軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

410話 魔法の核

ファックスを送り終えると、元の部屋に戻りジナルさんたちが帰ってくるのを待つ。

「団長、魔法陣の事で訊きたい事がある」

お父さんの言葉に団長さんが頷く。

「今回の問題に魔法陣が深く関わっている以上、知っている事は話す。なんでも訊いてくれ」

「魔法と魔法陣による魔法の違いは何なんだ? 何となくは知っているんだが、正確には知らない」

「どういえば、分かりやすいかな。……魔法は使用する者の魔力量によって、使える魔法の種類も威力も変わる。だが、魔法陣を使用して魔法を使用すると魔力量は一切関係なく、どんな魔法でも使用できるし威力も桁違いに上げる事が出来る」

という事は魔力をほとんど持っていない私でも、魔法が使えるようになるの?

それはなんだかとても魅力的な話なんだけど。

「ただし、魔法陣による魔法の使用はいずれ使用者を喰う」

んっ? くう?

えっ、どういう意味?

「魔法を使う者にとって重要なのは、魔力の核だ」

魔力のかく?

もしかして「核」かな?

でも、そんな話は聞いたことが無いけど。

魔法を使うのに重要なら、どうして知らないんだろう?

「『魔力は誰にも侵される事は無く、本人でも干渉できない』と聞いたことはあるか?」

「あぁ、魔法を使う時に必ず教えられる言葉だな」

「そうだ。だが正確には少し違う。『誰にも侵される事は無く、本人でも干渉できない』のは核の事だ。魔力は他者からの影響で変わる事が稀にあるからな。この核だが、一部研究者の間では魔物が持っている魔石が、魔力の核ではないかと言われているんだ」

「魔石が? だが、魔石を持っている魔物と持っていない魔物がいるだろう?」

「そう。だが、そう信じている研究者は多い」

「なら人にも魔石を持つものがいるのか?」

「俺が知る限りはない。人と魔物の違いなのか、それとも魔石が核ではないのか、まだまだ研究中なんだ」

まだ知られていない事もあるって事だよね。

「魔法をどんなに使用しても核に影響を及ぼすことは無い。だが、魔法陣による魔法の使用は核に影響を及ぼす。核が変質すれば、使用者にも影響が出る」

ソラが癒しているのはもしかして核なのかな?

「影響? 廃人になるって事か?」

「それもあるが、それは魔法陣で術を掛けられた相手の末路だ。魔法を使用する側とはちがう。使用する側は凶暴性が増していき、最後は人を殺さずにはいられなくなる。核が変質すると人は理性を失う。いや、人格を失うという方が適切かもしれないな」

魔物が魔力の影響で、凶暴化するのと似てるのかな?

「魔法陣は誰が考えたんだ? 呪われた過去の遺産と言われているが、どういう意味だ? それとジナルが魔法陣の研究は頓挫したと言っていた。だが、団長の話では続いているように聞こえる」

「とりあえず研究についてだが、魔法陣を使用した事件が起きた事がきっかけで研究が始まった。だが、研究者が人を襲い虐殺した事で中止が決定した。しかし、また魔法陣を使用した事件が発生してしまった。これは俺が関わった事件なんだが、知らなければ対策もとれない事から再度研究が決まったんだ。かなり慎重に研究されているよ」

「なるほど」

自分を変えてしまうかもしれない魔法陣の研究なんて怖いだろうな。

大切な人がいたら余計に。

「魔法陣を考えたのは、この世界に多数の国があった時の者たちだと言われている」

この世界に多数の国?

そんな話は聞いたことがない。

「ドルイドもさすがに知らないだろう? 本当に遥か昔の事だからな」

お父さんを見ると驚いた表情をしている。

本当に知らなかったんだ。

「その昔、国と国はその土地をめぐって戦争をしていた。そこで生み出されたのが魔法陣による魔法だ。最初の研究に関わった者たちが残した文書がある。魔法陣を使用すると最初は高揚感があり、どこか幸せを感じるらしい。だが、次第に使用しなければならないという気持ちになり、最後は人を殺したいという欲求が生まれるそうだ」

何だか随分と詳しいな。

それに団長さん、苦しそう?

「団長の身内に研究者がいるのか?」

えっ?

お父さんを見る。次に団長さんを見る。

「…………あぁ、祖父が研究者だった。どんどん変わっていく祖父が恐ろしかったよ。最後は身内の半数以上を殺した。父と叔父が何とか食い止めたが、あれは悲惨だったな。祖父の残した資料から、魔法陣は戦争に勝つために作られたモノではないかと結論が出た。人を化け物にする、それが魔法陣だ」

「「…………」」

「決して魔法陣には関わらないと、幼心に誓った。だが、数年前の事件で魔法陣が発見され関わる事になり、そして今回の事だ。本当についてないな」

何と言っていいのか分からないな。

言葉を知らないというのは、こういう時に困る。

「確かに団長は不運だが、この村には幸運だな」

「幸運? どういうことだ?」

「団長がこの村のトップにいたお陰で、王都にいる魔法陣の研究者とすぐに連絡が取れた。そして人を送ってくれることにもなった。この村には幸運じゃないか。団長でなかったら、何もできずに最悪な結果になっていた可能性がある」

確かに、団長さんがいてくれたおかげで少し光が見えた。

うん、団長さんでよかった。

「そうか」

団長さんは少し驚いた後、ふっと笑みを見せた。

コンコン。

「どうぞ」

「失礼しますね。ナルガスさんたちと副団長代理、ジナルさんたちとギルマスが来ましたよ。食事をしながら話をするようにして構いませんよね?」

あれ?

ギルマスさんの補佐は来なかったのか。

「あぁ、頼む」

「任せてください。エッチェーがそれはもう張り切って、ふふふふふ」

怖い。

メリサさんのあの表情は何だろう。

「そうだな、エッチェーの本業だからな。まぁ、ほどほどにと言っておいてくれ」

「……はい」

返事の前の間は何だろう。

すごく気になるけど、触れないほうがいいよね。

お父さんも、顔が少し引きつっているし。

「エッチェーさんの本業とは何ですか?」

メリサさんが出ていったあと、団長さんに訊いてみる。

「彼女は、あ…………色々な薬草を扱う仕事をしてたから」

「そうなんですか」

今、何を言おうとしたんだろう。

あ?

薬草を扱う人なら薬師だよね?

でも、それならそう言うはずだし……あ……暗殺…………。

人にはそれぞれ歴史があるからね。

「どれくらいで、ソルたちが必要になるかな?」

「あぁ、急ぐ必要があるとわかっているから、おそらく限界ぎりぎりまで仕込むでしょう。だからすぐですよ」

ギルマスさんたち大丈夫かな?

本業ならきっと大丈夫なんだろうけど。

「さて、そろそろじゃないか?」

「えっ? もう?」

驚いていると、廊下からがやがやした声が聞こえてくる。

本当に来た。

「えっと、ソラたちは」

「ぷっぷぷ~」

「ぺふっ」

鳴き声が聞こえたので見ると、2匹は扉に向かって楽しそうに飛び跳ねている。

いつの間にか起きている事に驚く。

「おはよう。お願いできる?」

「ぷっぷぷ~」

「ぺふっ」

不思議なほどやる気を見せるソラとソル。

やはり、術を解いたり、魔法の核を癒すのは2匹にとって楽しい事なのかな?

それとも力になるとか?

コンコン。

「失礼。術の解除をお願いしていいですか?」

扉を開けてナルガスさんとアーリーさんが、1人の男性を運び込んできた。

「ぷっぷぷ~」

「ぺふっ」

「大丈夫です。ベッドに寝かせてください」

私の言葉に、ベッドに放り投げられる男性。

それに向かって嬉しそうに飛び跳ねるソル。

「ソル、頼むな」

アーリーさんの言葉にプルプルと揺れると、さっそく頭を包み込んだ。

動きは可愛いけど、やはり頭から食べられているように見えるよね。