう。

「大丈夫だと思います」

少し様子を見ていると、扉が叩かれる。

アーリーさんが扉を開けると、森の様子を見に行っていた副団長代理さんとナルガスさんが部屋に入ってきた。

「すまない。シエルはすぐに動けるだろうか?」

「にゃ?」

お父さんに抱き上げられていたシエルが、ナルガスさんの言葉に興味深そうに鳴く。

「森ですか?」

「えぇ、すぐ近くまで来ています。数は不明ですが、かなりいるようです。大丈夫でしょうか?」

副団長代理さんは、シエルを見て不安そうな表情をする。

言葉でアダンダラだと説明しても、今はスライム。

それは心配にもなるよね。

私はアダンダラだと知っていても、どんな魔物なのかが分からない状態でシエルを森へ行かせるのは不安。

だけど、シエルを見る限り楽しそうなんだよね。

アダンダラは強くて戦闘狂と言われているし。

「大丈夫?」

「にゃうん」

声が弾んでるしきっと大丈夫。

「大丈夫みたいです」

私の返答に副団長代理さんは戸惑いを見せるもホッとした表情をした。

シエルの見た目で、相当困惑してるみたいだな。

「門番たちはどうするんだ?」

お父さんが副団長代理さんに声を掛ける。

「ナルガスさんたち『蒼』のメンバーに、シエルを連れて森へ行ってもらいます。門番たちに見えない場所に行ったら、シエルに魔物を追い払ってもらう予定にしています」

それはナルガスさんたちが相当危険では?

ナルガスさんを見ると、にこりと笑みを見せた。

「大丈夫、俺たちこれでも上位冒険者だから。それぐらいなら何とでもなる」

「そうですか?」

魔物は気配を消せるのに、本当に大丈夫なのかな?

ピアルさんやアーリーさん、ジャッギさんを見ても不安な表情はしていない。

覚悟をした人の表情だ。

「分かりました。シエルを預けますね。でも、門までは一緒に行ってもいいですか?」

シエルが心配だし。

「それは構わないが……」

「俺も娘と一緒に行くから大丈夫だ。ソラとソルは団長とメリサさんたちがいるから大丈夫だろう」

「ぷっぷぷ~」

ソラを見るとちょっと胸を張っている。

大丈夫と言いたいらしい。

「癒される」

ぼそりと誰かが口にすると、ナルガスさんたちが頷くのが見えた。

それにお父さんが苦笑した。

「では、準備をして門へ向かいます。先に行きますか?」

「はい。シエルを連れて先に行ってます」

ナルガスさんたちは森へ出る準備をするため一度自分たちの家に戻るらしい。

私とお父さんは、シエル連れで門へゆっくり向かう事になった。

団長さんとメリサさんたちにソラとソルをお願いする。

ベッドに寝かされた4人が終わると、ソラたちの様子を見て次が来るらしい。

しっかりソラたちの様子を見てから判断するから、安心していいと言われた。

「お願いします。行ってきます」

「行ってきます」

「気を付けて。ドルイド、何か不穏さを感じたらナルガスたちは放置していい」

「……分かった」

口にぐっと力を入れて、反発したくなる気持ちを押さえる。

私が、冒険者たちの覚悟を邪魔しては駄目。

「行こうか」

「うん」

歩き出すと、ポンとお父さんが頭を撫でる。

それだけで安心する。

シエルとなぜかついて来たフレムが入ったバッグにそっと手を当てる。

「無理しないように頑張ってね」

バッグが微かに振動を伝える。

きっと大丈夫。

「おはよう」

お父さんが門番さんたちに声を掛ける。

門番さんたちは笑顔で私たちを迎えてくれた。

「少し森の様子を見たいのだけど、いいかな?」

「いいですよ。特に変わりありませんから」

門番さんの言葉に、門から森の様子を見せてもらう。

副団長代理さんが言った通り、すぐ傍になんかを感じる。

上位冒険者にしか感じられなかった不穏な気配を、私まで感じるのだからかなり危険が迫っているとわかる。

門番さんたちの様子を見る。

一緒に森を見ているが、特に何かを感じている様子がない。

それどころか、森の異様な雰囲気を笑いながら話している。

背中にぞくりと冷たいモノが走る。

気持ちが悪い。

「お待たせしました」

ナルガスさんたちの声がすると、門番さんたちがアーリーさんに呼ばれて私たちの傍から離れていく。

その間に、バッグからシエルを出してナルガスさんに渡す。

「シエル、今日は頼むな?」

ナルガスさんの言葉にプルプル揺れるシエル。

近くに門番さんたちがいるから声は出さないようだ。

私は肩から提げていたマジックバッグから、ソラの作った光る青のポーションを3本取り出す。

それをナルガスさんに押し付ける。

「いいのか?」

「はい」

「ありがとう」

門番さんたちの気配がすると、ナルガスさんは持っていたバッグにシエルを入れ、違うバッグにポーションを入れた。

「話はついた。行こうか」

アーリーさんの言葉に、ナルガスさんたちの表情が引きしまる。

「行ってらっしゃい」

「必ず帰ってきてください」と言う気持ちを込めて送り出す。

きっと大丈夫。

もしもの時は、ポーションが役に立つはず。